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    kawane_y

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    kawane_y

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    少し前のジャンプで0コラボプリ機やるって載ってたから2年ズで撮りに行ってゆたまきハプニング(棘&パンダの手によって)起こされてほし〜!!って書いたものです。これのみで支部に上げるのがなんだか躊躇われたので一旦こちらに…

    #ゆたまき
    teakettle

    Past, present and future「はぁ?何でプリクラ?」
    きゅっと眉根を寄せて、面倒臭そうな返事を返す真希は予想通りの反応だ。
    しかし、憂太も引き下がれない。ぱちん、と音を立てて手を合わせた憂太は、そのまま頭を下げて真希を拝み倒す。
    「お願い!パンダ君と狗巻君がね、友達とはプリクラ撮って親密度アップするものだって誘ってくれたんだけど、男子だけだと入れないみたいなんだよ」
    「オマエなぁ……男子だけで入れねぇ時点で誤情報だと思えよ」
    しかし真希から返ってきたのは、呆れ返った視線と溜め息。それでもパンダと狗巻が憂太を信頼して任せてくれた以上、なんとしても真希を説き伏せなければ。固い決意の元、憂太は再び口を開いた。
    「でも、そうだとしても二人が誘ってくれたから行ってみたくて……だからお願い、真希さん!一緒に来て!」
    合わせた手よりも低い位置まで頭を下げて、憂太はギュッと目を瞑った。
    その姿勢のまま沈黙が落ちること、しばし。憂太の必死さが伝わったのか、はぁ、と憂太のつむじに落ちてきた真希の溜め息は、先程とはニュアンスの違う響きだった。
    「仕方ねぇな。いいぜ、機械の外までなら行ってやる」
    「本当!?ありがとう!パンダ君と狗巻君呼んでくるね!」
    声を弾ませて、憂太は男子寮に戻ろうと踵を返した。するとタイミングよく、二人が何か話しながら共有スペースに向かってくる姿が目に入る。
    「狗巻君、パンダ君!今呼びに行こうと思ってたんだよ」
    「ツナマヨ?」
    「うん、オッケーだって。いつ行くの?」
    憂太が問うと、キラリとパンダの瞳が輝いた。
    「そんなの、善は急げに決まってんだろ。棘、支度手伝ってくれ」
    「しゃけ」
    意気込むパンダと狗巻を見て、真希は再び呆れ顔になってしまう。
    「支度も何も、オマエ服着ねぇだろ」
    「写真撮るからブラッシングとかするんじゃないかな?パンダ君、僕も手伝うよ」
    しかし憂太の申し出は、狗巻の手によって制された。
    「狗巻君?」
    「おかか。明太子」
    憂太に待っているように言い置いてから、狗巻は徐に襟のファスナーを下ろした。そして反対の手でズボンのポケットを探り、取り出した何か細長いものをパンダの背に置く。
    ますます真意がわからない。しかし待てと言われてしまった憂太は、首を傾げながらも狗巻の行動を見守ることにした。
    ──次の瞬間。
    「【くっつけ】」
    「え」
    「は?」
    突然の呪言に目を瞠ったのは、一瞬。次の瞬間には、達成感にあふれた笑顔で狗巻がパンダの背を指差し、憂太と真希に見ろと促してくる。
    狗巻の指先を目で追って、憂太は再び首を傾げた。パンダの背は相変わらずふかふかの毛で覆われていて、何も変わったところなど──
    「あ」
    変わったところなどない、と思ったが、憂太は気づいてしまった。よくよく見ると、ふかふかの毛の間に長いファスナーがくっついていることに。
    「マジかよ……」
    隣で呆然と呟いた真希もそれに気づいたのだろう。憂太は共感をこめて深く頷き、愕然とした声で呟いた。
    「うん……まさかこういう身支度とは……」
    外を歩くときは着ぐるみのふりをする、と聞いていたし知っていたはずだったのだが、まさかこんなに細かい仕込みまでしていたとは知らなかった。確かに驚いたが、パンダの擬態への抜かりのなさに、憂太は改めて彼への尊敬を深めた。
    (さすがパンダ君!僕の友達はすごいなぁ)
    そうしてきらきらとパンダの背を見つめる憂太と、「ありがとな、棘」「しゃけ」と呑気に笑い合っているパンダと狗巻とを交互に見遣った真希はしかし、なぜだか頭を抱えていた。
    「ん?どうした真希。ボーッとしてないで行くぞ〜」
    「オマエのせいだろうがパンダ!」
    パンダに不思議そうな声を投げられた真希が、ジャッ、と勢いよく彼の背中のファスナーを下ろした。しかし当然、ファスナーだけを後から上辺につけただけのそこからパンダが脱皮したりはしない。
    とはいえそこはパンダだ。ただファスナーを下されただけでは終わらない。彼はニヤニヤと笑いながらわざとらしく身をくねらせてみせる。
    「いや〜ん、真希のエッチ〜!そういうことは憂太さんだけにしとけって、な?」
    「ツナツナ〜」
    便乗した狗巻まで身をくねらせて楽しそうな笑みを浮かべると、真希の手がグッと拳を握ったのが視界に入った。憂太は慌てて真希の前に出ると、パンダと狗巻を背に庇う。
    「みんな落ち着いて!ごめんね真希さん、お願い帰らないで!ついてきて!一回だけでいいから!」
    帰る、と言われてしまう前に先手を打ち、憂太は再び真希を拝み倒した。とにかく下手に出て拝み倒したのが功を奏したのか否か。真希はふん、と鼻を鳴らして、握った拳をしっかりパンダと狗巻に落としたものの、振り返った憂太には「麓のゲーセンでいいな?」と諾の代わりの言葉を返してくれた。


