気まずい。
寒さも増してきた年の瀬、シャーレの先生が拠点としている執務室の扉を開いて第一に脳裏に過ったものはそれだった。
二日前、先生から入った着信で今日の当番を頼まれた時に二つ返事で引き受けるべきではなかったのかもしれない。例え三食の支給に加えいくらかの報酬があると聞いていても、断るべきだったのかもしれない。そこまでを五度の瞬きの間に考える程度には、気まずい。
そこまでを考える原因……要因は、目の前でこたつに入り寛いでいるトリニティ生――確かカズサ、という名前だったか。彼女のじとりとした視線だ。こちらを値踏みでもするかのように鋭い視線が私の足を縫い止め、空気が張り詰めるのを感じる。
「……寒いでしょ、早く閉めてよ」
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