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    みち@ポイピク

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    ささろ小説の画像をなげこみます

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    POIPOI 22

    みち@ポイピク

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    差し入れにくっつけてお渡ししていたささろぐまミニブックです。公園に住んでいるのらぬいのささろぐまと、人間のささろのおはなし。
    前の話はこちら→https://poipiku.com/290992/5902453.html

    #ささろ
    sasaro
    ##ささろぐま

    ささぐまとろしょぐまのお正月 ささぐまとろしょぐまは、ちいさなくまのぬいぐるみ。ふたりでくらしている公園で、今日もなかよく遊んでいました。とってもよく晴れたお天気で、空はぬけるような青い色をしていました。ろしょぐまが青空を見上げていると、空になにかがうかんでいるのが見えました。ちょうちょのようだけれどずっと高いところにいて、鳥のようだけれど形は少しちがいます。
    「なあなあ、ささぐま。あれはなんや?」
     ろしょぐまは、となりにいたささぐまにたずねました。
    「ああ、あれはな、タコアゲっちゅうあそびやで。人間のこどもたちが、おしょうがつになったらタコを空にとばして遊ぶんや。糸でつなげて、地面からフワーってとばしてるんやで」
    「へえ、そうなんや。ささぐまはいろんなこと知ってるなあ」
     ろしょうぐまはかんしんして言いました。ぼうけんがだいすきなささぐまは、人間たちのくらしにとてもくわしいのです。ろしょぐまはしばらく空をふわふわととんでいるタコをながめてしまいた。タコ、というけれどタコヤキとはぜんぜんちがう形をしています。びゅうびゅうと風にのってとんでいるタコを見ているうちに、ろしょぐまもタコアゲという遊びをやってみたくなりました。
    「ささぐま、タコアゲおれもやってみたい! タコってつくれるんかなあ」
     ささぐまはしばらくだまって考えていました。ふかふかのうでをむぎゅりとくんで、うんうんと考えてから、ささぐまは言いました。
    「ろしょぐまがやりたいんやったら、おれがんばってつくってみるわ! 手つだってくれるか?」
    「うん、おれ手つだうわ! いっしょにがんばろな」
     ささぐまとろしょぐまはにっこりわらいました。そしてさっそく、公園で使えそうな材料を集めることにしました。ふたりは落ち葉をつなぎあわせて大きなタコをつくり、まんなかに糸をとおして、持ち手になりそうなサイズの小えだにぐるぐるとまきつけました。これで手作りのタコが完成です。
    「やったで、これでタコアゲができるなあ」
     ろしょぐまはうれしそうにびょんびょんとびはねました。風にのせてとばすために、ふたりのちいさなくまたちは公園のまんなかの広場にてくてくと歩いていきました。ぴゅう、とふきつける木がらしはとてもつめたくて、ふかふかした毛皮を持っていてもふるえあがりそうな寒さです。けれどろしょぐまは、寒さなんて気になりませんでした。タコアゲにちょうせんするのが楽しみで、わくわくしていたからです。
    「ささぐま、おれやってみるな!」
     ろしょぐまはさっそく、タコにつなげた糸を持って走ってみました。けれどタコはうまく風にのってくれません。地面をころがってろしょぐまのあとをついてくるばかりです。
    「そうや、たしかもうひとりがタコをもってあげたらええねん。みたことあるし、おれやるわ」
     ささぐまはろしょぐまがひきずっていたタコを両手でかかえました。ろしょぐまが走ると、そのうしろをタコを持ったささぐまが走ってついてきます。ぴゅうぴゅうとふく風はますます強くなって、タコがぐっと重くなったような気がしました。それでもろしょぐまは走って、走って、走りつづけました。しばらく走ったその時です。ろしょぐまをうしろからひっぱっていたみたいにじゃまをしていたタコが、きゅうにふわりとかるくなりました。ろしょぐまがふりかえると、葉っぱで作ったタコが風に乗って高く空へとまいあがっています。
    「やったあ、とんだ! タコアゲせいこうや!」
     ろしょぐまはうれしくてどんどん糸をほどいていきました。糸が長くなったぶんだけ、タコは高く高くとんでいきます。
    「ほらみてみ、ささぐま、すごいやろ」
     ろしょぐまはこうふんしてささぐまに声をかけました。ところがささぐまからのへんじがありません。どうしたのかなとあたりを見回すと、ささぐまのすがたがきえています。どこへいったのだろう、とろしょぐまが首をかしげていると、遠くからささぐまの声が聞こえてきました。
    「ろしょ~た~すけて~」
