夏の終わりの小話 パットは夏が好きだ。
肌を焦がす様な、照りつける太陽の日差しが好きだ。何をしても許されるような、開放的な雰囲気が好きだ。
滝の様に流れる汗は、不快感を通り越してある種の清々しささえ感じる。ざっくりと脇の開いたタンクトップは、最早衣類としての意味をなしていない。水分を吸収し尽くした布は、身に付けていてもただ邪魔なだけだ。パットは勢いよくそれを脱ぎ捨てると、何とも言えぬ解放感と共に、熱い砂の上を走り出す。熱く焼けた砂はパットの足を焼くけれど、それを超えた先にある涼の魅力には勝てない。
きらきらと光る水面に思い切り飛び込めば、瞬時に音のない世界が広がる。身体に纏わりつく気泡が心地よい。先程とは打って変わった心地良さに、暫く身を任せる。永遠にこのまま揺蕩っていたいと言う思いと裏腹に、現実は容赦なくやってくる。遂に息苦しくなって顔を上げると、呆れ顔の恋人の顔が見えた。お前も早く来いよ、と声を掛ければ、更に呆れた様にため息を吐く様子が見てとれる。
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