    「おっ、これこれ!コラボプリ機」
    「しゃけ!」
    ゲームセンターの奥、女性同伴でしか男の入れない一角に足を踏み入れてソワソワしっぱなしの憂太をよそに、パンダと狗巻は瞳を輝かせて盛り上がっている。
    「憂太ー、真希ー!こっちこっち」
    「こんぶこんぶ」
    手招きで急かす二人が本当に楽しそうで、憂太は思わず笑顔になってしまう。知らず憂太の足も小走りになり、気がつけばもう目的の機械の前に到着していた。
    「へぇー、こんな感じなんだ……!初めて見るよ」
    きょろきょろと忙しなく視線をめぐらせながら、憂太は狗巻に続いて暖簾をめくった。
    「わ、眩しい!すごいね、真っ白だ」
    小さな機械の中は真っ白な光にあふれていて、見たことのない光景に胸が躍った。真正面の画面を操作しはじめた狗巻にそちらを任せ、憂太は先程から気になっていた背後のシートに近づいた。
    (ここだけ緑なのなんでだろう?でも後ろまで白いとパンダ君が溶けちゃうし、丁度良かったのかな)
    そんなことを考えながら視線をめぐらせると、入り口の暖簾からパンダの尻だけが覗いていることに気がついた。どうしたんだろう、と思ったところで、パンダと真希の声が耳に飛び込んでくる。
    「せっかく来たんだし、真希も一緒に撮ろうぜ。憂太の隣空いてるぞ?」
    「うるっせぇなパンダ、毟るぞ」
    間髪入れず返った真希の返事は残念ながら予想通りで、憂太はしゅんと眉尻を落とした。
    (せっかくだから真希さんも一緒に写ってくれたら嬉しいのになぁ)
    しかし既に憂太たちのために一肌脱いでくれた真希に、これ以上無理を言うのも気が引けた。憂太は開きかけた口をそっと閉じ、代わりに淋しげな微笑みで暖簾を見つめる。
    「すじこ、いくらー!」
    「あっ、ごめん今行くよ」
    準備ができたから早く、と急かす狗巻を振り返ると、彼は画面を見ろとばかりに正面を両手で指差していた。首を傾げながらも指示通りにそちらを振り向いて、憂太は目を剥いた。
    「えっ!?真希さん!?」
    画面の中に、昨年の姿の真希がいる。混乱する憂太の視線は、暖簾の向こうにいるであろう真希と画面の方向を何度も行き来する。
    「えっ、真希さんそこにいる……んだよね!?」
    「あ?私が何だよ」
    問いかけた憂太に応えて、真希が暖簾をめくって顔だけを覗かせる。その瞬間、パンダが動いた。
    「は?」
    油断しきっていた真希の腕を引いて暖簾の内側に引き入れたパンダが、ドンと彼女の肩を押した。予想外の出来事に目を見開いた真希がこちらに押し出されたのを目にして、憂太もまた目を見開く。
    「えっ!?わっ」
    刹那、憂太の肩にも衝撃が走った。押されたと気づいたときには既にバランスを崩していて、次の瞬間には憂太は真希の肩に激突していた。
    「ごめん、真希さん!」
    慌てて離れようとした憂太の声に被さるように響いたシャッター音。え、と正面の画面を見ると、そこに映し出されていたのは、昨年の姿の真希と今隣にいる真希とに挟まれて慌てている憂太の姿。
    「えぇっ!?今の撮ったの!?」
    「消せ!!つーかパンダテメェふざけんなよ!!」
    「照れんなって真希〜。ほら次の撮影始まっちゃうぞ?」
    「撮らねぇよ!!」
    パンダのふかふかの尻を容赦なく蹴り上げて、真希はパンダを暖簾の向こうへと追放する。次いでくるりと振り返った彼女の形相にびくりと肩を跳ね上げて、憂太は思わず後ずさった。
    「ごめんね真希さん、さっきのは事故で……!!」
    「安心しろ、オマエじゃねぇよ憂太。なぁ棘?」
    「お、おかか……!!」
    凄んだ真希はじりじりと後ずさる狗巻の首根っこを素早く捕らえて、パンダと同じく暖簾の向こうへ投げ飛ばそうとする。止めなくては、と慌てて飛び出した憂太は、ひしっと真希の腰にしがみついて声を上げた。
    「真希さん落ち着いて!ここ高専じゃなくて外だから!」
    「明太子!」
    「オマエは少しは悪びれろ棘!」
    ナイスアシスト、と憂太に向けて親指を立ててみせる狗巻に、真希は容赦なく拳骨を落とした。しかし先程のパンダへの一撃に比べれば、そのお仕置きは随分かわいいものだ。まだ怒ってはいるものの、少し冷静さを取り戻したらしい真希にホッとして、憂太はそっと安堵の息をついた。
