呼びたい気持ち「おじぃちゃま」
そう呼んでいいと言われてから、何度も呼ぶ機会はあったのになんだか照れくさくて呼べない。
意気地無し…つい自分に悪態をついてしまうくらい照れてしまう。
「呼んでやればいいじゃないか」
鶯のお爺様はくすくすと笑う。
この人はいつもこうだ。大包平様の事となるといつも楽しそう・・・。
湯呑みを軽く揺らす手の片方が俺の頭に乗る。
「あいつは案外寂しがりなところがある。沢山甘えて振り回して、外に連れ出してやってくれ」
優しい声。
大包平様が外の自由に触れたのは一時の話。大事にされていた分、外から隔絶されていた。
俺とは真逆な人。俺の汚い部分で汚すのが怖くなるくらいの美しい人。
彼が許してくれたように呼べたら、俺の汚れも薄まるだろうか。
「小竜…大丈夫だ。細かいことは気にしないでいい。」
「え…?」
「ほら、迎えだ…」
何にそういったのかと聞きたいがそれは出来なかった。
でも…彼の穏やかな声と眼差しが、もう一度大丈夫と言って背を押してくれる。
俺はひとつ頷いて、彼の傍から立ち上がる。少し照れくさいが呼べる事が少し嬉しくなった。
「…おじぃちゃま」