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    mofuri_no

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    POIPOI 54

    mofuri_no

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    何故か出てきた西遊記。原作後世界。ツッコミどころ満載ですが不真面目な気持ちで読んでください。不真面目な気持ちで読むと西遊記は萌えます。
    カプなしでわちゃわちゃさせようと思ってたけど
    やっぱりほんのりヒュポかな?になりました

    monkey magic「伸びろ如意棒!」
    ポップの声に合わせてブラックロッドが伸縮する。
    「せっかく直してもらったのに、まったく…ロン・ベルクにどやされるぜ…」  
    ポップが溜息をつくと、
    「ロン・ベルクさん見にくるって言ってたよ。ノヴァが連れてきてくれるって」
    ダイがにこにこして言う。
    ポップの顔色がさっと変わった。
    「なぁにぃー」
    「ジャンクさんとスティーヌさんも」
    「なぁにぃー」

    ポップは気が気でなかったが、ひとまず進めなければ。次のセリフを思い出す。
    「觔斗雲やーい!」

    「マァム急いで!小道具!」
    「はーい、ただいま」
    慌ててマァムが薄黄色に塗られたベニア製の雲を取り出す。所々に綿が貼り付けられている。
    「なんだよこの雲…もうちょっとましなんなかったのかよ」
    いかにも急拵えといった風情の雲に、ポップが情けさそうな顔をする。
    マトリフなら「ダサい!ボツ!」と一刀両断しているところだろう。
    「悪かったわね!劇場の美術班は大道具にかかりきりで人手が足りなくて、私が作ったの!しょうがないじゃない…あんまり器用じゃないんだから!あんた飛べるんだからなんとか誤魔化しなさいよ」
    マァムが顔を赤くして無茶振りする。
    ポップはへーへー、と呟き、宙返りで形だけ雲に飛び乗ると、トベルーラでふわふわと宙を舞う。
    「我こそは斉天大聖孫悟空!」
    セリフは大体OKだ。ポーズを決める。
    「やい妖怪!お師匠さんを離しやがれ!」
    「悟空…!来てくれたのですね!」 
    うっすら涙を浮かべポップを見つめるヒュンケル。もちろん涙は目薬だ。
    「…ぷっ」

    「カーット」
    「ポップくんダメじゃない」  
    「だって姫さんよう…」
    「なんでコイツが玄奘三蔵?一番遠いと思うけど!」
    「いいのよ。見た目麗しい方が…。なんなら私がやっても良かったんだけどね〜」
    「おい…なんで俺がこんな皿を頭に乗せねばならんのだ。ダイ様の命でなければこんなこと…」
    ラーハルトが不満をぶちまける。
    「オレに豚鼻をつけるというのはいささか無理があるのではないか…?顔の作りがな…」
    クロコダインも言いたいことがあるようだ。
    「もう配役決めたんだから文句言わないの!」
    「ねえレオナ、おれなんで馬なのさ?名前は玉竜なんだから竜じゃないの?それになんで馬なのに台詞あるの?覚え切れないよ」
    ダイが追い討ちをかける。
    「あーもう!」
    レオナの怒りが爆発した。
    「とにかく台本通りやってちょうだい!細かい事は気にしない!」

    ここはロモスの劇場。
    アバンの使徒が中心となり、復興のためのチャリティー劇を演じることになった。
    今日はその練習日だ。
    題材は、はるか遠き国で語り継がれてきたという、猿が主人公の物語。
    王族として芸術にも造詣が深いレオナが脚本・演出を務めることになっていた。

    「ごめんね、レオナ…」
    いくらアバンの使徒の仲間とはいえ、一国の姫にこんなことをさせていいのかしら、と真面目なマァムは気が咎めてしまう。
    「いいのよ、マァム。私がやりたいって言ったんだもの。王族だって言って、人の上に立って偉そうにしてるだけじゃダメよ。まずは自分が動かないとね。シナナ王も協力してくれてるし…」  
    レオナがウインクで答える。
    「成功したら次はパプニカでもお披露目するわ!」
    レオナはパプニカで孤児院の建設計画を進めている。その一助になればという思いもある。劇そのものを子供たちに見せてあげることもできる。

