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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    タイトルどおり
    審神者(無個性)は最初から死んでる
    審神者関係なく典ソハはいちゃついてる

    典ソハが最後の共同作業で死体を埋める話馬上で風を切る。追いつかれないようにとソハヤは馬に指示をする。本丸のなかでは駿馬ではない。それでもソハヤと大典太、二振と大事なモノを乗せる無茶をしてくれていた。

    馬が警告するように高らかに鳴いた。背に乗せた二振を振り落とすかのように暴れ始め、がくん、と馬体が下がる。

    ソハヤは腕の中の大事なモノを抱えながら飛び降りた。馬の片足の霊力が綻んしまって消えかけている。それを痛ましそうに見つめると馬は慰めるようにぶるる、とだけ鳴いた。

    「ありがとな。ここまで連れてきてくれて」
    「助かった。あとは俺たちの足で行こう」

    声をかけた大典太が優しく馬を撫でると満足げに鳴いてから、霊力と共に溶けて消えた。馬当番で大典太を怖がらないおおらかで暢気な性格だったやつだ。それが最期に、と力を振り絞りここまで連れてきてくれた。

    本丸からだいぶ離れた山のちょうど中腹あたりであった。

    「結構離れられたなぁ、もうあんなクソみたいなとこ見えないや」
    「……言葉が悪い」
    「でもそうだろ、あんな本丸にいなきゃ主だってさ、」

    ソハヤの視線は自然と下に降りた。腕の中で大事に抱えた人の子、今の主。いや、主だったモノだ。刀も、馬も、あの本丸は神域に近く全てのものが主の霊力で保たれていた場所であった。

    刀も何振もいた。優しい主であった。付喪にも馬にも人にも優しく。戦時下など生きていくには優しすぎた。刀は皆知っていたけれど、どうもできなくて。手をこまねいている間に主は心を壊して自害していた。

    早く本丸なんて閉鎖空間から連れ出してやるべきだった。後悔しても遅かった。主は死んでしまったのだから。せめて本丸から離れたところで主を埋葬したかった。

    「この辺でいいんじゃないか……?」
    「そうだな。花も綺麗に咲いてるし。俺たちじゃ花を手向けられそうには無いからなぁ」

    ほら、と大典太に手を見せる。少し手のひらが透けていた。
    審神者が死んだから、刀も顕現が解かれて消える。まだ保ってられるのは錬度が高かったお陰で霊力の蓄積がまだあるから。花を手向けるまでの時間は無さそうであった。

    畑から掻っ払ってきた踏み鋤で二振揃ってさくさくと地面を掘り始める。

    「どのくらい掘ればいいも思う?」
    「主が入ればいいんじゃないか?」
    「縦に?」
    「横だろう。あとは獣とかに喰われないように出来るだけ深く」
    「じゃあ兄弟の背丈くらいかな」

    少し骨が折れそうだな、とソハヤは思った。けれど主はきちんと埋葬してやりたかった。あんな本丸ではなく。それこそ見えないくらい離れたところに。

    「海の向こうぐらい行ってやらたかったんだけどな」
    「流石に霊力が持たないな」
    「……」
    「ソハヤ?」

    他愛のないことを話しながら畑仕事の時のように穴を掘り進めていった。打てばかえってくる言葉のやり取りでふと、ソハヤの言葉が止まる。大典太が顔を覗き込む前に、俯いたソハヤの顔から水が落ちて土にシミを作っていた。

    きっと見られたくはないだろう。自身ももらい泣きしてしまいそうになった大典太はソハヤを抱きしめた。手っ取り早く、自身も相手も泣き顔が見られなくて済むと思ったのだ。

    「……わるいな、」

    ひとしきり大典太の戦装束の前面を濡らしてから顔を上げる。まだ目の端は赤かったがきっとお互い様だろう。

    今度は黙々と掘り進める。やがて主が入れるほどの立派な穴ができたのでゆっくりと横たわらせた。棺を用意する暇はなかったので野花を一輪胸元に手向けた。

    「…ッ……」
    「兄弟!?」

    ソハヤの隣で大典太が息を呑む。何事かと見れば大典太のタイムリミットが近いのか、全体的に大典太の体が透けていた。霊力が全体的に綻んでいるのだ。

    「……兄弟も、だ」
    「あと少しなのにっ……」

    あと少し。土をかぶせてそれで終わりであったのに実体が保てくなっている。ソハヤは手のひらから透け初めていて踏み鋤を取り落とした。悪態をつく。また大典太に口が悪いと嗜められてしまうのに。

    「ソハヤ、」
    「なんだよっ……んっ、……ふ、」

    焦っているのを止めるように呼ばれ、振り向いた瞬間、唇が奪われていた。触れ合った唇から少しずつ霊力が送られてくる。大典太の意図が読めた。お互い足りない同士で志半ばで消えてしまうより、一方の霊力を渡してやり遂げればいいと言うことだ。

    どんどん、と背中を叩いて抗議するとやっと大典太は離れていく。

    「ずりぃ、俺だけ置いてきぼりじゃん」
    「少しの間だけだ。2人分の霊力でもそう長くは持たない。どうせ本霊に還れば距離など関係なく会えるだろう」
    「それとこれとはさぁ〜……わかったよ」

    大典太は満足そうに笑って霊力をソハヤに全て渡すようにもう一度唇を合わせてから消えていく。悔しいのでソハヤから舌を入れてやったのはご愛嬌だ。

    「会えるって言ってもなぁ、恋刀を一振おいてくのはどうなんだよ」

    地面に落ちた大典太の本体を拾い上げる。霊力が無くなって霊体だけ本霊に還っただけなので本体は綺麗なままだ。大典太の背丈分掘ってしまったせいで出にくい穴から這い出ると少しずつ土をかけて埋めていく。主がゆっくり眠れるように。心優しい人の子が来世幸せになれるように。

    最後の仕上げに、三池二振の本体を墓標代わり盛り土に刺した。逸話も来歴も作法もあれど、この主に対しては一緒に土の中に眠るのでもなく、寄り添うのでもなく、こうあるべきだと思ったからだ。

    消える体では本領発揮の墓守もできないだろう。それでもこの歴史に残らない名もない人の子を思って、ソハヤはゆっくりと眠りについた。
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