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    ほなや

    腐ってる成人。何とか生きてる。気ままにダラダラしたりゲームしたり。
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    ほなや

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    小説13作目。FCゲーム『スiクiウiェiアiのiトiムi・ソiーiヤ』ディック×トム。
    ※ハック→トム描写若干有
    ※キャラ捏造、年齢操作、現代パロ

    #腐向け
    Rot
    #BL小説
    blNovel

    人気者校舎裏の人気のない場所で、ディックとトムは見つめ合っていた。
    正確には、校舎の壁を背にトムが引っ付いており、ディックは逃さないようトムの左耳横の壁に手を付いてトムを鋭い目で捕らえていた。

    「えーとディック…これは一体どういう」
    「それは君が一番よく分かってるんじゃない?」

    言い切ろうとする直前に低く圧のある声で言われ、トムは立ち竦みそうになった。
    午前の授業が終わり、軽く昼食を済ませ午後まで何処かで寝ていようかとぶらぶら廊下を歩いていた時に突然後ろから声を掛けられ、振り向いた時には手首を掴まれて此処へ連れてこられ今に至る。
    ただでさえ身長差があって見下ろしてくる身体で影に覆われ、それがより威圧感を高めている。トムはどうにかしてこの状況から脱出出来ないものか-隙を付いて逃げれないものか-と思考を巡らせ、口を開いた。

    「ひ、昼休みあと残り」
    「まだ10分も経ってないよ」
    「ほ、ほらっ。女の子達待たせちゃ悪いだろ」
    「誰と何の約束もしてない」
    「じゃ、じゃあ他の」
    「往生際が悪いよ」

    ディックはそっちの考えは全てお見通しだとでも言うように、反対側の手を音を立て壁に押し付け、トムの身体を挟んだ。

    「逃げ遂せれると思ったら大間違いだよ」
    「っ、そんなこと思って」
    「思ってたよね?正に今」
    「…」

    ディックの言葉に図星を付かれ、トムは顔を俯かせ黙り込んだ。

    「何で僕を避けようとするの」
    「…」
    「ちょっとだけ、正確に言おうか。何で《僕ら》を避けてるの?」
    「っ、」

    頑なに質問に答えようとしないトムに苛立ちが湧き、平常心を保ちつつほんの少しだけ付け加えてまた質問を投げ掛けると、トムは若干動揺を見せた。これを機にディックは畳み掛けるように続けて言った。

    「ハックとインディもとっくに気付いてるよ」
    「…」
    「そうやってずっと黙ってるつもり?」
    「……」
    「…そんなに僕らのことが嫌なの?」
    「っ、違!」

    最後の言葉に否定するように、トムはばっと顔を上げた。反応したことにはっとなり、ディックの視線に捕らわれたかのように動きが固まった。

    「じゃあ、どういう理由?」
    「それ、は…」
    「はっきり言うまで、僕は絶対動かないから」

    ディックにそう言い切られてしまい、トムは口をもごもごとさせ始める。何かを言おうと口を開こうとしては閉じるを繰り返し、それでも全く体勢を崩さず見下ろすディックに小さく息を吐き、呟いた。

    「…が…」
    「? 何て?」

    呟いた言葉が小さく聞き取れず、ディックは逸る気持ちを抑えながら手をそのままに、僅かに背中を屈め顔をトムの方へ近付けた。

    「住む世界が、違うっていうか…」
    「…は?」
    「ほ、ほらっ。学校のイケメントップ3と俺なんかとじゃ全然釣り合わないっていうか」

    苦笑を浮かべ、両人差し指の先を合わせて目を逸らしながら訳の分からないことを曰うトムに、ディックは沸々と激情が湧き上がってくるのを感じた。

    「何だよそれ…意味が分からない」
    「そのまんまの意味だよ。ひとたび歩けば女の子達が振り向いて手を振ったり声を掛けたりしてる。あ、男子にも人気あるって知ってる?変な意味じゃなく」
    「ちょっと待っ」
    「イケメンな上に気さくだったり人当たりも良いとかそりゃモテて当然だよなー。それに比べたらこれと言って大した取り柄も無い俺とじゃどう考えたって」
    「聞けよ!」

