夜明け前「貴殿夜はいつもどうしているんだ?」
「む?」
口いっぱいに朝餉の米を夢中で掻き込んでいたまるい瞳がこちらへ向く。
俺の暮らす長屋は数日前からセイバー ―― 目の前で美味そうに朝餉を平らげる小柄の、黙っていれば女子と見紛うほどにうつくしい男、が寝食を共にしている。
彼は英霊、サーヴァントという存在であり人の身ではない。そして彼のマスターに選ばれた自分は彼と運命共同体、つまりは一蓮托生になるのだという。
当たり前のように俺の長屋で生活を共にし始めたセイバーに戸惑いながらも翌朝にはひと晩にして変わってしまった何もかもに対して、それがずっと続いてきた事柄であったかのように受け入れられてしまっているのだから自分も大概なのかもしれない。本来なら名前すらも知らない、どこの誰であるかもわからぬ者を家に入れるほど不用心でもなければお人好しでもない。生活にそんな余裕もない。
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