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    ネムリブカ

    @oysm_nemuribuka

    深海の片隅で文章を書くネムリブカです。
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    ネムリブカ

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    アルコールバース設定の葬台です。お話のネタは欲望さん(@yokuvow)から頂きました!
    内容に未成年飲酒のような表現が含まれますが、バース設定の世界観で書いているため、飲酒に関して現実とは違う部分もあり、未成年に飲酒を勧める意図等はございませんこと、予めご了承くださいませ。
    アルコールバースについて
    https://www.pixiv.net/artworks/90811289

    #WV
    #葬台
    funeralPyre

    アルコールなW×グラスなVウルフウッドがアルコール、ヴァッシュがグラスのお話です。

    「ウルフウッド、キスしてもいい……?」
    「……おう」
     強請られて、頷いたウルフウッドはベッドへと腰を下ろした。すぐに嬉しそうに隣へと腰掛けたヴァッシュが首に両腕を回してきて、薄い唇が重ねられる。
     少し開いてやれば、滑り込んできた舌が絡みついてきて、じゅるりと唾液を啜られた。ウルフウッドの酒精を取り込んだらしいヴァッシュはゆるりと目を細めると、ぽうと頬に熱を上らせる。
    「……おいしい」
    「そか」
     どこか複雑な面持ちのウルフウッドには気付かず、ヴァッシュはまた目の前の唇へ吸い付いた。
     グラスとアルコールの性質上、最低限必要な触れ合いは月に一度であったが、それでは足りないと言い出したのはヴァッシュのほうだった。
     もっとウルフウッドとキスがしたい、触れ合いたい。そう言い募られて、ウルフウッドはイエス以外の言葉を返せなかった。
     当然だ。相手は愛しい恋人なのだから。

     ウルフウッドとヴァッシュが出会ったのは、高校に入学してからだ。
     この世には男女以外にアルコールバースという性別が存在する。アルコール、グラス、そしてどちらでもないノーマル。アルコールとグラスは切っても切れない関係で、お互いがいなければ生きていくことすら難しい。
     個人差はあれど大体十五歳頃にバース性が確定するので、高校入学と共に検査を受けて己のバース性を理解し、高校でパートナーを持つのが普通であった。
     ヴァッシュと彼の双子の兄はどちらもグラスで、月に一度アルコールの体液摂取が必要な体であったが、夏休みを目前にしてもパートナーを作る気配がなく、抑制剤の副作用で怠そうにしているのが常だった。
     彼と同じクラスのウルフウッドはアルコールで、弟が居ることから面倒見がよく、トラブルメイカーで弟気質のヴァッシュとは相性が良かったのか不思議と気が合ってつるむようになっていた。
     だから、そうなったのは自然な流れとも言えるし、雰囲気に流されてとも言えた。
    「身体しんどいんか?」
     その日、ウルフウッドの家に遊びに来ていたヴァッシュはいつも以上にぐったりとしていて、部屋に上がるなり上半身をベッドに預けて座り込んでしまっていた。
     家に着くまでは普段と変わらない様子だったというのに、一体どうしてしまったのか。何か変わったことがあったかとウルフウッドは考えたが、平素より副作用の強い薬を服用している相手である。こんなこともあるだろうと余計な考えを頭から追いやった。
    「ん……へい、き」
     声掛けにぼんやりとした顔を上げたヴァッシュだったが、その色はどこか青褪めていて、ウルフウッドは眉を顰めた。水を持ってきてやり、隣に腰掛けて肩を支える。
    「平気ちゃうやろ。水飲むか?」
    「うん……」
     そう言って身体を起こしたものの、ヴァッシュは差し出されたペットボトルを受け取ろうとはせず、ぼんやりとウルフウッドを見上げていた。
    「トンガリ?」
    「……ウルフウッド、って」
    「おう」
    「アルコール、だったよね」
     突然の問い掛け。じっと己の口元を見つめるヴァッシュにまさか、と言うより早く、押し倒されたウルフウッドは彼に口付けられていた。
    「っん、ぐ」
    「はぁ……んぷ……」
     キスと呼ぶには色気のない、子猫がミルクを飲むような必死さでウルフウッドは口内を舐められる。性感を刺激されるようなものではなかったけれど、求めてくるヴァッシュの表情に妙な色気を感じてしまったウルフウッドは戸惑った。
    「っちょ、トンガ……ヴァッシュ!」
     薄い舌先の心地良いくすぐったさに流されそうな身体を叱咤して、ウルフウッドはどうにかヴァッシュを引き剥がす。ぽかり、口を開けたヴァッシュは惚けた表情で、口元からたらりと唾液を溢すものだから、慌ててそれを拭ってやったウルフウッドは居住まいを正した。
    「うるふうっど……?」
    「おう。あんな、こういうんはちゃんと決めてからやないと……いや、それより気分悪ないか?」
     そのまま説教を始めようとしたウルフウッドだったが、しかし、先程がお互い初めてのポアではないかと思い至り、ヴァッシュの顔を覗き込む。
     アルコールは与える側なので特に影響はないが、受け取る側のグラスは相性によっては不調を来すこともあるかもしれないのだ。
     まして、ヴァッシュは先程までぐったりしていたのである。体が望むものを摂取したとて、副作用まで吹っ飛ぶとは思えない。
    「気分……すごく、いい、かも」
    「オドレ、もしかしてアウトライン低めなんか?」
     ぽやぽやとするヴァッシュに、ウルフウッドは首を傾げる。このバース性には通常の酒と同じく強弱があり、受け取る側のグラスも許容範囲が個人によって違う。
    「アウトライン……?」
    「しっかり酔っ払っとるみたいやけど」
    「わかんな……気持ちいいけど」
     潤んだ瞳は茫洋としていて、いまいち焦点が合わなかった。
     ウルフウッドのアルコール濃度は弱めらしいが、ヴァッシュの許容については聞いたことがない。しかしこんな風になるのなら、彼も強い方ではないのかもしれない。
     そう考えて、ウルフウッドは改めて水を差し出した。
    「飲んどき。そんでちゃんと話、しよや」
     ──結論から言えば、その日から二人は仮のパートナーになったし、二年に上がる頃には正式に付き合い始めて、大学生になった今でもその関係は続いている。