    突然放たれた声に遮られ、トムはつらつらと喋る口をぴたりと止めた。顔を上げると、そこには身体を震わせながら信じられないようなものを見るような表情を浮かべるディックがいた。

    「そんな…そんなくだらない理由で、ずっと僕らを避けてきたっていうのかよ」

    ずっと一緒に遊んでいたかつての日々が音を立てて崩れていくようだった。ここにいるのは、本当にいつも自分達を引き連れて天真爛漫で無邪気な笑顔を見せていたあのトムなのか?
    最近どこかおかしいとは思っていた。周囲のことなんてお構い無しに行動するトムが、何故自分達を避けるのか。それがまさか、こんな理由だったなんて-
    正に裏切られたようなものだった。その口から出る言葉すべてを聞きたくなくて、耳を塞ぎたくなるなる。失望を抱え、ここから背を向け立ち去ろうと地面を踏みしめようとした時、黙っていたトムの口が開いた。

    「…俺にとっては…」
    「何だよ、まだ何か言うことがあるっていうのかよ」
    「俺にとっては、くだらなくなんかない!」

    叫ぶような声でそう言われ、ディックは目を見開いた。今までまともに此方を見ずにのらりくらりと言い逃れようとしていた姿とはかけ離れた様子に、呆気にとられた。
    その目は真っ直ぐディックを睨み、そして揺れていた。だがすぐにまた俯き、薄い唇が動いた。

    「…ジョー達も他の奴らとつるんだり彼女ができたりして誘おうにも誘えないし、ハック達のところに行こうにもいつも周りに誰かがいて」

    「で、一緒にいようとしたらお門違いだって言うように視線向けられて、陰口叩かれる。いつもいつも」

    「ううん、それだけならまだいい。今までだって気にしてなかったし。でも」

    「でも…3人で笑いあってるの見て、思った。すごく楽しそうだって。別に俺がいなくてもいいんだ…って」

    トムの口から語られた内心を黙って聞いていたディックは、言葉を失っていた。
    今まで全然知らなかった。そんなことを抱えていたなんて。そしてそれを噯(おくび)にも出さなかったことにも。
    そういえば、最後に4人で遊んだのはいつ頃だっただろう。中学3年の秋頃に、森で日暮れまで遊び倒してからは受験やら何やらで会うことが減ってしまい、高校で再び鉢合わせしてそれから-

    (あ…)

    周囲が何やら騒ぎ出したのも、その時からだったような気がする。
    今日までずっと受け流して大して気にも留めていなかった。ハックもインディも、そしてディックも。
    だが、トムは違った。語られた内容で、それを今知った。
    固まっているディックに気付き、トムははっと我に返り明るい口調でこう言った。

    「何か、辛気臭い話しちゃって悪かったなっ。ついカッとなっちまって…さっき言ったことは忘れて」

    くれよ、と言い切ろうとした途端、身体が何かに包まれた。
    抱き締められたことに気付くのに、数秒ほど時間がかかった。

    「ディック…?」
    「ごめん…気付いてあげられなくて」

    振り絞るような声に、トムは慌ててふためきディックの方を掴んだ。

    「だ、だからっ。ディックが気にするようなことじゃないって」
    「僕らが」

    どうにか重苦しい空気を取り除こうと努めて言おうとしたら、被せるようにディックが続けて言った。

    「僕らが笑っていられるのは、トムがいるからだ。この学校に」
    「俺が…?」
    「今までだって、トムがいたから心から笑えた。景色も色鮮やかに見えてた」

    「だから待ってたんだ。トムがいつかまた僕らのところに来るのを」

    「でも、それがトムを苦しめてたなんて全然思いもしてなかった」

    抱き締める力が強くなった。だが締め付けるほど苦しくはなくて、どこか安心感を与えてくれる温かさがあった。

    「だから、決めた」
    「え?」
    「もう、遠慮はしないって」

    一体どういうことなのかと首を傾げると、ディックは腕の力を緩め拘束を解き、両手をトムの肩に置いて真っ直ぐに見据えて言った。

    「今度からはこっちから行くことにする」
    「へ?」
    「移動時間でも見つけたらすかさず声掛けてくし、昼休みも真っ先に君の教室に行くから」
    「あ、え?」
    「だから、逃げないでね」

