僕も「ふっふーん♪〜(今日も悠仁誘って映画みるかな〜)」
この間の地下室での出来事を思い出しながら、構内の見回りをしていた。
映画を見ることを口実に、この間よりも"先のこと"をしたいと思う僕は、我ながら変態だと思う。
夕日が差し込む校舎、実に青春。そんなことを考えると鼻歌も歌いたくなる。
ふと1年の教室を覗くと、悠仁が席に座って窓の外を見ていた。夕日のせいか悠仁の頬が赤く染まって見える。
「悠仁〜何してるの?」
「あ、五条先生。」
僕は、悠二の隣の席に座った。
「帰らないの?恵たちは?」
「あぁ、伏黒と釘崎ならさっきちょうど帰ったところ。」
「へぇ。で、悠仁は夕日の差し込む教室で黄昏てたってわけ?」
「まぁ、ちょっとね。」
そう答えた悠仁は何故か嬉しそうだった。
自分の胸がザワついた。
「悠仁さ、なんか良いことあった?」
「え?!なんで、分んの?!」
「あったんだ。」
思っていた反応よりも、明らかに動揺する悠仁に(これは、恋愛系か)と気づく。
「へぇー。何があったのー」
「うわ。先生、興味なさそうじゃん。」
悠仁にこんな可愛い笑顔を向けられる女に嫉妬した。この間、"あんなこと"があったのに、僕じゃなく他の女に気が行く余裕を感じると、僕ばっかり浮かれてたのかと、気分が悪くなる。
「どうせ、好きな人ができたとかそんなんでしょ。アオハルだね〜」
座っている席の机の上に、脚を投げ出した。
「なんで、俺に好きな人できたって分んの?!先生、もしかしてエスパー?」
「そんなの反応でわかるでしょ。」
「俺ってそんな分かりやすい?!…じゃあさ、それが誰かってのもわかる?」
「さぁ?それは分かんなーい。」
悠仁は顔は真っ赤だった。なんだその反応は。
悠仁の周りにいる女で、思いつくのは野薔薇くらいだけど、恵を含めこの3人はそう言う感じには全く見えない。
かと言って、ほとんど接点のない真希も可能性は低い。
他に思いつく女がいなかった。
「そっか…」
悠仁は少し寂しそうな顔をする。そして、真剣な顔をしたと思えば、僕に向き直った。
「先生に聞きたいことあんだけど。」
「ん?何ー?」
悠仁が僕に聞きたいこととは?この間の地下室での出来事が頭を過る。
「この間の地下室での…ことなんだけど…さ。先生って誰にでも、すぐああいうことすんの?」
やっぱり。概ね、『ああいうのは好きな人とするべき』だの、『好きな人できたから忘れて』とかそんなことを言われるんだろうと思った。
「さぁね。でも、自分からしたいと思ったのは悠仁が初めてだったよ。」
得体の知れない女への嫉妬で、冗談で返す余裕はない。
怒られるんだろうなと悠仁を見ると、耳まで真っ赤になって拳を握っていた。
(え、この反応はどっちだ?恥ずかしさ?怒り?)
自分の頭の上にクエスチョンマークが並ぶ。
「え?悠仁?どうしたの、そんなに真っ赤になって?」
恐る恐る聞いてみると、悠仁は片手手のひらを僕に向けて「ちょっと待って」と空気を深く吸い、ゆっくりとそれを吐く。
「俺、五条先生のことが好きっぽい。だから、この間のことが遊びじゃないんなら良い。それだけ!」
悠仁はピシャリと言い切った。拍子抜けした。と同時に驚いてどう反応して良いか分からなくなる。
(ん?今、僕を好きと言った?なのに、それだけ?)
悠仁は言い切ったという感じで、清々しい顔をしてやがる。
「え、ちょっと待って。急に告白?でも、"それだけ"って…付き合おうとかじゃなくて?」
柄にもなく慌ててしまう。
「付き合う?でも、俺と先生は学生と教師だし、年齢だって離れてんじゃん。俺はこの気持ちに気づいたから、伝えたかっただけだよ。」
悠仁は、(何か変なこと言ったかな?)ときょとんとしている。
「いや、そうかもだけど、そもそも未成年に手出した僕は青年健全育成条例違反だし、「児童買春罪」「児童淫行罪」に問われあるわけだから、完全に僕が悪いんだけど!両思いなら合法だし、この際立場とか年齢とか関係なくない?!てか、気持ちに気づいたって何?!」
「急にたくさん話すじゃん…先生、ちょっと落ち着いてよ。」
饒舌になった僕に、悠仁引いている。
「だから、さっき釘崎たちと話していて気づいたんだよ。先生はいつも距離近いから、なんか、こう、胸がザワザワしてさ。で、この間の地下室で"あんなこと"してもらったら意識しちゃうし…
でも誰から構わずしてんなら、なんか嫌だなーって。そしたら、それは好きだからなんだって分かってさ…」
悠仁は、はにかんでそう答えた。
僕は、頭の中まで真っ白になった。
悠仁も僕と同じこと考えてて、しかも好きってさっき分かったって…整理が追いつかない。
数分間、いやたぶん数秒間、僕がフリーズしていると、悠仁は照れ臭そうに問いかけてきた。
「でさ、先生もなの?さっき、両思いなら合法って言ってたじゃん。先生も俺のこと好きなん?」
「え…はい。そうです。」
「なんで、敬語?」
悠仁の笑い声に、だんだん冷静さを取り戻す。
改めて悠仁に向き直った。
両手で悠仁の肩を掴み、真っ直ぐ悠仁を見る。
「悠仁。僕は君が好きだよ。付き合おう。」
悠仁は戸惑っていた。
「え、嬉しいけど、俺たち立場が…」
「だから、もう関係ないでしょ。あんなことしてるんだから。で、悠仁は?僕と付き合いたいの?」
「えーっと…付き合うって、よく分かんないけど…あの、うん…はい。付き合いたいです。」
悠仁は耳まで赤くして、僕の目を見て告白を快諾した。
半ば言わせた感はあったけれど。
「じゃあ、今から僕たちカップルね!」
肩から手を離し、頭を撫でた。柔らかい髪に整った形。全てが愛しくなる。
"付き合う"だの"カップル"だの、ただの言葉の縛り。だけどその縛りで、更に愛おしく感じるのは不思議だ。
「じゃあさ、ハグしても良いん?」
何をいうかと思ったら、悠仁は可愛いことを口にする。
「もちろん!」
両手を広げると、悠仁は飛び込んできた。
そんな悠仁を力一杯抱きしめる。
言葉一つ一つで胸が溢れ、これが"幸せ"だと実感する。
「ふふふ…って、ちょっと先生、苦しいっ!締めすぎ!」
更に強く抱きしめたくなる。
「先生、好きだよ。」
顔を見ていなくても、悠仁の笑顔が伝わる。あぁなんて可愛いんだ。僕は悠仁の耳元でこう返した。
「僕も…好き♡」
おまけ
(『さっき釘崎たちと話してて気づいた』って、野薔薇たちも悠仁が僕を好きって知ってるってこと?てか、手出したのバレたよね。まぁいっか。そしたら公認だね♡)
五条悟の悪戯心に火がついた瞬間だった。
一方、虎杖悠仁は
(先生って意外に胸筋あるんだな…着痩せするタイプか)
五条悟のバストを堪能していた。。