ご褒美にもほどがある※


　遠くで誰かが啜り泣く声がする。
　……誰か、じゃない、雲さんだ。そして声は遠くじゃなく、どうやら私の耳元で聞こえていたらしい。重い瞼をこじ開けて最初に視界へと飛び込んできたのは、春の雨のような、優しい桜色の髪。
「雨さん！」
「……くも……、」
「よ……かったぁ！　このまま起きてくれなかったらどうしようかと思った……」
　ごめんね、ごめんね雨さん。苦しげに細められた眼からぼろぼろと涙が溢れる。私の唇にぽとりと雫がおちた。淡く温くて、少し塩からくて、……雲さんの味だ、などとぼんやり思う。
　あぁ、そんなに泣かないで、雲さん、
「すみません……私は、どれくらい……？」
「あ……半刻くらいかな、まだ真夜中だよ」
　日付が変わる前、雲さんに抱かれた。

【荒须】归燕纪行 上　　归燕纪行01-昭和六十年三月二十七日
　　须佐站在船舷边，将最后一点三明治塞进嘴里，一只手从口袋里掏出一块麻将牌大的银制小药盒。甲板上有些摇晃，他不得不分出些心思保持平衡，同时心不在焉地观察起大海上的天色。像是证明天气会像出发前天气预报播报得那样和畅，没有风暴和雷霆的来袭，一群海鸥呕呕哑哑地叫个不停，贴近海面飞行，敏捷地追逐水下的游鱼。有几只胆子大的，一路跟随着游艇，过于步调一致，以至于让须佐觉得它们看上去仿佛悬停在眼前一般，不禁生出一股伸手触摸那些小扇子般张开的尾羽的冲动。
　　他熟练地打开药盒上的精细锁扣。盒子里分成上下两层十二个槽格，灰白色的药丸齐齐整整地躺在里面，看情形已经取用了两颗。须佐从剩余的药丸里又捡出一颗服下，便要将银盒扣上。