     どこかでささぐまがたすけをもとめています。ろしょぐまはびっくりして、ささぐまをさがしました。けれども、どんなにあたりを見回してもささぐまはいませんでした。
    「ささぐまーどこやー」
     ろしょぐまはこころぼそくなって、ふるえる声でささぐまをよびました。すると頭の上のほうから、ささぐまの声が聞こえました。
    「こ、ここやあ~タコにのって、とんでしもた~」
     ろしょぐまが見上げると、葉っぱのタコのうえにオレンジ色と黒色のささぐまの耳がちらりと見えました。どうやらろしょぐまは、ささぐまごとタコを空にとばしてしまったようです。
    「え、えらいこっちゃ、どないしよう!」
     ろしょぐまはタコを空からおろそうとしました。けれどろしょぐまはタコアゲのやりかたをよく知りませんでした。むりやり引っぱったら、タコをついらくさせてしまうかもしれません。どうやったら安全にささぐまを地面に着地させることができるのかわからなくて、ろしょぐまはおろおろと空を見上げるばかりです。ろしょぐまがまごまごしているうちに、空に黒くて大きな影がせまってきました。
    「あっ、あぶない! テキシューや!」
     黒いかげはカラスでした。しかも公園でいちばん大きくて、いちばんいじわるな、カラスのおやぶんです。カラスのおやぶんはいつもくまたちのふかふかしたオレンジ色の毛皮を見つけると、追いかけてきてつっつこうとするのです。
    「たいへんや、どないしょ、どないしょー!」
     どうしたらささぐまを助けることができるのか、ろしょぐまにはわかりませんでした。ろしょぐまのきらきらしたししゅう糸の目から、綿のなみだをぽろぽろとこぼれました。
    「ちいさいくまくんやないか、なにしてるんや」
     そのとき、ろしょぐまのうしろから声がしました。ろしょぐまにそっくりなメガネをかけた、ろしょぐまと同じ色の目をした人間の盧笙です。ほんとうはぬいぐるみたちは大人の人間と仲良くなってはいけないきまりなのですが、今日ばかりはこの風がわりな人間に見つけてもらえたのはとてもラッキーでした。
    「さ、ささぐまが、ささぐまがおりられへんようになってしもた! カラスにねらわれてるねん、たすけてください!」
     ろしょぐまがなみだながらにそう言うと、盧笙はふわふわととんでいるタコに気がつきました。そしてその上にささぐまが乗っているのを見て、慌ててろしょぐまの手から糸をつないだ小えだを受け取りました。
    「大丈夫やで、今助けるからな……こら、カラス! その子はエサとちゃう、どっかいけ!」
     盧笙はカラスを追いはらって、器用にタコの糸をまきとりました。
    「よしよし、もうだいじょうぶやからな。こわくないで」
     少しずつ下に降りてきたタコとささぐまを、背の高い盧笙がつま先立ちになって優しく受け止めてくれました。ていねいに地面に下ろしてもらったささぐまは、けがひとつありません。
    「うわあん、ささぐまー! ごめんな、めいわくかけて、ごめんなささぐまー!」
     おれのせいや、とろしょぐまは思いました。じぶんがタコアゲをしたなんていったせいで、ささぐまはたいへんな目にあったのです。でもささぐまは、いつものようにニコニコして言いました。
    「めいわくなんて、おもってないで。すっごいおもろかったわ、ろしょぐまとおると、なにがおきるかわからへんからうれしいわ。やっぱりろしょぐまは、世界一おもろいなあ!」
     ささぐまはいつもとてもやさしくて、たのしくて、ゆうきのあるくまでした。そんなささぐまといっしょにいられることが、ろしょぐまにとってもとてもうれしいことでした。ろしょぐまとささぐまは、おたがいの手をにぎりしめて友情をたしかめあいました。
    「きみは、簓とおんなじこと言うんやなあ」
     盧笙がしみじみとつぶやきました。どういういみがよくわからずに、ささぐまとろしょぐまは盧笙の顔を見上げました。
    「いや、なんでもないねん。それよりきみら、こんな寒いところでたこあげして寒ないか。よかったら、うちに寄って雑煮でも食べていき」
    「ぞーに? て、なに?」
     ろしょぐまが首をかしげると、ささぐまはこうふんぎみに言いました。
    「それって、おぞーにのことやんな? 人間がお正月に食べるごちそうやん! 食べてみたい、いってもええの!」
    「ええよ、かわいいお客さんは大歓迎や。ああ、だれかに見つかったら困るやろ、ポケットに入っていくとええよ」
     盧笙はコートについた左右のポケットに、ささぐまとろしょぐまをひとりずつ入れてくれました。しばらくポケットのなかでおとなしくしていると、盧笙がドアを開けて家の中に入っていく音がしました。
    「ここが俺の家やで。今日は誰もこぉへんから、気ぃつかわんとゆっくりしていきや」
     そう言うと盧笙は台所でおぞうにを作り始めました。ささぐまとろしょぐまは、おぞうにが出てくるのを待ちながら、部屋の中をぐるりと一回りしてみました。夏のしばふみたいにきれいな緑色のじゅうたんに、テーブルがひとつ。そしておおきなテレビがおいてありました。
