無題僕の理性は強い。恐らくだけど。きっと目の前に水着や全裸の女性がいたって何も思わない。いや、時と場合にもよるかも。
ううん、それはさておき。
今日、愛する立花くんがお出かけだそうだ。同性の友達との食事ではなく、仕事関係の男女を混じえてのご飯会。
僕は束縛なんてしないし、お門違いの嫉妬もしない。どんな飲み会だろうが笑顔で快く送り出すタイプの男。
でもなんだろう、今回ばかりは妙な気持ちが湧いて面白くない。同じ家から送り出すのが初めてだからだろうか。
今までは家が違ったから、「今日ご飯行ってきます」って可愛いお知らせだけで済んでいたけど。こう、戸口を共有する者として、置いていかれる感覚にも似た寂しさ? 他の場所で僕の知らない人と楽しく喋って笑う羨ましさ?
なんかぐちゃぐちゃしてきた……止めよう。
少し、意地悪してもいいかな? お出かけまで時間はたっぷりあるし……。
「ね〜ぇ、今日何時に行っちゃうんだっけ」
「十六時に家を出ようかと」
「ふんふん。じゃあ時間あるね」
「そうですね……――先輩?」
「ん? ああ、気にしないで。読んでていいよ」
「近くないですか?」
「ソファ狭いからしょうがないでしょ?」
「そんなに狭くありません。ほら、人半分くらい空いてます」
「んもう、細かいわよ希佐ちゃん」
「えぇ……――って、どこ触ってるんですかっ!?」
「んー? どこでしょう?」
「……っあの、私この後ご飯……」
「知ってる」
「……ダメですよ」
「君の予定の邪魔はしないさ」
「そ、それもそうですけど……」
「じゃあ希佐ちゃんこそ、それで抵抗しているおつもり?」
「……っ……」
「そんな優しく押し返されたって……ねぇ?」
「……ズルいですよ」
「賢いって言ってほしいな」
「……間に合わなかったら、先輩のせいですから」
「ふふ……責任なんていくらでもとるよ」