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    あかね屋

    @sheruna6B
    表に出せない夢絵をあげる場所。
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    あかね屋

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    没ネタ

    澁澤龍彦に拾われ共に過ごし殺される話。設定
    記憶あり原作トリップ。空中から落ちて来た所を興味を引かれたらしい澁澤に拾われ、暫く一緒に暮らしていた。原作読者なので顛末は知ってるけど、伝えると原作の流れを変えてしまうかもしれないので怯えながら日々を暮らしている。まあ当然、澁澤に隠し事とか出来ないので全部バレてる。ドス君にトリップしたってバレると厄介そうなので「未来予知」の異能力者を拾ったって嘘を言ってる(優しさ)。


    龍頭抗争の終わりの日に敦君に会いに行って異能体になった説を採用しています。

    ---------------------
    今日は恐ろしく静かな夜だった。毎日のようにサイレンの音が鳴り響いていたというのに、ぴたりと止んでしまったのだ。静かすぎて目が覚めることもあるらしい。お湯を沸かしていると、澁澤が帰ってきた。
    彼は随分と落ち込んでいるように見えた。
    龍頭抗争ですら、彼には生きる意味の実感を与えることが出来ない。
    彼は一言も発しなかった。私も何か言うことはしなかった。深刻そうな顔をして椅子に腰掛けた彼の前に、二人分作った珈琲を置いた。微動だにしない彼はしかし、嫌だとは言わなかったので多分問題はない。……嫌だと言うのが面倒だったのかもしれないが。
    自分のマグカップを持って自室に戻ろうとすると、唐突に彼が口を開いた。
    「君ならば、答えを知っているのか」
    「はい?」
    「世界の外側の観測者。君は本と同じ異次元の存在だ。私が迎える結末も、君は知ることが出来るだろう。」
    「私は、出会えるのか求めるものに。」
    「……人は、生きてる間にその意味を見出すことは出来ない。終わってから初めてそこに意味が生まれる。正解を探し続けるのが人生です。正解を知ってその通りに行動する者はもはや人とは言えないですよ。」
    「……私にただ、闇雲に探し続けろと言うのか。」
    「貴方が、いつか望むものを得られることを、心から祈っていますよ。」
    彼は目を閉じて、背を丸めた。世界に見放された子供のように。
    「……私からの個人的な意見ですけど、誰にも見つけられてない異能者を探すのはどうですか。自覚のない異能者の行動なら、貴方の予測を超えるんじゃないでしょうか。だって絶対の未知なんですから。」
    聞いてるかは分からなかった。私に出来ることなどない。シナリオ通りに彼が出会えることを祈るしかない。関わらないと決めたのに、これでこの世界が詰んでしまったらどうしようか。

    「出かけてくる。」
    珍しく彼が私に声をかけた。
    「え、はい、いってらっしゃい……」
    驚いて挨拶を返すが、彼は無機質な目で私を見るばかりだ。居た堪れなくなって聞いた。
    「あの、何処まで……」
    「孤児院だ」
    「………そうですか」
    驚きが声に滲まなかっただろうか。
    「お気をつけて……」
    「嗚呼。行ってくる。」
    今夜、彼は死にに行く。生命の意味を探す長い放浪の旅路が始まるのだ。
    早く、この家を去るべきではないか。彼が帰って来た時に、聡明な彼が気づかないように。
    とは言え、この世界で生きる術を持たない私は、彼に衣食住を頼っていたので、このままではただ死ぬのを待つ他がない。
    迷っている内に、ロシア帽を被った男が私を訪ねて来た。澁澤が死んだことを告げた彼はしかし、対して驚かなかった私を不思議そうに見つめた。
    「……誰ですか」
    「名前は知ってるでしょう」
    探りを入れるも澁澤から既に聞いているらしい。逃げようと距離を置く。
    その腕を、その男は見た目からは想像出来ない力強さで掴んだ。
    「彼の遺言で、貴女のことを頼まれていまして」
    「……彼は私に価値があると思っているようには見えなかったけど」
    「彼がそうだと言うのなら、全ては価値があるのですよ。」
    ---------------------

