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    そまふみ

    @somahumi_though

    イラストまとめとかSSとか。センシティブなのもあります。夢、書いてる、ヨ。

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    そまふみ

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    サンブレイクのフィオレーネさん夢カプの昔の話。

    【MH夢】星と出会う この世は平等ではなく、理不尽に満ちて、光の当たらない場所に行ってしまえば苦しみ続けることになる。
     ……なんてことを思ったのは、いつだったか。少なくとも、あたしの「人生」ってやつはそういうものでできていた。
     だから、諦めている。路地裏から見る幸せな世界は、自分には得られない。毎日ボロボロになっては小さな鳥竜を狩って、その肉でどうにか耐えるだけ。そう、思っていたのに。

     その日は最悪だった。ランポス一匹かと思えば、すぐに仲間を呼んで……その上、ドスランポスまでやってきた。どうにか逃げ出したけど、足も腕も何もかも痛くて、今にも意識が途切れそうで。
     あたし、ここで死ぬんだ。何も得られず、何からも愛されず。いつか見た家族連れみたいな幸せなんて夢のまた夢で、このまま……そう、思ったのに。
    「貴殿、無事か?」
     ……? 声がする。それに、閉じたはずの視界がいやに眩しい。そう思って目を開けると、とても綺麗な人がいた。
    「いや、無事なわけはないな……少し待ってくれ、応急処置なら私でもできる」
     そう言って、テキパキと傷口を水筒の水で濡らし、布で拭い、自分の服をちぎってそこに巻いていく。驚くほど手際がよくて、あたしが止める暇もなかった。
    「よし。これで大丈夫だろう……もう動いてもいいぞ」
    「え、えっと……あの、ありがとう、ございます」
     呆けていた頭を叩き起して、どうにかお礼だけは伝える。すると、その人は微笑んで「気にするな」と言った。
    「私が放っておけなかっただけだからな。貴殿が気にするようなことではない」
     そう、なのだろうか。少なくとも、この人がそう言うのならそれでいいのかもしれない。
     とは思いつつ、せめて何かしたい。そんなことを考えていると、その人はあたしの顔を覗き込んできた。
    「ああ、お節介だろうが、せめて家までは送ろうか」
    「え……と。あたし、家、ない、です」
     素直にそう伝えると、「す、すまない」と謝られてしまう。そんなつもりはなかったのだけど。
    「だが……そうすると、貴殿は普段どこで生活しているんだ?」
    「ええと、路地裏の方に、います」
     たぶん、そういう呼び方で合っているはず。すると、その人は少し考えた後、手を差し伸ばしてきた。
    「なら、私の家に来ないか? 応急処置をしたとはいえ、傷が治ったわけではないし……それに、貴殿を放ってはおけない」
    「え……」
     平然と言ってのけたけれど、それは人が一人増えるということだ。それは、本当にいいのだろうか? あたしは、あたし一人を繋ぐだけで手一杯だから、躊躇ってしまう。
    「……私が、貴殿に来てほしいと思っているんだ。それではいけないだろうか?」
    「ほ、ほんとに、いいの?」
    「ああ。きっと家族も受け入れてくれる」
     そう言われると、ついて行った方がいいように思えてくる。捨ておいてもいいような路地裏の人間を助けるようなお人好しに、悪いことが出来るとは思えなかった。
    「じゃ、じゃあ。あの……よろしくお願いします」
    「……ああ!」



    「そんな頃もあったな」
     うさ団子を食べながら、昔の話をすると、フィオ様はそう言って微笑む。
    「今思うと、向こう見ずにも程がある。子供の一存で人を拾うなんてな」
    「あはは、そうですね。でもそのおかげであたし、ここにいますよっ」
     にっこり笑って返すと、「たしかにな」と笑い返される。
    「お前が王国騎士になると言った時は心配したものだが……いつの間にかこんなに強くなって。私の心配は杞憂だったようだな」
    「そ、そうですかね!? あたし、これでも必死だった感じなんですけど……」
     モンスターの生息域の拡大、爵銀龍の襲来、深淵の悪魔の出現……そういったことに追いつけてきたとは思えなかったし。だから、フィオ様の評価はあたしにとってしっくり来ないものだった。
    「必死なのは間違っていない。それでも、私や猛き炎にとって必要な情報を集めてくれていただろう?」
    「それ、は」
     だって、喜んでもらいたかったから。あたしは知識も力も、フィオ様や猛き炎に及ばないから、情報収集しかできることがないだけで。
    「本当に助かった。私が倒れていた間も、騎士たちを纏めてくれていたようだし」
    「ぅ……」
    「あの日お前を連れ帰ったのは、騎士になってもらうためではなかったのだが……こう考えると、お前の意思を尊重して正解だったようだ」
     褒めすぎ、だと思う。でも、そう言われると嬉しくなる。
    「フィオ様、そんなに言うとあたし、調子に乗っちゃいますよ」
    「それは困る。お前には、まだしてもらう仕事があるからな」
     ……そうだ。あなたが騎士である限り、あたしもまだやることがある。
     でも今は、少しだけ気を抜いても、いいかな。
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