【MH夢】月の灯り「フィオ様、大丈夫ですか? お水足してきました、飲めそうですかね」
セレネは、心配そうに私の顔を覗き込む。それに頷いてゆっくりと上体を起こそうとしたが、目眩がして倒れ込む。
「うっ……」
「わわ、だめですよフィオ様。ほら、あたしが起こしますね。コップ持ってるので、ゆっくり飲んでください」
「……すまない」
己の情けなさに悔しくなる。それをセレネは優しく笑って「大丈夫ですよ。あたし、フィオ様のお世話ができて幸せなんです」と言った。
「あ、でも提督たちには内緒にしてくださいねっ! そんなこと言ったってバレたら大目玉です」
「はは、言わないさ」
ああ、彼女は優しい子だ。あの頃からずっと。そのふわふわの髪を撫でながら、もう一度私は眠りについた。
*****
「……ふう、寝てる」
すやすやと寝息を立てるフィオ様を見て、安心して部屋を出る。外はもうすっかり暗くなっていて、エルガドの灯がぽつぽつと点るだけになっていた。
「フィオ、さま」
耐えていた涙が零れる。不安。恐怖。焦燥。愛した人が目の前で苦しんでいるのに、ただそばに居ることしかできない悲しみ。それらが溢れて止まらない。
「フィオ様、置いてかないで」
そんなこと、有り得ないのに。今、タドリさんを筆頭にフィオ様の治療のためにみんなが動いている。大丈夫、そう信じている。それに。
「……あたしがこんなんじゃみんなに示しがつかない。気合い入れなきゃね」
そうだ。あたしはフィオ様の部下で、一番近くで見てきたんだ。そのあたしが、フィオ様の代わりくらい務められなくてなんとする。
「大丈夫。エルガドも、フィオ様も強い。あたしはあたしにできることをやればいいんだ」
そう、そのはずだ。猛き炎も、今治療薬の素材を採りに行っている。だから。
「あたし、フィオ様のために、王国の月になってみせます!」