    「ぅん……ん、ふぁ」
    「……」
     だが最近、ウルフウッドには悩みがあった。
     ヴァッシュのアウトラインはそこまで低いわけではないようだが、どうも酔いやすい質らしく、ウルフウッドとのキスで直ぐに蕩けた顔を見せる。
     そのくせ酒を飲むのが好きな様子で、常日頃からしょっちゅうウルフウッドへキスを強請ってきていた。
     初めは恋人同士の可愛い触れ合いだと思っていたウルフウッドだったが、少しの酒精で楽しそうにしているヴァッシュを見ているうち、段々と疑念が頭を擡げてくる。
     ──こいつ、単にアルコール欲しいだけちゃうんか?
     パートナーになったきっかけを思い起こすと、ヴァッシュの理性を疑わざるをえないウルフウッドはそう考えてしまった。
     キスがしたい、触れ合いたいと言うのも、体良いポアの言い訳ではないかとも思ってしまう始末だ。自分は彼の正式な恋人だというのに。
     相手のことを知れば知るほど、求められているのが自分なのか、アルコールなのか分からない。
     それともこれは、ウルフウッドがヴァッシュにどんどんと入れ込んでいくからなのだろうか。
    「うる、ふ……うっろ……」
     息継ぎのために唇を離したヴァッシュが、とろんとした瞳でウルフウッドを見つめる。溶けかけの飴玉みたいな蒼色を見返して、彼は口を開いた。
    「なぁオドレ、ホンマは……」
    「うん?」
    「ワイのアルコールが欲しいだけちゃうんか」
     すると、途端に瞳が輪郭を取り戻す。上気していた頬も血色を失くして、青褪めたヴァッシュの手がウルフウッドへ伸ばされた。
    「なんだって?」
    「なんや、その反応。図星かいな」
    「そんな訳ないだろ! なんでそんな」
     顔を歪めるヴァッシュに、ウルフウッドも気持ちを吐き出した。少量でも妙に蕩けること、それが好きなだけではないかということ、そのために触れ合いを言い訳にしているのではないかということ。
     口に出してみれば己の疑り深さと幼稚さが際立って、けれど彼は発言を撤回しなかった。ここで白黒ハッキリさせなければ、今後もずっと疑い続けることになる。
     全て言い切って、深く溜息を吐き出したウルフウッドは、いつの間にか俯いていた面を上げた。
     すると、目の前には何故か顔を真っ赤にしたヴァッシュが居り、戸惑いに「は?」と声をあげてしまう。決して、そんな反応をする場面ではなかった筈だ。
    「なに赤くなっとんねん」
    「あっ、その……は、恥ずかしくて」
    「ハァ?」
     怪訝に片眉を上げるウルフウッドに、ヴァッシュはしおしおと肩と視線を落としていく。
    「言い訳……バレてたのかと」
    「……やっぱり、ポアの言い訳やったんか」
    「ちがっ! ……そ、その、逆で」
    「逆ゥ?」
    「きみに触れたくて、ポアを言い訳にしてたっていうか……」
     もじもじと両手の指を合わせるヴァッシュの言い分は、ウルフウッドが考えていたものとは真逆だった。
     パートナーになったあの日、理性が効かなかったのはウルフウッドから大層良い匂いがしたからということ。順番は前後してしまったが、ウルフウッドの酒精でふにゃふにゃになってしまうのは、好きな相手だからということ。
     ──そして。
    「い、いっぱい触って欲しくて……ポアのついでなら、良いかなって思って……」
    「は……」
    「アルコールだって、僕本当は結構強い方なんだ。普通にお酒飲む分には全然酔わないし、あんな風になっちゃうの、ウルフウッドだけで……」
     ちらり、俯きぎみなままのヴァッシュが上目遣いにウルフウッドを見上げる。どことはなく恨めしげな視線に、しばし唸った末、彼は頭を下げた。
    「妙な疑いかけてすまんかった」
    「……ううん。僕も、ちゃんと言わなかったから」
     ごめんね、と呟いたヴァッシュを、ウルフウッドはきつく抱き締めた。首筋に鼻先を埋めて、腰を引き寄せる。当たり前のように背中へ回された腕にホッとして、彼はヴァッシュの耳へと口付けた。
    「好きや。だから不安になってもうた」
    「僕も、ウルフウッドのこと大好きだよ」
    「許してくれるか?」
     頬に唇を押し当てての伺いに、ヴァッシュは一瞬丸くした目を直ぐに細めて顔を綻ばせる。ウルフウッドと額を合わせ、間近にある黒い瞳を見つめ返して鼻先を擦り合わせた。
    「……いっぱい触ってくれるなら」
     当然やろ、と薄い唇に噛み付いたウルフウッドが細身の身体を押し倒して、二人の嬉しそうな笑い声が上がったのだった。



    +++

    欲望さんからのリクエスト
    ・ヴァッシュはただ触れ合いたいけど、ウルフウッドはアルコールを求められてるのか自分を求められてるのか分からない。ウルフウッドのアルコールはちょっと弱めだけど、妙にトロトロになっちゃうのが最後にわかる系。バース関係なく好きな人とするのがいい

    でした!欲望さん、お付き合いくださり本当にありがとうございました!
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