    紡がれるように口から出る言葉に戸惑っていると、最後の言葉の後に肩を掴む手はそのままに、ディックの顔が段々近付いてくるのに気付くまで若干の時間を要した。
    その場から動けないままあと数センチで唇が触れそうになった時、突然何処かから着信ブザーが鳴り響いてきた。

    「!?」
    「ちっ…あの独占禁止法野郎」

    ディックは舌打ちをしながら口汚く罵り、ズボンのポケットからブザーが鳴り続けるスマートフォンを取り出し、何処で監視してやがるとまた罵り画面を睨み付けた。
    トムは色々と降り掛かる展開に唖然としていると、今度は学校のチャイムが大きく鳴り響いた。

    「あ」
    「うそっ!もうそんな時間!?」

    午後の授業を告げるチャイムに、トムとディックは校舎の時計を仰ぎ見た。その時、トムは何かに手を掴まれ引っ張られた。

    「早く!授業始まっちゃう!」

    脳内で碌に整理しきれない状況で視線の先を見ると、ディックがトムの手を握って校舎へと走っていく姿があった。

    (何だろ…懐かしい)

    トムは手を引っ張られながら、森で遊んでいた日々を思い出していた。
    こうして皆で全速力で駆けていって、思いっきり笑って仰向けで寝転がって樹冠越しに空を眺めていたあの頃を-

    ディックの後ろ姿を見つめながら、トムは穏やかに微笑んだ。





    ディックは、後ろにいるトムの小さな手の感触を久々に実感しながら先程のやり取りを思い返していた。

    (トムのあんな表情、初めて見た)

    いつも屈託の無い眩しい笑顔を自分達に向けていたトム。高校に入学して再会からしばらくして避けられ、最初は釈然としないままハック達と様子を見ていた。だが、いくら此方から連絡を取っても、電話にも出ずメッセージも未読のままで状況は変わらず、遂に痺れを切らしたディックがトムを校舎の外へ連れ出し、無理矢理聞き出した。
    目を碌に合わせず避けていた理由があまりにも馬鹿げていたことに失望して立ち去ろうとしたら、トムは引き絞るような声で心の内を吐露していった。そして自分達がいかにトムのことを分かってやれなかったのか、思い知ることとなった。
    自分の憧れの、そして何時しか恋情を抱くようになったトムを守りたい。もう二度と悲しい思いをさせたくない。そんな想いを伝えようとするかのように、僅かに開かれた薄い唇に自らの唇を重ねようとしたその時、着信ブザーが鳴り響いた。
    罵り舌打ちをしながらポケットからスマートフォンを取り出し、画面を見ると、案の定そこにはトムの親友兼何時しか保護者的な存在となっていた-拗らせているとも言える-ハックの名前が表情されていた。尚も鳴り続けるブザーは、発信者の過保護振りと執着、そして独占欲をそのまま表していた。
    見事に邪魔をされた苛立ちを消すかのように強く息を吐いたと同時に、チャイムが鳴り響いた-

    トムの手を握り校舎へと走り、思う。こうして一緒に全速力で走るなんて何時ぶりだろうと。
    4人で森を駆けていた日々。そして、金の髪色と同じく眩しい笑顔を向けて自分達を率いていたトム。
    今でこそ騒ぎの的となっている自分達だが、3人にとっての、否知っている人間にとってはどれだけ遠くにいようとも、今でもトムは人気者であり、憧れの的なのだ。
    たとえこの先何があろうとも、決してトムの傍を離れない。ディックはほんの少しだけ繋いだ手を強く握りながら、力強い眼差しを宿し心に誓った。
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