ふりだしに戻るうぃん。
気の抜けた音と共に窓から顔を出した王馬を見て、最原は「なんか人間みたいだな」と思った。
月も傾く午前二時、街によく馴染むはずの軽自動車が藍色の闇に浮いている。
ぬるい室温の寝苦しさに目を覚ました最原の着信が鳴ったのは、ほんの半刻前のことだった。通話ボタンを押すや否や何かを捲し立ててくる声が寝起きの頭に痛い。出なきゃよかったと咄嗟に後悔したものの、王馬を相手に寝たふりを貫くほうが厄介を招くのは経験済である。
散らかった話をどうにか要約したところ、「今から家に行く」のひとことで片付く話だった。拒否権のない最原はぼんやりと王馬を待ったが、まさか車で来るとは思うまい。
「一応聞くけど、免許はあるの?」
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