パーティーの正しい終わり方を知っている人間は、一体どれぐらい存在しているのだろうか。少なくとも、ここにいる人たちは、誰もそれを知らないみたいだ。
獅子神さんの後片付けを手伝って、それが終わったら僕は帰ろう……、と思っていたのだが、村雨さんたちによるハムの強奪が発生したことにより、なんとなく帰りにくい雰囲気が出来てしまった。今日の内に真経津さんにワンヘッドの話をするのは無理だろうから、明日出直そう、と思うが、じゃあいつここを出れば良いのやら。半ば思考を放棄させながら。真経津さんたちのゲームを眺めていると、「おい」と後ろから声が飛んできた。振り返ると、そこには怒った様子の獅子神さんが立っていた。
「お前ら、ハムは」
返事はない。ハムを強奪した犯人たちは、ゲームに夢中だ。
「おい」
二度目の呼びかけにも反応はない。本当に聞こえていないのではなく、聞いていないフリをしているのは、僕の目にも明らかだった。
「あの、僕買ってきますよ」
「お前は関係ねえじゃねーか」
「いいんですよ。ついでに僕、おいとましますね」
僕が立ち上がって、出かける(帰る)準備をし始めると、「御手洗くんが行くの?」と真経津さんがひょっこりとこちらを見ていた。
「ならボクも行くー」
「え? 真経津さんゲームは」
「飽きちゃった。から御手洗くんについてく~。いいでしょ?」
ね? と真経津さんはねだるように、僕に縋りついた。恋人にここまでされて、「嫌です」と断れる人間って存在するんだろうか。僕は、出来ない側の人間だ。
「じゃあ、一緒に行きましょうか」
僕が了承すると、わーい! と真経津さんは喜んで、「じゃあ早く行こう!」と僕の腕に抱き着いた。それにちょっとドキッとしつつ、そういえば、この感覚は久々だと思い出した。