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    Enki_Aquarius

    @Enki_Aquarius

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    Enki_Aquarius

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    ##獣蹄

    2nd scar 達也が正式に風紀委員へと配属され、数日。風紀委員会として最初の仕事となる部活勧誘週間がやってきた。この時期は、事実上フリーパスでCADの学内携行が許可されるため、無法地帯となる。
     殴り合いなんて軽いもの。魔法の打ち合いなどざらにある。
     だが、そんな状況を放置していい、という訳では勿論ない。風紀委員会はこの一週間、気を引き締めて鎮圧に取り掛からなくてはいけない。最も、出来ることならば魔法の打ち合いに発展する前に止めることこそがベストではあるが。
     達也はそんなことを思いながら、経った今薙ぎ払った竹刀を見た。
     竹刀の持ち主は、剣術部二年‐桐原武臣。達也が庇った生徒は、剣道部二年‐壬生紗耶香。同級生であるエリカの説明曰く、二人共に実力者であるという。
     本来であれば介入する必要性は皆無だったかもしれないが、流石に魔法の不適正使用を見逃すわけにもいかない。
     桐原が使用した魔法は振動系近接戦闘魔法‐高周波ブレード。一撃目を壬生は避けて見せたが、二撃目はそうはいかなかっただろう。
    「ふぅ」
     達也は壬生を庇うような体制から姿勢を正し、インカムを起動させた。竹刀を薙ぎ払った際に、桐原は体制を崩して不安定な状態で倒れ込んだ。骨折まではいっていないだろうが、数日は続く痛みを伴っていると見た。
    「担架の用意をお願いします」
     念には念を。必要ないかもしれないが、用意をするに越したことは無い。
     が、
    「おい!どういうことだ!」
     どうやらこの一件はこれだけでは終わらないようである。
     達也はインカムに添えていた手を離し、声を荒げた生徒の方へと視線を向けた。桐原と同じ色の胴着を着用しているところを見れば、すぐに彼が剣術部の生徒であることがわかる。
    「どう、とは?」
    「なんで桐原だけなんだ!壬生だって同罪だろう!」
     そう言って剣術部の生徒は、達也の後ろで様子を見ていた壬生を指さす。壬生も流石に言い逃れができないと思ったのか、肩を大袈裟に揺らした。
     が、達也は首を捻った。
    「魔法の不適正使用により、ご同行願うためですが?」
     桐原は間違いなく魔法を使用したが、壬生が魔法を使用しようとした形跡はどこにもない。彼らの目を欺けたとしても、特異的な目を持つ達也の目を誤魔化すことはできない。
    「必要があれば、後日聴取にお伺いするだけですので」
     達也がそう言って事件を終わったことの様に扱おうとすれば、剣術部の男はとうとう逆上した。
    「ふざけるなよ!ウィードの分際で!」
     そこまで、ブルームという学生の立場が偉いとは。
     であらば、魔法師の先を行く我々の地位は、一体どういうものになるのか。
     達也は小さなため息を吐き出して男が伸ばしてきた手から逃れるように一歩引いた。
     達也もある程度武術に心得があるため、この場を凌ぐことなど容易いもの。が、些か混沌と化したこの場をこのまま泥沼化させるのは得策ではないように思えた。
     さて、どうするか。
     飛んでくる拳を避け、達也は軽やかに宙で翻る。まるで翼が生えたようだ、とは誰の言葉だったか。
     頭の中に次々と重なっていく情報に気を取られたその一瞬、CADに手を伸ばした男の姿を達也は視界の端に捉えた。
     距離は遠く、達也お得意の無効化魔法の射程外。しまったと思ってももう遅く、着地する頃には魔法の構築が完了していた。
     男の口端が上がる。
     が、その先に光る眼を達也は見つけた。
     咆哮が一つ。
     久方ぶりに見たその姿は、何時だって美しかった。

     それは、神からのギフトとも言えるが、同時に悪戯だとも言えた。

     白き狼がゆったりとした動作で第二小体育館へと入ってくる。恐れを覚えたのか、今まで達也に向かってきていた生徒たちも次第に後退していく。どうやら、先ほど構築された魔法は、驚きでキャンセルされてしまったようだ。
     一流の魔法師を目指すのならば、彼には足りない物が多いようだ。
     達也はそんな場にそぐわない考えを浮かべては苦笑を浮かべ、肩を揺らす。どうやら、狼はそれが気に入らないらしい。
    「あれ?と言うか、校内って変身して大丈夫なんですか?」
     CADの学内携行が許可されている身であることは勿論知っているが、変身が可能だ、ということについては聞いた覚えがない。
     そもそも、自分たちは身を隠している立場だということを、彼は忘れているのではないだろうか。
     達也がそう思って訝しげな視線を寄越せば、狼は小さく吠え、それから変身を解いていった。
    「勿論、許可などされていない」
     白い毛並みは段々と見知った制服と肌色に、髪はまだ名残が残っているのか、彼の茶髪と混じったミルクティの様な色を過程に踏んだ。
     瞳の色も赤から落ち着きを取り戻し、彼が首を振った所でいつも通りの姿となった。
    「だが、同時に校則違反とも明記されていない」
    「言われていなければ大丈夫、という理論ですか」
     達也がそう言って笑えば、服部は微笑んだ。
    「こういうのは、お前の得意分野だろう?」
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