魔法、それがお伽話の産物ではなくなったこの現代。氷のような美しさを持つこの男が居たとしても、なんらおかしくはないのだろう。
氷のような、というのは比喩のような言い方をして比喩ではない。言い方に迷うのだが、つまるところ彼自身が氷のようなのだ。触ればこちらが凍りだしそうなほど冷たく、吐く息は白い。それからその凍った湖の底を写し取ったような瞳に、薄暗い夜色を散りばめた髪。
極めつけは、術式補助演算機―CADを組み込んだハイヒール。黒一色の装飾品の中で、唯一青い差し色の目立つハイヒール。
「司波中尉。配置、完了しました」
敬礼が崩れそうになるのを必死に堪えながら、全ての下準備が終えたことを告げる。そうすれば美しい上官はゆったりとした動きで振り返り、頷いた。
「了解です。では、作戦開始の二一〇〇まで待機を」
「はっ」
今は夏だと言うのに、それでも吐き出す息が白色なのは、彼の魔法特性故なのだろう。最初こそ不思議だと思っていたが、慣れてしまえば早いもので。
今にも辺りを凍り付かせようとするその白い息に、囚われた者は少なくない。
って、な感じのお兄様が書きたいです。