そしてこの場にいる者全てが知る由もない。彼らがなぜこのような事態を引き起こしているのかを。
時は遡り3日前。
それはジムリーダー対抗エキシビジョンマッチが開催される前日のこと。
その日、マサラタウンにあるひとつの噂が流れ始めた。
曰く、とあるポケモントレーナー達が不正をしているらしいと。
曰く、その不正とはネット回線を経由して対戦相手の情報を抜き取り、それを事前に手に入れているというものだと言う。
曰く、しかもそれだけではない。彼らはジムリーダー達に匿名で脅迫状を送りつけており、対戦当日になって妨害工作を行うという悪質なものだ。
曰く、そのような行為は決して許されるものではない。よって私は彼らを裁くために立ち上がることにした。
曰く、そのためには協力者が必要だ。そこで私が白羽の矢を立てたのがあの男である。
曰く、彼は元ロケット団の幹部であり、また裏社会にも顔がきいた実力者でもある。彼に協力を要請すれば必ずや悪しき者達を成敗してくれるだろう。
曰く、しかし問題はどうやって彼を説得するかだ。おそらく彼のことだから私の頼みなど聞く耳を持たないだろう。ならば実力行使しかないのではないかと思うのだがいかがだろうか? 以上が彼らの告発文の内容だった。
だが残念なことにこの告発文を書いた人物は誰ひとりとして知らなかったのだ。
なぜならこれは彼らの仕業ではなく、彼らに指示を出した人物によって書かれたものなのだから。
つまりこれをリークした張本人は他でもない。
ガラル地方チャンピオンにしてマクロコスモスグループ代表ローズであった。