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    ほなや

    腐ってる成人。何とか生きてる。気ままにダラダラしたりゲームしたり。
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    ほなや

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    小説14作目。FCゲーム『スiクiウiェiアiのiトiムi・ソiーiヤ』ディック×トム。
    ※キャラ捏造、年齢操作、現代パロ

    #腐向け
    Rot
    #BL小説
    blNovel

    温かな手12月も半ばに差し掛かり、街全体に冬特有の冷たい空気が纏っていた。
    大通り沿いに立ち並ぶ数々の店がクリスマス仕様となっており、後に買うプレゼントやケーキを選ぶために家族やカップル、友人同士で立ち寄る姿が普段よりもよく見られた。
    その光景を時々ちらりと見たりして、トムとディックはそれぞれ品物が詰め込まれた紙袋を持ち、とりとめのない話をしながら隣合って歩道を歩いていた。トムはキャメル色のダッフルコートに白のパーカー、下は濃青色のジーンズの装い。ディックはグレーのウールーコートに黒のタートルネックを着用し、ズボンは上よりもやや薄い黒のスキニーを履いていた。
    あと数歩で横断歩道を渡ろうとしたが、青信号がチカチカと光り赤に変わり、2人は横断歩道の前で歩みを止めて青に変わるまでその場で待つことになった。
    同時にぴたりと一旦会話も止め、止まっていた車が走り横切っていくのをぼぅ、と見つめては時々走る方向へ目を向けたりしていると、向かい側の歩道にいる2人の女性-片方の左は腰まであるマロンブラウン色でロングヘアの小柄の女性、右はプラチナブロンド色のセミロングで少し短めの背の高い女性-を目に捉えた。ショーウィンドウ越しの洋服を眺め指を指しながら、笑みを浮かべて会話をしている。

    (楽しそう…)

    顔まで向こうへ行きすぎないように少しだけ首を戻し女性達の姿を見つめていると、互いに時々肩や腕に触れては此方まで笑い声が聞こえてくるのではないかという位に口を開いて更に笑みが深くなっていった。
    その表情に、トムは心がぽかぽかと暖かくなるような、それと同時にきゅうと締め付けられるように感じた。
    隣に立っているディックをちらりと見る。何年経っても変わらない-寧ろ経つほど増している-端正な顔立ち。髪と同じ色をしたブロンズの瞳は、微動だにせず真っ直ぐに道の先を見つめている。ふと、右斜め後ろから微かに声が聞こえてきた。そっと後ろに少しだけ首を向けると、若い2人の女性-向かい側の女性達とは少し雰囲気の違う-が弾んだ声で何かを話している。そのまま聞き耳を立ててみると、此方に向かって-正確に言うとディックに向かって何かを言っているようだった。声の弾みで、どんなことを言っているのか粗方察することが出来た。
    生まれついての目鼻立ちの良さ、高身長で背筋を伸ばした出で立ちは人目を引くものがある。それに加えて気配りも出来て優しい心の持ち主だということを知ったら、周りの女性達は益々放っておかなくなるだろう。当のディックは、背後で自分のことで会話に花を咲かせているとは露知らずとでも言うように、後ろを振り返るどころか聞き耳を立てたりする様子は全くなかった。
    トムは前へ顔を戻し、ディックと同じく正面に目を向けた。ここの信号は一旦赤になるとしばらくは変化せず、大通りでよく車が通るというのもあって待たされることが多い。只管横切っていく車を見ながら信号の光が青に変わるのを待っていると、再び反対側にいる女性達が目に写った。先程と然程変化は無く、相も変わらず楽しそうに会話をしている。また心が和やかになるのを感じていると、先程と少し様子が違っているような気が-
    表情も、先程の満面の笑みとは少し異なり、まるで慈しむかのように互いを見つめている。そして、指を絡ませるかのようにそっと手を繋いだのが分かった。

    (あ…)

    その光景で、トムは2人の関係を察した。
    薄ら開かれた口から吐き出される白い息が壁を作るように、向こう側を覆い隠した-ように思えた。だが、薄い壁を越してトムは尚2人に釘付けになったように見つめていた。視線を横断歩道へと戻し斜め下へ俯かせ、心の中に芽生えた羨望を押さえ込むかのように、コートの前衿をぎゅっと掴み抱えていた気持ちを吐き出すように静かに白い息を吐いた。

    「トム」

    ぽん、と軽く右肩を叩かれ、はっと我に返る。顔を上げると、信号の光が青になっている。首を傾げながら不思議そうに此方を見るディックに顔を向けると、同じく信号待ちをしていた周りの人々が歩き通り過ぎていくのが目に入ってきた。後に続くように、ディックの方がやや早く足を踏み出して歩き出し、少し慌ててトムがついて行く形で足を進めていった。
    視線を斜め前に向けると、自分より大きな手が見える。自らの腕を伸ばせば、すぐにこの手を掴めるだろう。でも、出来なかった。人目があるというのもそうだが、何より見えない壁で遮られているような、そんな感覚に襲われていた。




