愛があふれる水曜日 ニコラスは、オーブンから鉄板を取り出す広い背中を祈りながら眺めた。祈ったところで結果が変わるわけではないと分かっていながらも、そうせずにはいられなかったからだ。
「……ニコ」
「ど、どうや」
自分の名を呼んだ兄が、神妙な表情で振り返った。鉄板はこちらからは見えないものの、じきに答えは分かるだろうとニコラスは兄の顔を見上げる。
「おめでとさん」
「そ、そんなら──!」
兄は、ニコラスと目を合わせると、にこりと笑った。彼はそれに表情を輝かせるが、しかし次の言葉で床に崩れ落ちる。
「今回も見事なダークマターや」
「なんっっっでやねん!!!!」
身体を退かして見せられたテーブル、鉄板の上には、真っ黒い物体が鎮座していた。
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