    「おまたせ、おぞうにできたで。熱いから、きぃつけて食べや」
     ちいさなおわんにはいったおぞうにがテーブルの上にふたつならべられました。ちいさな、といっても人間のサイズにしては、ということです。ささぐまとろしょぐまにとってはどんぶりみたいにおおきなおわんでした。ささぐまとろしょぐまがふうふうとおつゆをさましていると、盧笙はテレビのスイッチを入れて画面に目を向けました。
    「ああ、出とる出とる。簓は正月もおおいそがしやなあ」
     ささぐまとろしょぐまがテレビを見ると、そこにはささぐまにそっくりな人間の簓がうつっていました。
    「おれにそっくりな人間のやつ、ゲーノージンなん?」
     ささぐまがたずねると、盧笙は誇らしげに言いました。
    「せや、簓は世界一おもろい芸人なんやで」
     ふうん、とささぐまは返事をしてテレビの画面にうつった自分そっくりの人間をかんさつしました。なんだかダジャレばかりいっていて、世界一おもしろいのかどうかはよくわかりませんでした。けれど、盧笙がこの簓という人間のことがだいすきなのはよくわかりました。簓を見ているときの盧笙は、とっても幸せそうだったからです。
    「ささぐまににてるけど、人間の簓は手足も長くて背も高くて、かっこええなあ」
     ふと気が付くと、ろしょぐままでテレビの中の簓に夢中になっていました。おいしいおぞうにを食べながら、ふだんは見られないテレビを見るなんて、とっても幸せなはずでした。けれど、なんだかささぐまはむねの中がモヤモヤしてきました。ろしょぐまが人間の簓をほめるのが、なんとなくおもしろくないのです。
    「おもろいなあ、人間の簓おもろいなあ。おもしろいしかっこええなあ」
    「な、ろしょぐまくん」
     盧笙が、ちょい、とろしょぐまの耳をつっつきました。ろしょぐまが振り返ると、盧笙はちいさな耳になにか小声でないしょばなしをしています。
    「あっ、えっと……さ、ささぐま!」
     ろしょぐまは急に大きな声でささぐまをよびました。びっくりしておもちをのどにつめそうになりながら、ろしょぐまのほうを見ると、ろしょうぐまはかおを赤くして言いました。
    「さ、ささぐまも、すごくかっこええからな!」
    「ふえっ? あ、ありがとお……」
     ささぐまも顔をまっかにしてお礼をいいました。胸のなかのモヤモヤがふしぎなことにすうっととけて、どこかにきえていきました。おいしいおぞうにを楽しい気持ちで食べられて、ささぐまはとってもうれしくなりました。盧笙とろしょぐまは、いったいどんなまほうをつかったのでしょうか。
    「今夜は雪になるみたいやで。公園のおうちは寒いやろ、今日はうちに泊まっていき。簓は忙しくて来られへんと思うから、さみしなくてちょうどええわ」
     盧笙はそう言うと、くまたちのために洗面所に温かいお湯をためてくれました。お風呂をどうぞ、といわれてささぐまとろしょぐまは服をぬいでお湯に綿の身体を浸しました。初めてのおふろはあったかくて、いい匂いがしました。
    「すごいなあ、ささぐま。おふろってあったかくて、ふわふわするなあ」
    「ほんまやなあ。しあわせやなあ、ろしょぐま」
     ふたりがお湯につかってほかほかに温まっていると、部屋のほうから盧笙の声が聞こえました。
    「ああ、簓……忙しいんやろ、ええよ……うん、がんばりや、待っとるから」
     どうやら盧笙は電話で簓とおはなしをしているようでした。やさしい盧笙の声が、いつもよりもっとやさしい声になっています。
    「おれな、きがついてしもたんやけどな」
     ろしょぐまがひそひそ声でささぐまに言いました。
    「たぶんな、人間のろしょ、人間の簓のこと好きなんやで」
    「せやな、そんな気がするな」
     大好きなひとがいなくてさみしくて、盧笙はささぐまとろしょぐまを部屋にしょうたいしてくれたのでしょう。うふふ、とふたりは顔を見合わせて笑いました。
    「らぶらぶやなあ」
    「せやな、らぶらぶやな」
     はやく人間の簓がこの部屋に来てくれるといいのにな、とささぐまは思いました。けれどその時はこの部屋にしょうたいされたくはないな、とも思いました。ろしょぐまが人間の簓をかっこいいと言うところは、あまりみたくないからです。
    「今日、人間の簓がおらんでよかったー!」
     おかげでおぞうにを食べ、お風呂に入り、ろしょぐまとたのしいお正月をすごすことができました。ささぐまはかたまでお湯につかりながら、心のそこからほっとしていました。
    「くまくんたちーお風呂あがったら、ドライやーかけてあげるから言いやー」
     簓との電話はもう終わったのでしょう。盧笙が声をかけてきて、ささぐまとろしょぐまははあいと元気に返事をしました。
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