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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    大i包i平×八丁
    己の物語が軽いことへの劣等感から存在が薄くなった八丁が古備前の物語補填するために襲い受けする話の簡易的な小話

    大i包i平×八丁プロトタイプ「ね、兄さん俺に情けを頂戴なっ、……なんて、」

    そう言って、俺は兄さんに抱きついた。平時のような軽い口調のままにしたかったけど、取り繕えなかった。いつもだって、縁起物らしく、明るくと思って軽い喋りを目指している。少々無理をしているのだ。

    古備前の兄さん方ならどちらでもいい。たまたま、包平の兄さんの部屋の方が俺に充てられた部屋と近かったから。そんな理由で八丁は大包平の部屋に夜分に忍び込んで兄さんの胸に縋り付く。わざとらしい上目遣いで、見た兄さんの顔は驚愕に満ちていて。彼にしては珍しく一言も発されない。ただ眉間の皺と、銀朱の瞳が困惑を物語っていた。

    だめかな、と八丁念仏は思う。大包平の寝巻きにすがりついた指が震えそうだ。でもここで、撤退するわけにはいかなかった。右だけ長い、非対称の髪の毛の先が視界に入る。少し、ほんの少しだけ青が薄まっている。

    (消えちゃう、かもっ)

    背筋からぞわりと恐怖が押し寄せる。本能的に悟る、存在の消滅であった。審神者の霊力はこの本丸全体に満ち溢れている。霊力が足りないわけではない。己の、刀剣男士としての器にヒビが入っているのだ。いろいろなものが混じり合っている、八丁念仏。ひとたび己に疑問を持って仕舞えば、あっという間に器は欠ける。

    (俺の物語は軽すぎるから、)

    力任せに大包平を押し倒す。極の刀だ。初の八丁にそれができたのは、彼が無抵抗に流されてくれたから。わかりやすく許された合図に兄の上に乗った八丁が彼の顔を覗く。優しい顔だった。

    八丁念仏という器にヒビが入っているのなら、”継ぎ”をしなければ。大包平という”金”で。

    古備前の物語が欲しかった。混ざり物の自分は、古備前だけれど、まだそれを名乗るだけの度胸がない。そんな己の弱さが、ヒビを作ってしまっていることもわかっていた。



    「ごめんね、包平の兄さん」






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