背後にご注意(悠脹)※謎平和時空
副題『ケツとタッパのでかいお姉さんのせいで、俺の兄貴がどんどんエッチになっていくんだが?!?!』
頭悪くてエッチなコメディを目指した。前のやつとちょっとリンクしてるけどこれだけでも読めます。
続きのお帰りおせっせも書きたい。
OKという方どうぞ!↓↓↓
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『任務始まる!伊地知さん待ち~』
『怪我の無いようにな くれぐれも無茶はするな』
『ラジャー!(スタンプ)』
『脹相、いま何してんの?』
『昼飯だ』
『俺も!空港のフードコート』
『(ラーメンとピースした手の写真)』
『美味そうだな』
『脹相も写真送ってよ!』
『いいぞ』
『あ!脹相も写って欲しい!前一緒に自撮りしたじゃん。そんな感じで!』
『俺も写るのか?』
『そ!任務の時のお守りにしたい!俺たち2週間も会えないし…』
『お願い!今の脹相の写真撮って送って!』
『(目をうるうるさせる虎のスタンプ)』
『わかった 撮るから少し待っていてくれ』
『やったー!』
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「……ん~~~~~?」
空港のフードコートの席に腰かけてスマホを眺めながら、俺は首をかしげる。空になったどんぶりに乗せた割りばしがカランと鳴る。
俺が脹相に写真をねだった最後のメッセージのやり取りから、もう5分ほど経っている。
(無茶ぶりしちゃったかな…)
もしかしたら、写真を撮るのが苦手な脹相に無理を言ってしまったかもしれない。何というか、脹相は何かを写真に残したいという熱意?のようなものがあんまり無いらしく、俺に習って自撮りを覚えたのも最近のことだった。そんな脹相を急かすことも無いだろうと思ってメッセージは送らずにいたが、アドバイスならいいかも。
だって、やっぱり脹相の写真欲しいし。
俺が椅子に座りなおして『難しかったら鏡使ってみて』と打ち込んでいると、
『撮れたぞ』
というメッセージと共にぽこん、と画像が送られてくる。
「お!」
俺は逸る気持ちで読み込み中の画像をタップする。空港の微弱なWi-Fiはなかなか画像を読み込んではくれず、俺はしばらくスマホいっぱいに広がる黒い画面と真ん中のぐるぐると廻る白い輪を眺めていた。
俺がジュースを飲もうとストローに口を付けた瞬間、「それ」は俺の目の中にとんでもない解像度で飛び込んできた。
「どうよ、伊地知さんから連絡きた?」
バタン!!!!!!!
俺は背後から突然現れた釘崎に飛び跳ねて、スマホの画面を手で覆って机に叩きつけた。
「うわ、何?」
何睨んでんのよ。てか食うの早っ!と訝しみながら机にトレーを置く釘崎に、俺は必死に笑顔を作る。
「あ、な、なんでもない!連絡まだだし、俺トイレ行ってくる!!」
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「もしもしッ?!脹相ッ?!」
俺は人気のない自販機横のスペースに身を押し込み、汗のにじんだ手でもたつきながら脹相に電話をかけた。
今までメッセージのやりとりをしていただけに、脹相はすぐに出てくれた。
『悠仁、どうかしたか。今から任務なんだろう』
「や、そうなんだけど!しゃ、写真だよ写真!脹相、また九十九さんになんか聞いたでしょっ!?」
『…………その通りだ。フッ…写真一枚で気が付くとは、流石俺の弟だ』
やっぱり。謎に自信満々な脹相の声に、俺は痛む頭を抱える。
「だ、だからって!ダメだって!あんな写真撮っちゃダメ!送っちゃダメ!」
俺は脳裏に焼き付いたさっきの写真を思い出して、かぁ~とおでこが熱くなるのが分かった。それを誤魔化すように声を荒げる。
何で俺はこんなに焦っているんだろうか。脹相の写真の衝撃ともし誰かに見られてたらという羞恥心でかなりパニックになってしまっていた。
――――写真に写っていたのは、昼飯ではなくベッドに座る脹相だった。
俺たちが住んでいる部屋。お気に入りの細身のTシャツとジーンズ姿で、斜め上に腕を伸ばし見上げる形で自撮りしたようだった。
自撮りという割に脹相の顔全体は写っておらず、鼻の模様から下、顎、首筋、胸、腰のあたりまでが画角に収まっている。
問題はここからだ。
すこし薄暗いその写真の大半を占めるのは――――脹相のなめらかな肌だった。
脹相のスマホを持つ手と反対の手が、Tシャツを胸のあたりまでたくし上げているのだ。
汗ばんでいるのか艶やかに光る鍛えられたしなやかな腹筋。
ベッドに座っているためかすこしひねられた細くくびれた腰の曲線。
見せつけるように脹相の指先が胸に這わされており、服の影の中、色づいた突起がほんのわずかにだけ見えている。
おまけに唇は薄く開かれていて、ベッドサイドの照明に照らされて物欲しげに潤んでいるのが写真からでもよくわかった。
そう、これは、これはつまり、簡潔に、端的に、一言でいうと――――――――
(エッチな自撮り写真だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
こんなものを任務前かつ真っ昼間の公然の場で見ていたのが釘崎にバレていたら、俺は少なくとも1か月は蔑みの目で見られていたことだろう。
「もぉ~~~!マジでやめてッ!釘崎に見られるかと思ったじゃんかッ!」
『……………………』
「……?……あれ、もしもし?」
『…………俺はまた、やってしまったのか。』
