猫から始まる出会い窓の向こうに猫がいた。
目が丸い、とても可愛らしい顔をした黒猫だ。
ここの所黒猫は、毎日のように窓の向こうに香箱座りになってじっと見つめてくる。
九条はふと、その猫に目線を合わせる。
猫は嫌いじゃない。むしろ好きだ。犬ほどではないが、とても愛らしいと思っている。
ふわふわつやつやした体にしなやかな所作。何を考えているかわからないミステリアスな瞳。
猫は可愛い。
ふい、と猫が目を逸らすと九条は「嫌かあ」と呟いて、帰路につくために改めて踵を返そうとした。
「あの、何か用ですか?」
背後から声をかけられて、彼は突然声をかけられた驚きに大げさに体を跳ねさせた。その後、大柄な体を縮こませた。
恐る恐る振り返ると、灰色の髪の男性が立っていた。中年に差し掛かっているように見える。
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