広々とした売場に所狭しと敷き詰められた極彩色。その中を縫うように歩いていくフジの後を追いながら、連れだとは思いつつちょっとばかり居心地の悪さを感じてしまう。
「今年は好きな水着で一緒に海やプールに遊びに行きたいな!」とはしゃぐフジを伴って彼女の水着を買いに来た。一緒に選んで欲しいと上目遣いでお願いされたことを思い出すと、女性水着売場での居心地の悪さも我慢できるというものだ。
小一時間見て回るうちにふと『よく考えると他の男性にもフジの水着を見られるんだよな……露出多めのフジは一人に出来ないぞ!? ナンパとか言語道断』などと思い当たり、フジが「これ、どうかな? 似合うかな?」と伺ってくる水着の布面積ばかり気になって仕方がない。
「俺はこっちの淡色のやつ、柄物のトップスとスカートセットで脱いだらビキニスタイルにもなるやつが良いと思う。そこのマネキンが着てる黒のワンピースも似合いそう」
「このフリルビキニはだめ? 可愛いかなって」
「男性客が多いとナンパとか危ないからビキニはだめっ!いないとこならいいけど!」
はっ。
保護者目線の兄さんみたいな本音が飛び出してしまった。
「ふふっ、心配してくれるんだ。嬉しいなぁ」
じゃあさっきのセットの水着にしてトレーナーさんだけの前でビキニになるよ、と片目を瞑って返されてしまった。私はトレーナーさん以外には靡かないのだけどね、なんてトドメの一言まで付けて。
ううむ、これは俺の負け。