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    見不乃ーミズノー

    練習、あとは表に載せてないものを載せていきます。
    そゆことで!

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    POIPOI 11

    彼が知る数少ない『家族』の記憶。

    『追憶ー杜々凪最永ー』「えぇか~?最永~。」

    「まーだ!」

    「まだなーん?もうえぇんちゃう?」

    「もうちょっとやから!
    な、お母ちゃん!」

    「そうそう、もうちょっとよ~♪︎
    はい、できた!」


    無機質な病室の一部屋。
    楽しげな声が部屋を満たしている。

    母の声に最永はキラキラと目を輝かせた。
    ベッドで座りながら、顔を手で覆っている父の方に身体を向ける。

    「なぁ~、まだー??
    もうお父ちゃん待ちきれんのやけど~?」

    「えぇーよ!」

    相手の反応をワクワクしながら待つ声に、父は覆っていた手を外す。

    目の前には小さいながらにビシッと決めた
    紺のスーツに、まだその身体には
    大きすぎるランドセルを背負った息子の姿が飛び込んできた。

    「どう??お父ちゃん!
    めーっちゃカッコえぇやろ?」

    背中のピカピカのランドセルを見せるように父に背を向けて振り返る。

    「……あぁ、ホンマや…。
    世界一かっこえぇ………。」

    そう言った父が次の瞬間ダーーーっと涙を流しだし、鼻水も流しだした。

    「わー!お父ちゃん!
    なんなん!?なんで泣くねん!」

    突然の父の大号泣にわたわた困惑する。

    「も~しょうがないわねぇーお父さんったら!ほら!泣かないの!
    涙もろいんだからぁ~。」

    母が笑いながら父の涙をハンカチで拭う。

    「せやかてッ……最永…ホンマ………おっきなったなぁ~…!!
    この前までこーんなちっちゃかったんに………。」

    メソメソしながら
    そう言って豆粒ほどのジェスチャーをやってみせる。

    「そんなちっさいわけないやろ!
    親指姫でももうちょいあるわ!」

    「お前…腕あげたな。」

    息子のとっさの切り返しに
    鼻水をティッシュで拭きながら感心の声を漏らす。


    「もう5歳やで!
    来年には小学生やで??
    ツッコミくらいできんとなー!」

    得意気な表情をする息子に父と母は顔を見合わせて笑った。

    「悪いなぁ、最永。
    お父ちゃん入学式いけるかわからんくて………。」

    申し訳なさそうな表情を浮かべる父に最永は腕をくんで怒ったよな顔をした。

    「なに言うてんねん!お父ちゃんはお父ちゃんで病気と闘こうてんねんから、なんも悪ないわ!
    それより早う治してまた凧揚げしよ!」

    ランドセルを下ろして
    父の左横のベッドによじ登る。

    「お父ちゃんとまた遊びたい!」

    そう言って父の膝にうつ伏せで寝転ぶ。

    「………せやなぁ………。
    凧揚げしたいなぁ~…。」

    最永の頭を父の手が優しく撫でる。

    前よりも撫でる手に力がないことを
    子供ながらに感じていた。

    「いっぱい遊べるわよ。
    お父さん、たくさん頑張ってるもの。」

    母の声が少し震えているのがわかる。

    「…ありがとうな。」

    「やめてよ。まだまだ頑張ってもらわないといけないのよ?
    もう、誰かさんのおかげで泣き虫がうつっちゃうわ。」

    「なんやと~?この~!」

    と母の腕を父が引っ張り、
    母が最永の上に被さった。

    「わ~!!」

    「あ!ちょっと~!!」

    文句を言おうとした母を遮るように
    父のか細くなった腕が二人を抱き締めた。

    「俺は幸せもんやー!感謝は伝えんとな!
    ………ありがとう二人とも。
    俺の家族になってくれて……。」

    か細くなった父の背中に母も最永も手をまわす。

    母は馬鹿ねぇ…!と言って泣いているようだった。

    「最永」

    父が静かに語りかけるように言った。

    「お母ちゃんのこと頼むで。」





    次の日、父はこの世を去った。

    ガンだった。

    急変し、あっという間だったそうだ。

    母が着替えを取りに一度最永と家に戻っている間の出来事だった。
    病院に駆けつけた時、父は家族の写真を握りながらベッドで眠っていた。

    もう目を開けることはない。

    母はその場で崩れ落ち、父の亡骸にすがった。

    見たこともないくらい母は取り乱し、
    話がしばらくできないほどに過呼吸を起こしてしまった。

    何が起きているのか心がついていかないまま、そんな母を見てボーッと父の言ったことを思い出す。


    『お母ちゃんのこと頼むで。』


    「俺がお母ちゃんを守らんと…。」




    涙は不思議と出なかった。




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