ちょんぎったところV2がベルカとその周辺国に大量の死の雨を降らせたとき、円卓の鬼神と呼ばれ恐れられていたサイファーはキャノピー越しに何もかもが消えていくさまを見ていることしかできなかった。帰る場所も帰りを待つ人も失ったサイファーはよろけながらもその身を翻しベルカの空へ消えていく。
鬱蒼とした森が広がる大地の空を飛ぶイーグルは以前ミッションで破壊したベルカ軍の基地へたどり着いた。
翼を下ろし廃墟と化した基地の中を進む。壁や床には弾痕が残り、ミサイルが突き刺さったであろう天井からは灰色の雲が見え隠れする。
しばらく薄汚れた廊下を歩いたところで適当な部屋に入る。
そこには簡素な寝台とサイドテーブル、そこに放置された本、そして割れた窓ガラスがそこかしこに散らばっていた。
ちら、と部屋を見渡したあとサイファーは本を手に取り寝台へ腰かけ、そしてパラパラとそれをめくる。
「ベルカ語の日記か…読めないな」
ざっと目を通した日記をサイドテーブルに放るとサイファーは寝台へ体を投げ出した。疲れきり目を閉じると脳裏には惨状が鮮明に甦る。
「………」
もう死んでしまいたいと思っていた。帰る基地も帰りを待つ仲間たちも、そして可愛い僚機も…かつての相棒さえいないのなら、もう…
独り誰にも看取られることなく死に行こうとサイファーは目を閉じた。