    「よーし、子供たちのためだ!おれの演技力見せてやるぜ!」
    ポップが急に張り切りはじめた。
    「モシャス!」
    ポップの体はたちまち獰猛そうな虎に変わる。
    「これ…キラーパンサー?」
    「虎って言うらしい」
    「初めて見たわ…」
    「それでえーと、妖怪は?」
    「ロモス兵の皆でハリボテを動かしてもらう予定なんだけど、まだ完成してないのよね…」

    「じゃま、気分だけ…」
    ポップの虎が宙を舞うが、なんだかじゃれている猫のようで俊敏さに欠ける。
    「迫力がね」
    「しゃーねえだろ!本物の敵がいるわけじゃねんだから!」
    この飄々とした大魔道士は、戦闘時は抜群の演技力を発揮するのだが。
    「ま、いっか…。平時のキミに演技力は期待してないわ」
    「なんだよ姫さんひでぇ」

    「気を取り直して次行くわよ。クライマックス、悟空が三蔵を助けるシーン」
    「3.2.1.Q!」
    「お師匠さん!大丈夫か」
    縛られているヒュンケルの縄を解くポップ。 
    「悟空…おまえが助けてくれなかったらどうなっていたことか。本当にありがとう…」
    ヒュンケルの台詞は棒読みである。ダイのほうが幾らかマシだ。安定の大根っぷり。
    (こういうこと得意じゃないもんな、コイツ。だけど少しでも罪滅ぼしになるなら、って自ら希望したんだよな)
    ヒュンケルの肩を抱くポップの手に、心なしか力がこもる。
    「おまえはこれまでも幾度となく私を助けてくれた…」
    ヒュンケルの言葉にも、幾ばくかの感情がこもっているように思えた。
    瞳も潤んでいる気がするが、目薬は使い切ったはず。少しは演技力がついてきたのだろうか。
    「悟空…」
    「お師匠さん…」
    手を取り見つめ合う2人。
    「カーット」 
    「なんだかちょっとアレな気もするけど…まあまあいい感じね」
    レオナのOKが出た。
    「あとは妖怪の本体ができたら、アクションシーンの練習に入れるわ。明日には完成するはずよ。最後はナレーションが入って旅を続けるんだけど、ダイくんはヒュンケル乗せなくていいからね、本物の白馬連れてくるから」
    「良かった〜」
    ダイは本気でほっとしているようだ。
    「んじゃこれで今日の練習終わりだな〜」
    ポップが伸びをして呑気な声を上げた。
    「お疲れさん!マァムは実家に泊まるのか?」
    「そのつもりよ」
    「そっか、レイラさん喜ぶな。元気な顔見せてやれよ」
    「ええ」
    「他の皆はシナナ王が城内に部屋を用意して下さってるわ」
    レオナとダイはこのまま城へ戻ると言う。
    ラーハルトとクロコダインは、城下へ飲みに出掛けるようだ。
    「おまえたちもどうだ」
    クロコダインがポップとヒュンケルを誘う。
    「んー、どうすっかなぁ」
    「ポップ、演技のことで相談がある。2人で話したいのだが…」
    ヒュンケルが真剣な表情で詰め寄ってきた。
    「あ、まあ、いーけどよ。確かにおめーはもうちょっと練習した方がいいなぁ」
    「決まりだ。では、ポップは借りていく。2人とも明日の練習で」
    「あ、ん、じゃな、おっさん、ラーハルト…」
    ポップはあっという間にヒュンケルに連れ去られていった。
    呆然と見送るクロコダインとラーハルト。
    「……明日の練習は魔法使いは使い物にならんかもしれんな」
    「…覚悟はしておくか」


    *credit*
    玄奘三蔵:ヒュンケル
    孫悟空:ポップ
    沙悟浄:ラーハルト
    猪八戒:クロコダイン
    玉竜:ダイ
    妖怪:ロモス兵有志 
    大道具:ロモス劇場美術班
    小道具:マァム
    脚本・演出レオナ
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