ねむりぎわ「んう、ぅー」
鞠さんが俺の膝に寝転んで、俺の指で遊んでいる。子供の小さな手がくすぐったくて、堪えきれず笑ってしまった。
「?」
「な、なんでもあらへんよ。気にせんでええて」
「うん」
……眠そうだなあ、と思う。普段なら俺にタメ口きくこともないし、こんなふうに手で遊んでくれる子ではないからだ。
「ふにゃ」
「寝ててもええねんで。……ああせや、今日はお出かけしてたんやろ? 楽しかった?」
プレゼントしたタオルケットを抱きしめ、鞠さんは少し目を閉じる。
「……たのしかった」
「そらよかったなあ」
「うん」
そう言うと、うとうとし始めて眠りそうになる。「ええよ、ねんねしとって」と声をかけると、嬉しそうに眠り始めた。
「(かわええなあ。よしよし)」
背中を撫でて、寝かしつけてあげる。
「おやすみな、鞠さん。ええ夢見てや」
せめて夢の中でくらい、彼女が幸せであればいいと思う。もっと願うなら、この先の全てが幸せに満ち足りていますように──
「……ふゃ」
俺もうとうとし始めた頃、鞠さんがぱちっと目を覚ました。ぽろぽろと涙を流しているのを見るに、また悪い夢を見たのかもしれない。
「よしよし。……だいじょうぶやで」
「ん……えぅ……」
いい子いい子、と頭を撫でる。大丈夫やで、と言うように。
「大丈夫。鞠さんはえらい子ぉや。な」
そう言うと、少しづつ泣き止み始める。そうして、ゆっくりとまた眠りはじめた。
「(……やっぱ、俺が守ったらなあかんねんな)」
そんなことを思いながら、鞠さんの横に潜り込んだ。