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    Tyon。

    五悠を書いています。
    誰かに刺されば嬉しいです!

    @yon_472

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    POIPOI 67

    Tyon。

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    五悠です。
    視線④ 悠仁視点

    卒業してからも五条を忘れられていない悠仁。そんなことを考えていると、五条とよく訪れた公園に来ていた。噴水前のベンチに行くと、銀髪の人影があった。

    #五悠
    fiveYo

    視線④ 見ていてね忘れると決めた先生への気持ちは、心の奥深くの暗い所に隠していただけだった。
    会わなければいつか忘れる。時間が解決してくれる。そう信じて2年が過ぎた。

    未だに忘れられていない。
    伏黒や野薔薇に、よく近況を聞かれるのは、俺がまだ先生を引きずっている事が分かるからなんだろ。

    「最近どう?」

    その質問の先には「いい人は出来たか?」と続くのだろうと思う。けれど、先生についてや恋愛の話には一切触れない。代わりに好きなアーティストや、TV番組の話をした。そうすればこれ以上、未練が伝わない気がしたから。




    ◻︎◻︎◻︎



    フリーの呪術師として活動し始めてから、ナナミンに色々教わっていた。
    ナナミンに卒業してすぐ会いに行くと、面倒ですと言われたが、その割には世話を焼かれ、すっかり頼ってしまっている。

    ナナミンと一緒に依頼された地方の任務について、カフェで打ち合わせをしていた時のこと。なるべく触れない様にしていた話題がやってきた。

    「この間、五条さんに会いましたよ。君たちが活躍しているから暇だと嬉しそうに話していました」

    コーヒーカップを口に運ぶナナミンが、そんな話をした。
    先生の話題は避けていた。ナナミンがそれに気づいていたかは分からないけれど、今まで先生の話題が出ることがなかった。

    ナナミンにとって五条先生は、学生時代も呪術師としても先輩だ。彼が五条先生の話をするのは何ら変わったことではない。
    そんな、ただの世間話に胸の鼓動が早くなった。
    なるべく思い出さない様にと隠した気持ちが、表へ出てくる。

    「そっか。先生にそう言われるの嬉しいな!」
    「…君も会えば分かりますよ。あの人が虎杖くんをどう思っているかが」
    「え!俺の事、何て言ってたの?どんな風に?強くなったとか言ってた?!」

    先生が俺たちの話をしてくれたのは嬉しい。例えそれが生徒のひとりとしての話題だとしても。

    「いえ、特には。私はこれから用があるので、これで」

    食い気味に聞いた問いは流されてしまった。
    ナナミンが時計を確認して席を立つと、その後に俺も続いた。
    ナナミンと分かれて、ひとり歩いていればまた五条先生のことを思い出す。

    高専時代は、よく2人で出かけてたっけ。
    浅草とか六本木とか。六本木も任務以外で行った時は、オシャレで大人って感じで…俺には合わないなって思ったわ。
    思い出を振り返れば先生と過ごした休日は、沢山あったことに気づく。先生との思い出が欲しくて、よく俺から誘っていた。
    彼は忙しい人だからと遠慮していたけれど、ある日、疲労困憊していた伊地知さんに話しかけた時、こんな事を言われた。

    『五条さんは、虎杖くんといると癒やされるみたいですよ。よく君と過ごす休日の話をしてくれます。その日は気分が良くて、仕事もきっちりこなしてくれるんです…だから、休日はたくさん、一緒に過ごしてあげてください…!』

    それは彼の悲痛の叫びだった。決して俺の気持ちを知っていて発した言葉でない。
    でも嬉しかった。先生の癒しになれているんだと知れた。
    それから、たまに伊地知さんに先生のスケジュールを聞いて、休日は遊びに誘った。先生はいつだってその誘いをOKしてくれて、行きたいところも考えてくれる。
    今思えば、あれはデートって言うのだろうな。

    「あぁ、全然忘れられてない」

    足下の小石を蹴って、そう呟いた。
    目的のないまま歩いて辿り着いた結果は、先生とよく来た公園だった。
    大きな噴水の前のベンチで、先生が好きそうな甘い物を買って、一緒に食べていたな。
    思い出に浸りながらベンチへ向かうと、銀髪の男性が座っていた。

    「…五条、せんせ?」

    いつもの真っ黒いサングラスを覗き込んでも、起きているか寝ているか分からない。
    けれど目の前にいるのは、紛れもなく五条先生だ。ずっと忘れられなかった、ずっと会いたかった先生だ。

    「ゆうじ…」
    「やっぱ、先生じゃん!」

    久しぶりの先生に舞い上がってしまう。
    急に立ち上がった先生に、体を引き寄せられて、強く抱きしめられた。

    「本物?!」
    「わっ、どったの?」

    俺の存在を確かめる様に身体を触られる。
    『もっと顔を見せて』と言われて、両手で掴まれた頬が熱い。
    こんなに先生に真っ直ぐ見つめられるのは初めてで緊張してしまう。