「あっ………いや、その……………」
長い沈黙の後、電話口から聞こえる明らかに落ち込んだ声。しまった。罪悪感で胸がチクリと痛む。
最近、脹相はこうしてよく俺に何かサプライズを仕掛けてくる。
――――――――主にえっちなサプライズを。
というのも、脹相と仲が良くかつ俺たち二人の関係を把握している謎の美女、九十九さんからいろいろと入れ知恵をされているらしかった。
『こうすればお前が喜ぶと九十九が言っていたから』
自分が恋愛や性に疎いという自覚があるらしい脹相は、脹相なりに努力して、弟であり恋仲でもある俺を喜ばせようとしてくれているのだ。俺はその気持ちが素直に嬉しかった。
だが、困る。非常に困る。
俺は毎日のように手を変え品を変え襲ってくるそれらに頭を悩ませているのだ。
何故ならそのサプライズというのが、普段兄弟以外に興味を示さずぼんやりとしている脹相からは想像もできないようなくらい突飛で鮮烈で…直接的だからだ。時と場所を選ばす雷の様に突然俺の全身(いや、正確に言うと下半身)に落とされる衝撃は俺の理性をガリガリと削りとっていく。
脹相の俺を想う気持ちが嬉しいという気持ち、理性を削られると止まらなくなるかもしれないという不安、そしてあり得ないとは分かっていても、“俺を喜ばせるための練習”とか言って他の人に…………とかいう誇大な妄想が混ざり合って、俺はどうにも素直にこのサプライズを受け取れないでいた。そして、サプライズを受けた俺が困ったような顔をしたり叱ったりすると脹相はひどく落ち込んでしまうのだった。
『本当にすまない、悠仁。これから大切な任務だというのに、俺は……お兄ちゃんは……っ……!』
そう、こんな風に。
あまりにも悲痛な想い人の声に、俺はスマホを握りしめながら頭をぐるぐる巡らせる。
(ちがう、ちがうんだよ。脹相が俺を想ってくれてるのは分かってるんだけど、なんか、なんか恥ずかしくて!)
(そんな落ち込むなよ脹相、俺だってほんとは、ほんとは!)
俺の羞恥心と脹相の愛、そんなの天秤に掛けなくても分かってるはずなのに。
あ~~~~~~~~~~~~~~もぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!
ええい!!ままよ!!!
「ー!違う!ごめん!正直言う!嬉しいデス!めちゃくちゃ嬉しい!めちゃくちゃエロいしめちゃくちゃ興奮しましたっっ!!」
俺は脹相の悲しい声に耐え切れず、公共の場で正直な胸の内を吐露してしまった。
『そっ…………そうか、それなら、良かった。』
俺のなんとも間抜けな告白に、脹相は恥ずかしそうに、そして嬉しそうに声を詰まらせた。
俺の目には、眉を下げ頬を染めてへにょと笑う脹相の顔が浮かぶ。
その声を聴いて、俺はなんだか全身の力が抜けてその場にへたり込む。あーもーいいや。全部正直に言っちゃえ。
「う゛ぅ~~~俺はいいんだけどぉいいんだけどさぁ……何でもないみたいにこんなことされちゃうとなんか心配になるんだよ……ほ、ほかのヤツにも見せてんじゃ…?とか思っちゃうわけ……」
そんなの絶対ヤダ。俺は駄々をこねる子供のような口調の中で、そこだけは強く言い放った。
『………お前だけだ』
わかってる、わかってるよ。電話から耳に響くやさしい、低い声。
この声がしばらく直接聞けないことを思い出して、やっぱり子供みたいに泣いてしまいそうになった。
ぅん、と小さく返事をすると、脹相が電話の向こうで笑ったのが分かった。
『俺が喜ばせたいと思うのは、お前だけなんだ、悠仁。』
悠仁 お前のことを 愛している
はやく お前に会いたい
それは、誰かに教わった言葉じゃなかった。
脹相の喉の奥から生まれた、脹相の心からの言葉だ。
俺には、俺だけには分かるんだ。
俺は脹相の弟だから。
ああ、もう。兄貴には、かなわない。
「……………………脹相」
『ん?』
「帰ったら、覚悟しといてよ」
『!…………っ…………』
情欲を隠そうともしない声を電話の向こうの脹相の耳に向けて吹き込む。自分でも驚くくらい低く響いた声が出て、スマホがビリビリと震える。
俺の声に脹相は息を詰まらせた。よかった、ちゃんと伝わった。
ああ、待っているぞ。脹相の熱のこもった吐息に、再び頭をもたげる興奮を俺は深く息を吐くことでやり過ごす。
危うく意趣返しされかけたが、俺からのサプライズはまぁまぁ成功したようだ。どーだ、兄貴!
そのあとはお互い何だか歯切れが悪くて、もにょもにょと短い別れのやり取りの後、電話を切った。
通話画面が消えるのを見送りながら、俺は身体に溜まった熱を圧し出すように深く息を吐いた。
おまけ
自販機で買った冷たい炭酸を喉に流し込むと、幾分か高揚感も凪いできた。
しかし、俺にはあとひと仕事残っている。慣れているとはいえ、スピードと正確さが求められる大仕事だ。
俺はペットボトルの蓋をしっかりと締めるとカッと目を見開き、再びスマホにかぶりつく。
まずメッセージアプリを起動して、例の写真を保存!
直前のメッセージのやり取りもスクショ!
ダメ押しでもう一度写真を保存!
最後にそれをまとめてクラウドにぶちこむ!
んでもってちゃーんと非表示設定に変更!
よし、カンペキだ。完全にゲットした。これでこの2週間はばっちりだ。
この流れるような作業の後、うぉーし!!と気合を入れて自分の頬をバシバシ叩く。
(任務さっさと終わらして!脹相のとこに帰んぞ!)
俺はそう強く意気込みながら、駆け足で釘崎たちのもとへ戻るのだった。
おしまい
事変前の元気っ子悠仁くんと脹相に絡んでほしいというキモチ