夏の残り香を探して夏が過ぎ、秋の初めの風が体を掠めたあたりに、太宰治という得体の知れないという言葉がもっともよく似合う、昔からの友人から連絡が来た。
"今日は寝ないで二人で海を見に行こう 偶の夜更かしがしたい"
この一通のメールから、今日は二人で海を見に行くことになった。丁度、明日の仕事はない。その事実による解放感から、私の非日常への旅心というものを余計に刺激した。
しかし何故太宰は私を誘うのだろう。そして、何故夏が終わったこの時期なのだろう。この二つの疑問が私の脳内に置き去りにされたまま、車は海へと走った。
「最近、中々忙しくてね。新人の子が入ってきたのだけど、彼が中々に厄介事を引き寄せる体質なもんで。毎日色々な事件が起きる。」
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