それでもきっと、大好きだから「……はい、少し疲れが出たみたいで……しばらくジョウトでゆっくりしようと思います。
お世話になったのにすぐご挨拶に向かえなくてすみません。はい、近いうちにまた」
電子音と共に通信の途切れたポケギアをベッドに放り投げ、何度目かわからない溜息をついた。
あの日シロガネやまを降りた私は、久しぶりに実家に帰ってきていた。
本当はグリーンさんや、入山許可をくれたオーキド博士にも早めに顔を見せるべきなのだけれど……今は正直、合わせる顔がない。
チャンピオンになった後、ウツギ博士にカントー行きのチケットをもらったときはかなり慌ただしく飛び出していってしまった。本当にしばらく実家で過ごすのもありかもしれないな……、なんて考えつつベッドに預けた頭を軽くつつかれる。
「───メガニウム……」
「?」
不思議そうに顔を覗き込むパートナーに、再び罪悪感が募る。
花弁を撫でてやりながら零れた謝罪も、もう何度目だろうか。戸惑うメガニウムを抱き寄せてもう一度呟いた。
きっと酷い顔をしている。困らせちゃったなあ……。こんな私でも心配してくれている。不甲斐なさは罪の意識にのしかかって、回る思考はぐるぐる沈む。
夜になっても、とても眠れる気なんてしなかった。こんな……ポケモントレーナーへの純粋な憧れが、ポケモンへの綺麗な愛が詰まった部屋で。
枕元のピッピにんぎょうを、抱きしめるにも触れずにいるにも、ひどく心が痛む。
きゅっときつく目を瞑り、渦巻く思考を半ば無理やり闇に落とした。