アキュラシー ◇
なるほど、似ていなくもありませんね――トリスタンは独りごちる。我が弓、我が友、我が恋人、愛しい人。白銀に輝く竪琴。いつ、何時もトリスタンが手にしているはずであるそれは今、いったいどうしてか、部屋の壁にひっそりと、孤独に立て置かれている。その姿はどことなく儚げで、心許なくも見え、ちらとそちらへ視線をやったトリスタンは、ほとんど無意識のうちに両眉を下げていた。
トリスタンが竪琴の代わりに手にしているものは、彼にとって馴染みがあるようでいて、まるでないものであった。コールタールのごとく鈍色に光る塗装を施されたそれは、今から半刻ほど前、とある英霊がこの部屋を訪ねてきた際、手にしていたものだ。トリスタンは、それを半ば強引に押しつけられた恰好であった。
14619