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    成人済|五伏|たまに作文するおたく|おにショタはいいぞ

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    ぱろ五伏をちまちま書いている
    伝統芸能の当主五とねぐれくとされためぐ

    #五伏
    fiveVolts
    #パロ
    parody
    #おにショタ

    ブルーホールのような瞳をした子供が、どんな過程で絶望や諦観を宿すに至ったのか。
    はじめは、純粋な興味と好奇心だった。
    けれどいまは、深淵からすくいあげたいと、半ば本気で願ってやまない。

    日本の伝統芸能を継承する家に生まれた五条は、物心がつく頃にはすでに初舞台を踏んでいた。
    日夜厳しい稽古に耐え、表では天才ともてはやされる日々のなかで歪んだ性格を知る者はそう多くない。
    誰にだって表裏はあるものだろう、と静かに微笑み、五条の歪みを肯定してくれた親友がいなければ、今ごろもっと歪んだ大人になっていた。
    家を継ぎ、襲名披露も終えてようやく訪れたわずかな休みを利用し、五条は海まで車を走らせる。
    家が所有している別荘とは別に、由比ヶ浜近くの古民家を購入して以来、休みが取れるとそこへ向かう。
    家に縛られず、ただの五条悟という人間に戻れる気がするからだ。
    海沿いをドライブする時用に編集した洋楽のプレイリストを流しながら、時おり曲にあわせて口ずさんだりする時間は五条の心を慰めてくれる。
    梅雨の中休みだろうか、数日続いた雨も昨日止み、今日は快晴がひろがっていて海が太陽光を反射させ、きらきらと眩しく光っていた。
    あじさいの季節は少し過ぎただろうか。鎌倉のあじさいは、都内より僅かに遅い。もしかすると、庭に植わっている株がまだ咲いているかもしれない、と一縷の望みを抱く。
    夕方になればサーファーたちがボードを小脇に抱え、裸足で浜辺を歩きだすだろう。
    夕食の買い出しがてら、サンセットを眺めに浜へ出るのも悪くなさそうだ。
    狭い生活道路の先、T地路を右折するとカーナビが目的地への案内終了を告げる。
    右折した先、突き当たりにある古民家の前で車を停めて一度降車し、門を開けてから再び運転席に戻った五条は敷地の中へと愛車を滑りこませた。
    「はあ、落ち着く」
    自分だけの城へと到着し、後部座席から荷物をおろした五条は玄関ではなく縁側へと庭づたいに向かい、土と緑の匂いを存分に吸いこみ、深く息を吐き出す。
    縁側に腰を落ち着け、庭をゆっくり眺めると、この古民家を購入した時から植わっていたあじさいは見頃を少し過ぎてはいたものの、じゅうぶん楽しめる色合いで咲き残っていてくれた。
    お家柄もあり、昔から美しく活けられた花には触れている。けれど、こうして自然のままに咲き、終わりを迎える花もまた良いものだ。
    ひとりきりしかいないこの家で、これから一週間のオフ。天気もよく、気がかりだったあじさいも残っていてくれた。幸先の良さに、五条の機嫌はどんどんと上向いていく。
    「さて、まずはランチかな」
    持ってきた荷物の中には一週間ぶんの食材も含まれている。現地調達するものとあわせて使えるように計算して持ってきたが、とりあえず今日は持参したものでランチとディナーを作る算段だ。
    さんさんと光のさしこむ縁側から腰をあげ、大きく伸びをすると、荷物を抱えてようやく玄関の扉に鍵をさしこんだ。


