宿虎ちんこ、ペニス、陰茎。肉棒なんて官能小説でしか見かけない言葉もある。男性の象徴を表現する言葉は山のようにあるが、アイツのは魔羅一択だなと虎杖はぼんやりと思った。何と言うか魔羅感が凄い。身動き出来ないからそんな下らないことしか考えられない。
同じ顔、同じ体にも関わらず何故ここまでの差があるのか。生得領域だからだろうと無理やり納得させてみるがどうにも腹立たしかった。俺の身体を使ってるくせに狡くない？
恐らく平素であのサイズなのだから、完全に勃起したのはもっと大きくて凶悪だろう。絶対血管が浮いてるやつ。だって見るからに質量がありそうで普通に怖い。こん棒とか武器の類いに見えてくる。
「ジロジロと見るな、虫酸が走る」
「あ…その、ごめん」
汚物をみるような眼差しを宿儺から向けられて反射的に謝ってしまった。興味本意とは言え人のちんこをジロジロと見るのは宿儺相手でも不躾というものだ。まあ男として。
鍛え上げられた肉体全体に黒の刺青が入っている。植物が這いずり回り、絡み付くようなデザイン。目の前に立つ宿儺は全裸だった。全裸である状況に遭遇したと言うのが正しい。
だってまさかよりによって宿儺が生得領域で風呂に入ってるとは思わないだろ。

就寝と同時に強引に引き摺り込まれた感覚を覚えた。何度か経験してるとわかる。牛頭が山を成し、赤黒い水が一面に広がる世界。ここは宿儺の生得領域だ。
勢い良く落とされたかと思ったら、風呂に浸かっている宿儺がいた。上から湯を目掛けて落ちてきた俺を心底不快そうに摘まんで放り投げると宿儺は黙って湯を出る。一秒でも同じ湯に入りたくなかったのだろう、皮肉を言うより前に即行動に出たあたり本当に嫌だったんだなと思った。
「はぁ…気分が悪い」
「人の手足ちょん切ってて良く言うよ」
風呂の外でタオルを絞りつつ苛立ち紛れに呟くと俺の胴体と手足は離れ離れになった。乱雑に牛頭の上に転がされていた。それなら一層のこと殺してくれた方が現実に戻れてよかったのに。頼むからデスルーラさせてくれないだろうか。
「(…暇)」
芋虫のようになりながら着替える途中の宿儺を見る。こいつノーパンかよ笑えるなとか思いつつ。
何も出来ないから暇なんだって。ずっと水面見るよりは0.00000001ぐらいはマシってレベルだけど。
「まだ居たのか」
とても不快と顔に書いてある。奇遇だな、俺だって帰りたいんですよね。
「小僧、」
俺の視線を感じたのか宿儺が寄ってくる。何かしら思いついたのか楽しそうな表情を浮かべて。悪い予感に逃げ出したいが芋虫状態では動くこともままならない。
「……………っ、」
頬に衝撃があった。突然の出来事に思考が追い付いていない。何かしらの質量のあるモノで頬を叩かれたことはわかる。温かくて柔らかいモノ。
「腑抜けた面しよって」
愚図、とまだ芯が通ってないせいか片手で己の陰茎を掴んだ宿儺が俺の頬を叩く。ぺちぺちと音だけは可愛いのにやってることは全く可愛くない。
ちんこでビンタされる経験なんて今までないけど、これが相手を侮辱する行為なのはわかる。拳で殴られた方がましだと感じるぐらいには。込み上げる怒りに宿儺を睨み付けた。
「顎の骨を砕かれないうちに開けろ」
俺の顎を掴みながらニタニタと宿儺は嗤う。挑発に乗るなんてどうかしてる。どうせならちんこを噛み切ってやろうかと大きく口を開けた。
「う、っ、おぇ、」
舌根を刺激され込み上がってくる嘔吐感を何とか我慢する。ずると奥に入り過ぎたせいで噛むに噛めない。舐めさせるなんて甘いことはさせず、宿儺はただ俺の口を筒のように使う。
「うぐーー、ぐっ、んんんーー」
「下手くそ」
苦しさに身を捩らせている俺の髪を掴んで逃げないよう固定するとずちゅと喉の奥を突く。柔らかな粘膜を犯されながら死ね死ねと心のなかで罵倒した。