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    TOKYO罹破維武3で頒布した「みるくてぃーんこんぷれっくす」のbrother complex side の無配です🤍
    成長した二人を書きました〜!当日ド深夜の一発書きデス、甘く見てください……甘く……

    苦くて、甘い キーンコーンカーンコーン。鐘の音とともに学校を飛び出して、家路を急ぐ。階段を一段飛ばしで駆け上がって、ただいまー! と玄関に駆け込んで、大急ぎで身支度を整える。
     鞄の中には、着替えと歯ブラシと、財布に携帯。母ちゃんに持たされた手土産のプリンはぐちゃぐちゃにならないように手で持っていくことにした。兄さんのお下がりの香水をひと吹きして少しだけ背伸びして、意気揚々と家を飛び出した。ようやく、この日がやってきた。
     最寄り駅から四十五分。『今駅着いて電車待ちです』と黄色い線の内側でメールする。『分かった。気をつけてな』とすぐに届いた返事に頬がだらしなく緩んでしまう。
     電車に揺られながら、携帯を握り締めて窓の外を眺める。夕焼けが照らす見慣れた風景が、少しずつ知らない景色に変わっていくのが、何だか落ち着かなくてドキドキしてしまう。
     二度の乗り換えを経て、目的の駅を目指す。最後の線に乗ったときには、座りもせずドアの前に立ったまま過ごした。数分おきにプシュー、とドアが開く度、期待に胸が膨らんでいく。
     目的の駅に停車しようと電車が減速するのに反比例して、オレの鼓動は加速していく。ドアが開いて、足を一歩外に踏み出してしまったら、もう止まらない。階段をまたもや一段飛ばしで駆け上がって、改札をくぐり抜けて。知らない駅を右に左に視線を巡らせると、パリッとしたスーツ姿で右手を上げた大好きな人が視界に飛び込んで、頬がどうしようもなく緩む。何あれ、カッコよすぎだろ、オレの兄さん。急いで駆け寄れば、いつもみたいにくしゃっと頭を撫でて八重歯を見せて笑った。
    「ついに来ちゃったなぁ、千冬ぅ」
    「へへへ、来ちゃいました」
     そう、今日オレは初めて、兄さんの部屋にお泊まりする。

     駅から十五分ほど歩いた所に、兄さんがこの春から就職と同時に一人暮らしを始めたアパートがある。
    『親父もさ、子連れ再婚してまでオフクロと一緒になりたかったんだろうからさ』
     邪魔したくねぇじゃん? だなんて親孝行すぎる理由から流れるように決まった新生活。寂しいから嫌だ、なんて駄々をこねる前に、『千冬も高校卒業したらウチに来いよ』だなんて言われてしまったら、駄々をこねる隙も与えられなかった。
     そんなこんなで、実に一週間ぶりの兄さん。一週間なんてすぐだろ、と思うかもしれないけど、オレにとってこの一週間は信じられないほど長かった。
    「千冬、腹減っただろ? メシ何食いたい? なんか買ってく?」
    「ペヤングでもいいです、兄さんとだったら」
    「おいおい、せっかくなのに食いたいもんねぇの?」
     焼肉か? あ、回転寿司連れてってやろーか、なんて機嫌の良い兄さんの服の裾を掴んで、ぼそっと零した。
    「……おれ、ご飯より、兄さんがいいです、」
    「ったく、マセガキだなぁ。それはメシの後、な?」
     分かりやすくむくれるオレの頬をつついて、兄さんがくしゃっと笑う。だって、会いたかったんだもん、この一週間ずっと。話したいことや聞きたいことも沢山あったのに、何故か一個も出てこない。きっとオレの頭の中が、もう兄さんでいっぱいだからだろう。

     辿り着いたアパートは、築二十年にしては新しく見えた。コンクリートの階段を三階まで上がって、突き当たりまで歩いた所に兄さんの部屋がある。兄さんが鍵を回している間、廊下から薄暗い街並みを眺める。兄さんは今、こんな街で生活しているんだなぁと思うと、何だか感慨深くて切なさすら感じた。
    「ん、どーぞ」
    「っ、おじゃましまーす……!」
     玄関に入ると、まだ所々ダンボールが置いてあって、ベッドとテレビと小さなテーブルしか置かれてない部屋は殺風景で、いかにも男の一人暮らし、という感じがして何だかドキドキした。ジャケットをハンガーにかけて、腕時計を外してテレビの横のトレーに置くのをぼーっと眺める。何かもう、ホント大人って感じ。
    「あ、これ、母ちゃんが持ってって、って」
    「んー? あぁ、あのプリンじゃん! あとから食おっか」
     ありがとな、とオレの頭をぽんと撫でて冷蔵庫に入れて、そのまま流れるようにベッドに腰を下ろした。
    「千冬、おいで」
    「……さっき、メシの後、って言った、」
    「やっぱりオレも千冬とイチャイチャしたくなっちゃったの。ダメ?」
     ずるいなぁ、こんなふうに言われたらさぁ。抗えるわけないじゃん。持ったままだった荷物を床に下ろして、誘われるように兄さんの膝の上に跨った。すると、ぎゅう、っと優しく、それでいて強く抱き締められて、髪の毛を何度も撫でられる。肺いっぱいに兄さんの香りで満たされて、くらくらする。
    「あー……千冬、会いたかった」
    「おれも、兄さんに会いたかったです、」
     頬を包まれて、ちゅ、と唇が触れる。一度触れてしまったらもう歯止めが効かなくなって、空白の時間を埋めるようにしつこく口付けを交わした。
    「んっ、んぅ、っ、にいさん、っ、」
    「っはぁ……やべー、もうシてぇ……メシ、ペヤングでいい?」
    「ははっ、いーです、兄さんとだったら何だって」
    「ふは、嘘嘘、ちゃんと食お。オマエにいい飯食わしてやれねーなら、何しに働いてんのか分からんわ」
     出前でいっか、と広げたチラシの中から、オレが食べたいと言ったピザを頼んだ。来るまでの間にシャワー浴びとく? だなんて、いかにも飯の後にヤることヤります、って言ってるみたいで何だか小っ恥ずかしい。そうは言いながらも、勿論浴びるし、当然準備も済ませちゃうんだけど。

