14 アル空スケッチする対象は実に様々だ。
荒野に咲く一輪の花、緑豊かな大地に咲き乱れる花々、常に雪に覆われた山肌、その中で逞しく生きる動物。
アルベドがスケッチ用のペンを持てば、曇りのない真っ白な画用紙の中にそれらの対象が細かに描き込まれていく。空がその様子を傍で見たことは何度もあったし、パイモンが「またモデルになるか?」と声を掛けるのも繰り返された光景だった。
これまで描いたものを見てみたい、空が言うと、それならモンドにあるボクの部屋においでと錬金術師は微笑んだ。
「わあ……たくさんあるね」
「そうだね。定期的に整理はしているけれど、それよりも描く回数が上回ってしまうから」
研究するための部屋とは別の眠ったり食事をする一室に通された空が目にしたのは、厚みのあるファイル五冊分にもなるスケッチの数々だった。
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