釘崎野薔薇の結婚「わたし、結婚するから式出ろよ」
高専で出会ってからの年数が両の手の指を超える直前、定期的に開く同期会で釘﨑が突然開口一番に告げた。中ジョッキを持って乾杯しようとした姿勢のまま口をあんぐり開けたまま、俺達は混乱したまま祝福を述べたのだった。
あれから数ヶ月、立派なホテルの海の見える教会的な庭で釘﨑は真っ白でフワフワで長いドレスを身にまとって新郎の腕をとって進んでいる。人婚式? とか言うやつらしく神父さんはいない。会場に来ている大事な人達に誓うというのは、神も仏もないような仕事をしてる呪術師らしい考えなのかもしれない。
あの釘﨑が選んだのはおっとりとして平々凡々を描いたような男だった。何度か顔を合わせたが異性の友達である俺達に負の感情持っていたとしても向けず、「彼女と同じですごい人達なのだと尊敬してます」と穏やかに告げてくるそういうところが釘﨑にとってグッと来たのだろうとなんとなく理解した。だからと言ってただ気弱で優しいでけでもなく、釘﨑の発言に雑に返したりノったりツッコんだり諭したり。打てば響くやりとりを繰り広げる二人はとにかく馬が合うというか、居心地が良いのだろうともなんとなく思った。
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