めざましウサギ(悠脹)カツン カツン カツン
磨き上げられた黒のハイヒールが鳴る。
しなやかな長い脚に這うように張り巡らされた、パツパツの網タイツ。
細くくびれた腰と豊かな逞しい胸筋の曲線を強調するような、ピッチリとした肩出しのボンデージスーツ。
血管の浮き出た筋肉質な手首に巻かれた白いカフス。
たくましく太い首を飾る安っぽい付け襟。
そして―――尻を彩るふさふさとしたまあるいしっぽと、頭の上に揺れる白く長いウサギの耳。
それが、このバニーボーイ・バーで働く脹相の制服だった。
脹相にはとにかく金が必要だった。
兄としてまだ独り立ちしていない八人の弟たちを養わなければならないのだ。とても昼間の肉体労働だけでは足りない、と悪友である真人に相談して勧められたのがこの店のバニーボーイバーの仕事だった。真人のニタニタとした笑顔が鼻についたが、その労働条件を聞いた脹相はその日のうちに真人と共にバーの門を叩いていた。背に腹は代えられぬ、というやつだった。
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