    「じゃあ淹れてくるね」
    「んー」

    自宅へと帰宅し、トムとディックは買ってきた品物を冷蔵庫や棚に入れたりと整理し終え、ソファーで一息付いていた。それからしばらくしてディックが、何か飲み物を淹れようかと聞いてきたので街で買ったココアパウダーが頭に浮かびそれを言った。すると立ち上がり台所で2人分を淹れてくれるということで、その言葉に甘えることにした。
    ディックの姿を見送り、トムはテレビに向き直った。この時期になると、どのチャンネルもスペシャル番組且つ似たような内容でほぼ流し見が常になっている。ぼぅ、と画面を眺めていると、場面がスタジオから街の何処かへと切り替わり、女性レポーターが2人の若い-おそらく大学生くらいか-女性にマイクを向けて取材しているシーンが映された。互いが顔を向かい合わせながら楽しそうにインタビューに答えている姿に、町で見かけたあの時の女性2人が脳裏に浮かんだ。

    (あの2人って、やっぱり…)

    顔を俯かせ組んだ手を見つめ、互いの細い手を絡ませ微笑み合ったあの光景がこびり付いて離れない。
    こんなことを思うのは良くないと分かっている。でも、女性同士なら多少人目があっても手を繋ぐことを気にする必要は無い。たとえ友人だろうと、恋人同士だろうと。
    そう思っていると、足音が近付いてくるのが聞こえ顔を上げる。

    「お待たせ」

    出入り口へ顔を向けると、ディックが両手にマグカップを持ち、此方へと歩いてくる。持っていた片方を渡され、一言礼を言った。それに対しディックは微かに笑みを浮かべ、テレビの方へと顔を向けてゆっくりとソファーに腰掛けた。

    「面白そうなのありそう?」
    「あ、うーん…これといったのは特に無さそうかなぁ」

    ふぅふぅと表面に息を吹き掛けココアを一口飲むと、仄かな甘みが舌に染み込んでいき、じんわりと身体の中が包み込まれるように温まっていく。
    再びテレビの画面を見ると、既に場面が切り替えられて別の人物にインタビューをしていた。内容を右から左へと聞き流しながらココアを飲み、ちらりと横目でディックを見る。マグカップを片手にトムと同様テレビ画面を見ながら、唇を尖らせ息を吹き掛けココアを飲んでいる横顔を見つめ、視線を少し下に向けるとトムとディックの腿のちょうど間-拳一つ分ほど-に大きな手がソファーの座面に置かれているのが見えた。成人男性らしくしっかりした骨格で、しかしゴツゴツし過ぎず指先は長く、大抵のものなら包み込めてしまえそうだ。
    触れたい。無防備に置かれているこの手を今すぐ掴み、逃がさないように包み込んでしまいたい-
    真正面を向いているディックが此方に気付かないようにと願いながら、そっと腕を伸ばし、自らの手と重ね合わせた。

    「!?」

    突然の感触に、ディックの身体が一瞬跳ねた。触れられた手の甲を見ると、その上に自分のものよりも小さな白い手が重ねられていた。手から腕、肩、顔へとなぞるように視線を辿っていくと、顔を俯かせているトムの姿があった。驚愕の余韻を残しながらもどうしたのかと声を掛けようとしたが、口からその言葉が発せられることは無かった。
    何故なら、俯かせた横顔が赤く染まっていくのが見えたから。その横顔に釘付けになっていると、ほんの僅かにぎゅっと手を握り締められたような感覚があった。視線を再び手の方に向けると、手の平からじわりと温かみが伝わってきた。先程までココアの入ったマグカップを持っていたから、とは違う、何処か汗ばんだ感触-
    俯かせたまま、更に刻々と真っ赤になっていく顔。そんなトムに、ディックは心の中に愛しさが込み上がっていくのを感じた。
    普段は明るく活発でよくスキンシップを仕掛けてくるトムだが、恋情込みで触れられることは滅多に無かった。そうした意味ではディックから触れることの方が多く、トムは顔を赤く染めて享受するというのが常だった。
    だが、今こうしてトムの方から手を重ねてきているという事実を目の当たりにし、これが舞い上がらずにいられようか。少なくとも、ディックには無理だった。
    持っていたマグカップをテーブルの上に置き、重ねられた手の方の手首をくるりと180度に回す。手の平と手の平を合わせた状態になり、そっと指を絡ませ優しく握ってみた。瞬間、トムは目を見開いてビクンと身体を震わせた。予想通りの反応にまたしても愛しさが募る。何も言わず目に弧を描きじっとトムを見つめていると、俯いた顔はそのままに、細い指が躊躇いがちにディックの手を握り返してきた。
    こういったことには意外にも至極初なトムが、一体全体どうして手を重ねてきたのかは分からない。疑問は浮かび上がるが、それ以上に喜びが勝っていた。
    今度街に行く時、手を繋いでみようか。大体の場所では人目があって今まで出来ずじまいではあったが、敢えて人気の無い道に行けば僅かな間でも繋ぐことが出来る。その時はきっとまたこんな風に顔を俯かせて頬を赤らめるのだろう。そして同時に、そっと握り返し互いの指を絡ませるのだ。
    そう遠くない未来を想像し、ディックはトムの横顔を見つめながら想いを伝えるかのように、ほんの少しだけ握る手に力を込めた。
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