    「シャワー、ありがとうございました」
    「おかえり。んー、オレと同じ匂い。さっき香水つけててムカついた」
    「え、兄さんに貰ったものなのに?」
    「……色気づいてんじゃねーって言ってんの」
     オレの肩に顔を埋めてぶつぶつと小言を吐く。こんな大人でカッケーのに、こんなオレの事でヤキモチ妬いたりすんの。
    「兄さんこそ、スーツカッコよすぎ……やだなぁ、あんな格好で外歩いてるの」
     正直今日だって、皆して兄さんのこと見てた。背もあれからまた更に伸びて、手足は長くてスタイルめちゃくちゃいいし。あーもう、嫌だ。離れてるから、余計に不安が襲う。
    「……オレが千冬しか見てないから大丈夫」
     な? と頭を撫でてシャワー浴びてくるワ、と浴室へ消えていった。もう、一週間ぶりの兄さんは、心臓に悪い。

     シャワーが床に滴る音が部屋に響いて、落ち着かない。もう何してても落ち着かなくて、部屋の中をウロウロしてしまう。喉が渇いて仕方なくて、勝手に冷蔵庫を開けると、ビールやチューハイばかりが冷やされていて、オレの好きなコーラが、一本だけドアポケットに差し込まれているのを見て、なんだかオレがガキすぎて悔しくなった。
    「お、コーラ買ってあるから飲んでいーよ」
     ほら。やっぱりそうだった。優しさだって分かってるけど、置いてきぼりにされてるみたいで。
    「……オレ、こっち飲みたいです」
     缶ビールを手に取って、プシュ、と開けた。独特のアルコールなのか麦芽とかいうやつなのか、なんなのか分からない香りが鼻先につきまとう。
    「おいコラ、まだ未成年はだーめ」
    「っ、兄さん、オレにもそれくらい飲めます!」
     ひょい、とオレの手から缶ビールを奪って、出っ張った喉を上下させてゴクゴクと胃に流し込んでいく。もー、それすらカッコよくてムカつく。ムカつく。ムカつく!
    「ぷはぁ〜! 美味ぇ。千冬も大人になったら飲もうな」
    「ビール飲んだ口じゃ、もうちゅーも出来ないですね!」
    「ちゅーはいいの」
     そう言って、不貞腐れたオレの顎を掴んで、奪うように口付けられる。捩じ込まれた舌からビール独特の苦味が口内に広がって。何だこれ、不味い!
    「んんっ! にがっ!」
    「ふはっ! 千冬はまだまだガキだなァ」
     半泣きでコーラをごくごく飲むオレを見て、兄さんがケラケラと笑ってオレの頭をまるで犬にするみたいに撫でた。
    「……それでも、大きくなったでしょ、」
     もうおれ十六ですよ、とムッとして言えば、目を細めて、噛み締めるように言った。
    「大きくなったよ。こんなちっさかったのにさ、可愛かったなぁ、」
    「……今は可愛くないの」
    「可愛いよ。オレからしたら千冬はいつまでも可愛い」
     おいで、と手を広げてオレを呼ぶ。甘い声に熱がどこからともなく湧いてきて、じんと下腹部が疼く。吸い込まれるように腕の中に収まれば、ぎゅっと大きな身体に抱き締められて、腰が砕けてしまう。敵わないなぁ、いつまで経っても。
    「……もう、これ以上置いてかないで」
    「ん。ずっと待ってるから、早くここまで来い」
     寂しいから、早く千冬と一緒に住みてぇ。
     苦いビールのあとに落とされた甘いチョコレートのような言葉に、くらくらしてしまう。
    「……なんか酔っちゃったかも」
    「もっと酔わせてほしい?」
     小さく頷けば、兄さんがあの頃みたいにオレを抱き上げて、そのままベッドに運ばれてしまう。オレがどれだけ大きくなったって軽々持ち上げて、ホントどこまでかっこいいの。
    「……めちゃくちゃ抱いていい?」
    「っ、けぇすけさんっ……」
     今にも唇に噛みつかれようというタイミングで、ピンポーン、と無慈悲にチャイムが鳴り響いた。
    「あっ……」
    「っ、ふふっ、先に食べましょ」
    「んだよ、だっせぇ……」
     ブツブツ言いながら、頭をぐしゃぐしゃと掻いて玄関へ向かう後ろ姿は、あの頃と何も変わらなかった。
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