    「…っ。久しぶり。会いたかったよ」
    「本当に?俺も会いたかったよ!」

    何かを言いそうになって飲み込んだ先生は、少し苦しそうで。笑顔を見せれば、愛しい人を見ているかの様な視線に変わる。

    先生に促されて、ベンチへ2人並んで座った。
    久しぶりに会ったというのに話し始めれば、昔と変わらない空間になる。
    懐かしい。この人の隣はやっぱり落ち着く。

    先生は、何故か俺の近況や最近ハマっているアーティストまで把握していた。

    「これ、僕も好きだよ」
    「本当?俺らいつも、趣味合うね!」

    そんな会話をしていれば、辺りは日が落ち始めていた。夕日が眩しい。

    「でも、本当久しぶりだよね」
    「そうだね、卒業式ぶりじゃない?」
    「そんな前か!でも、五条先生は何も変わってないね。なんか安心する」

    "安心する"なんて、何てことのない言葉なのに、ずっと言えなかった言葉の様に感じた。胸の奥が熱くなって、顔まで熱くなる。

    「悠仁は、少し変わったかな。大人っぽくなった」

    そう言われると嬉しかった。
    確かに髪も短くしたかも、背も少し伸びたし、どこか男っぽい肉付きにもなった。
    少しは先生に近付けているのかな。
    容姿は多少変わったかもしれない。それでも、こうして話していると隠していた、忘れようとした気持ちが前と出てくる。
    先生への気持ちは、あの時のままずっと変わっていない。

    「今日さ、久しぶりにここに来たんだよ。悠仁のこと考えていたら、ここに来たくなった」

    急に先生がそんな事を言うから、何と言っていいか分からなくなった。一生懸命、言葉を探す。

    「それ、本当?実は俺も先生のこと考えてた…」

    そう返すと、先生もどこか戸惑った様子だった。

    「…実はさ、恵や野薔薇から、悠仁がどうしているかは聞いていたよ。会っていなくても、ずっと悠仁のこと考えてたし、見ていたよ」

    先生は、卒業してからの間も俺の事を考えていてくれた。それが嬉しくて、胸が熱くなった。
    きっと恩師としての言葉なんだろう。でも都合よく解釈したくなる。そうだったら良いのに…そう思っている最中、先生は続ける。

    「悠仁。僕ずっと君が好きだったよ。昔も今も変わらない」

    その瞬間、夢かと思った。
    ずっと張り詰めていた糸がプツンと切れた。
    そして熱くなる目頭と、じわじわと込み上げる感情で、瞳から涙が溢れる。

    「先生…俺も…俺も、ずっと好きだった…!」

    思わず溢れた涙を先生が拭ってくれた。

    「ははは、悠仁何で泣くの?僕たち両思いじゃん」
    「うぅ…ずっと、ずっと言えなかったから…忘れようって思ってたから…」

    一度溢れてしまったものは止められなくて、鼻水まで溢れてくる。そんな俺を笑って受け入れる先生が、ポケットから出した綺麗なハンカチを俺に差し出す。

    「うぅ…。先生…かっこいい…」
    「当たり前でしょ〜」

    受け取ったハンカチで涙やら鼻水やらを拭けば、その布地が上質な物だと分かる。

    「落ち着いた?」
    「うん…でもこのハンカチ…高いやつだよね」
    「あぁ、別にいいよ。消耗品だし」

    後で洗って返そうと思い、自分のポケットへ仕舞う。五条先生を見れば、なんだかニヤニヤしてこちらを見ている。

    「それでさ、悠仁。僕のこと好きだったの?」
    「うん…」

    改めて聞かれると照れてしまう。
    腰に先生の手が回され、距離を縮められる。

    「高専ときから?」
    「うん…」
    「そんな前から僕たち両思いだったんだね〜」

    弾んだ声で、頬に擦り寄る先生は、いつもの大人な先生と言うより、甘えん坊な子供の様だった。
    先生の柔らかい髪が頬に当たりくすぐったい。
    ずっと近付けなかった先生が、こんなに近くにいる。それがすごく嬉しかった。

    「先生、なんか可愛いね」
    「ずっと我慢してたんだよ?その分堪能しないと!あぁ、ゆうじ〜」
    「ギャップが…激しい!」

    チュッと頬に柔らかいものが当たった。
    心臓がはピクリと跳ね上がる。

    「悠仁。僕と付き合うよね」

    さっきまで子供の様にはしゃいでいた先生が、急に大人な顔をする。

    「…はい」
    「この後、うち来るでしょ」
    「…また、急だな」
    「嫌と言っても連れて行くけどね」

    サングラスを少しずらしで、いい顔する先生は自分の武器を分かっている。そんな顔で言われたら、

    「はい」

    以外の言葉は忘れてしまう。

    「これからは、ずっと一緒にいよう」
    「うん…これからは近くで見ていてね」

    サングラスを外した顔が、こちらに近づいてくる。自分もそれに合わせて目を閉じた。

    噴水が再び高く伸びる。
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