    「やってるやってる」
    夕方、歩いて由比ヶ浜の浜辺にやってきた五条の視界に広がるのは海と、果敢に波へと挑もうとするサーファーたちの姿。
    いわゆる湘南の海は他と比べて波が穏やかな傾向があり、地元のローカルから始めたての初心者まで幅広く波乗りを楽しめる場所である。
    道路から砂浜へとおりるための階段の端に座った五条の横を、サーフボードを抱えた高校生くらいの少年たちがぞろぞろとおりていく。
    だいぶ日も長くなってきたから、放課後に乗ってもそれなりの時間楽しむことができるのだろう。
    楽しげに声を弾ませながら、一目散で海へと駆けていく少年たちの姿を見送る。
    今日の波は一昨日まで続いた雨が残っているせいか、以前訪れた時より少しだけ高いように思う。サーファーにとっては嬉しいのかもしれない。
    ざんざんと規則的にも感じられる波が寄せては返す音に聴き入り、五条が海と浜辺を眺めていると、視界の端にぽつんと佇む子供の姿をとらえた。
    地元の子供だろうか、ランドセルを背負っている。小学生の下校時刻にしては遅いような気がして、寄り道なのかもしれない。
    波乗りに興じるサーファーたちはセット待ちに忙しく、日没前のこの時間、海辺に小学生がひとりきりでいても誰も声をかけていないようだった。
    黒い髪が不規則にぴんぴんと跳ねている子供は、じっと海を見つめている。いや、睨んでいると言ったほうが正しいかもしれない。
    普段ならさほど気にもとめないところが、らしくもなく子供のことが気になってしまった五条は、立ち上がって子供へと近づいた。
    ざく、ざく。自分に近づいてくる砂を踏む音にも、子供は視線をうつさない。
    ただただ、じっと海だけを見ている。一瞬、子供の目じりが夕陽に照らされてきらりと光ったような気がした。
    「泣いてるの?」
    思わず声に出てしまい、あ、と五条が口に手をあてると、そこでようやく、子供が視線を海から五条へとうつす。
    「泣いてません」
    まだ声変わりもしていない、子供特有のアルト。背負っているランドセルが大きめに見えることから、おそらくまだ低学年だ。近くに寄って改めて子供の姿を見ると、栄養が足りていないのでは、と不安になるほど細い手足。
    小学生がこんな時間にひとりきりでいるのだ、両親は共働きなのかもしれない。ひとりで夕飯を食べることが多ければ偏食もし放題で体重が増えないし身長も伸び悩む。もっとも男子の成長期は女子より遅く、五条も中学に入るまでは華奢だったからこの子供の伸び代はまだまだこれからだろう。
    「子供はもう帰る時間でしょ、悪い大人に誘拐されても知らないよ」
    子供と接する時は目線をあわせること。親友が教えてくれたアドバイスを思い出し、五条は長身を折りたたんだ。
    しゃがんでちょうど目線が合うほどに、子供はちいさい。
    なにか理由がありそうな気はする。ひとりで海にきて、まるでこの世の終わりみたいな目をして海を睨んでいたのだから。
    それでも、まだランドセルを背負っているような子供が逢魔ヶ刻に外をうろついているのは問題だ。
    ついつい話しかけてしまった子供が事件に巻き込まれました、なんて報道が明日のニュース番組で流れていたら、さすがに後味が悪すぎる。
    五条の問いかけに、子供はぐっとくちびるを噛み締めて、それから俯いてしまった。
    「帰りたくない理由でもあるのかな」
    「……誰もいないからいいんです」
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    JjtGhs

    MAIKINGぱろ五伏をちまちま書いている
    伝統芸能の当主五とねぐれくとされためぐ
    ブルーホールのような瞳をした子供が、どんな過程で絶望や諦観を宿すに至ったのか。
    はじめは、純粋な興味と好奇心だった。
    けれどいまは、深淵からすくいあげたいと、半ば本気で願ってやまない。

    日本の伝統芸能を継承する家に生まれた五条は、物心がつく頃にはすでに初舞台を踏んでいた。
    日夜厳しい稽古に耐え、表では天才ともてはやされる日々のなかで歪んだ性格を知る者はそう多くない。
    誰にだって表裏はあるものだろう、と静かに微笑み、五条の歪みを肯定してくれた親友がいなければ、今ごろもっと歪んだ大人になっていた。
    家を継ぎ、襲名披露も終えてようやく訪れたわずかな休みを利用し、五条は海まで車を走らせる。
    家が所有している別荘とは別に、由比ヶ浜近くの古民家を購入して以来、休みが取れるとそこへ向かう。
    家に縛られず、ただの五条悟という人間に戻れる気がするからだ。
    海沿いをドライブする時用に編集した洋楽のプレイリストを流しながら、時おり曲にあわせて口ずさんだりする時間は五条の心を慰めてくれる。
    梅雨の中休みだろうか、数日続いた雨も昨日止み、今日は快晴がひろがっていて海が太陽光を反射させ、きらきらと眩しく光ってい 2622

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