    そうしてふと画面に目を戻すと、まるで憂太たちが入ってきたことさえもなかったかのようにプロモーションムービーが映し出されているのが目に入った。憂太は慌てて真希越しに狗巻へと身を乗り出し、画面を指差した。
    「狗巻君!どうしよう、画面が戻っちゃってるよ!?」
    憂太の焦った声を聞きつけて、狗巻だけではなく先程追い出されたパンダまでもが暖簾をめくって画面を覗き込んだ。そうして顔を見合わせたパンダと狗巻は、二人揃ってがっくりと肩を落とす。
    「あーあ、真希が暴れるから時間切れでシール作れなかったじゃねぇか」
    「ハッ、いい気味だな。私を嵌めようとするからだ」
    挑発的に笑ってパンダに中指を立てると、真希は踵を返してずんずんと歩き去ってしまう。悪いことをしてしまった、と胸を痛めつつも、正直な憂太の口はぽろりと本音をこぼしていた。
    「そっか……残念だなぁ」
    確かに驚いたが、真希との写真は欲しかった。しょんぼりと肩を落とした憂太の腕を、不意にぐいと狗巻が引いた。
    「狗巻君?」
    「すじこ」
    こっち、と手を引く狗巻に連れられて、憂太は暖簾の外に出る。狗巻を追って機械の側面に回り込むと、幾ばくもしないうちにカタン、と機械の下部で小さな音がした。
    なんだろう、と身をかがめた憂太の隣でその音の正体を拾い上げた狗巻は、ウインクとともに小さなシートを憂太に差し出した。
    「ツナマヨ!」
    「えっ、これ……!作れなかったんじゃないの!?」
    そのシートには、昨年の姿の真希と現在の真希とに挟まれて慌てている憂太の姿が写されたあの写真のほかに、見切れた真希のほうを見て憂太と狗巻が慌てて手を伸ばしている写真や、真希が狗巻を掴み上げている写真、果ては憂太が真希の腰にひしっと抱きついている写真まで、先程プリクラ機の中であった一部始終がばっちりと記録されていた。
    目を丸くしてシールを見つめる憂太に、パンダの手がポンと置かれる。
    「作れなかったって言わねぇと、真希これ捨てちゃうだろ?ああ見えて照れ屋なんだもんなぁ〜、憂太限定だけど」
    「そ、そうかな……?」
    「しゃけ」
    「そうじゃなかったら四人でプリクラくらい一緒に撮ってくれたと思うぞ。だからこれは憂太にやるよ。お詫びだ」
    「高菜、明太子」
    「うん、そうだね。今度は四人で撮りに来よう」
    今度はからかわないから真希も、と言う狗巻に笑顔を返して、憂太はシールをそっと胸に抱きしめた。
    (ごめんね、真希さん)
    真希に嘘をついた形になってしまったことにも、真希に抱きついているような写真が残ってしまったことにも罪悪感はある。それなのに憂太は今、嬉しいと思ってしまっている。このシールが手元に残ったことを。
    (どんな形であれ、真希さんと写真を撮れたのは事実だもん)
    シールをもう一度見つめて、憂太は顔をほころばせた。そしてふっと目線を上げると、近くの台に置かれていたハサミが視界に入る。
    憂太は台に歩み寄ると、そのハサミでふたりの真希に挟まれたシールをひとつ切り取った。そしてズボンの尻ポケットからスマホを取り出すと、なんの変哲もない青いケースを外し、スマホを裏返す。ケースとスマホを一度見比べて思案してから、憂太はスマホの裏に先程切り離したシールを貼った。そして隠すようにサッとスマホを表に返すと、もう一度ケースを嵌める。
    そんな憂太の後ろ姿をニヤニヤと見つめながらハイタッチを交わす二人の影に微塵も気づかないまま、憂太は今度はズボンの尻ポケットではなく、制服の内側にある胸ポケットにスマホを入れた。
    ただそれだけなのに、罪悪感と高揚がない混ぜになって、誰に咎められたわけでもないのにドキドキと鼓動が逸っていた。思わずキョロキョロと視線を泳がせ、誰も憂太のことなど見ていないことを確認してしまう。
    (ごめんね、真希さん)
    きっと真希が聞いたら「悪いと思ってねぇだろ」と一蹴される類の謝罪の言葉を胸の裡に繰り返して、憂太はスマホを仕舞った胸元に手を当てた。
    ──いまは、こっそりと。君を胸に連れていくことをどうか、許して。
    これはまだ想いを伝えられない男の、身勝手な自己満足。
    けれどいつか、この写真が四人で──否、ふたりで満面の笑みを浮かべるものに変わる未来を夢想して。憂太は胸に当てた手をぎゅっと握り締めた。
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