    フョードルにロシアに連れて帰られる。DAの時に日本に帰って来る。

    ---------------------

    〜回想〜
    フョードル君。預言者の言葉によれば、私は希望を得た時に死ぬらしい。
    あなたが神の意思を信じるとは珍しいですね。
    私は神など信じていない。未来予知の異能者に言われたのだ。
    それはそれは。希少価値のあるコレクションになりそうですね。
    いいや、彼女は結晶にしない。
    随分と入れ込んでいるようで…何があったのです?
    彼女は、未来予知の異能者だ。その異能で他者の人生が狂わないように、関わりを避けている。彼女は自分を、世界に組み込まれている人間ではなく、異世界の怪物とでも思っているようだ。しかし、そう生きるには余りにも平凡すぎる。普通に人が良く普通に悪をなし、普通に嘆き悲しむ。異能を獲得したこと自体、最近だったはずだ。その孤独に寄り添う者が必要だ。
    貴方では駄目なのですか?
    さっきも言ったろう。私はこの先死ぬ。故に、君に後を託す。
    おやおや……本当に貴方は変わりましたね。まるで初めて恋を知った凡夫ですよ。
    フョードルの皮肉にも澁澤は片眉を上げるだけで取り合わない。
    恋愛などという脳の錯覚ではない。道を指し示す女神への捧げ物だ。
    貴方、本気でその未来予知を信じているのですか?
    フョードルの瞳が細められる。返答次第では、この自分と同じ椅子に座っていたはずの男を見放す算段だった。
    実は、彼女は私に何も言ってはいない。だが、大体の人間が考えることなど、私には手にとるように分かる。彼女は私の結末を知りながらそれを隠した。それを推測するのは簡単だった。だからこそ確信した。次で私は答えを得る。
    そこにやってきたのが君だ。
    君のもたらした情報。あれが答えなのだよ。わたしは胸躍らせている!ただ偶然に出会うよりも、素晴らしい体験だ!彼女の平凡さが私に天啓をもたらしたのだ。ならば返礼としてそれを守ってやることにした。
    くつくつと肩を揺らしてフョードルが嗤った。
    ええ、そういうことならば請け負いましょう。貴方は僕の友達ですからね。

    「君は私の生きたコレクションだ。フョードル君にはその管理を任せたに過ぎない。」
    「貴方のコレクションはもう全部なくなってしまったみたいですけど、私はどうするつもりですか?」
    「こうするのさ。」
    異形化した手が彼女の胸を突き刺した。
    「」
    乞うように両手を伸ばして、何も掴めぬまま、力尽きてぶらりと垂れ下がる。
    澁澤は飽きたおもちゃを捨てるように、軽く腕を振って彼女を床に放り投げた。
    血と肉を撒き散らして床に転がる死体を一瞥してから、彼は舞台に降りるために歩を進めた。

    「……手のかかるコレクションでしたが、最期は中々楽しめましたよ。」
    酷薄な笑みを浮かべてフョードルも骸砦を後にする。

    死体は、跡形もなく消えていった。


    ---------------------

    ロシアに連れてかれた時に役場に連れてかれ結婚させられちゃった設定もありました。転用して漫画にしました。
    以下、再会時の会話。おちゃらけ甘め。
    「貴方が私を娶ってくれなかったので、そこの人に手篭めにされてしまいました。」
    「おやおや、夫に対して随分な物言いですね。」
    ゆるりと腰を抱いて引き寄せれば、ちょっと嫌な顔をして、離して欲しいと言う。
    フョードルは素直に彼女の言葉に従った。
    その様子を心底つまらなさそうに見ていた澁澤が口を開く。
    「君も女というわけかい。」
    「いや?冗談ですが。良い恨言が思いつかなかったので。」
    「恨言かね。」
    「ええ、後を託すぐらいなら人は選んでくださいな。別に一人で暮らせるようはからってくれても良かったのに。」
    「……君に言われた通り、自分が何者か知らぬ異能者を探した。彼こそ、人の価値を示す者。生きることを知っている者。全部君の言った通りだった。人生とは、終わってから意味が見つかるもの。本当にその通りだった。」
    「うん?つまりは貴方、空気が読めないタイプの人間ですね?」
    どうしたら後を託すが結婚するに変わるんだ。
    澁澤は目を丸くした後、腹を抱えて笑い始めた。
    「なるほど……ふふ、君もなかなか面白いことを言うようになったじゃないか。」
    「……冗談ですよ。」
    「知っているよ。」
    彼はそう言うと私の腰を抱いた。
    「君が私の所有物である限り、私以外に君に触れることは許さない。」
    澁澤はそう言うと、私を引き寄せ口づけをした。
    「……んっ!」
    私は驚いて目を見開いたが、彼は構わず口づけを続けた。
    「……っ!」
    舌を絡め取られて、吸われる。まるで恋人同士の口づけのように、優しく甘く、そして熱い口づけだった。
    「愛している」
    彼はそう囁いて、私から離れた。
    私は呆然と彼を見た。彼は満足げに微笑んでいた。
    「……君は、私の生きた証だ。」
    私はその言葉に目眩を覚えた。私はそれに、返事をすることが出来なかった。
    澁澤は満足そうに、そしてどこか寂しげに微笑んだ。
    「もう、時間がないな。」
    「………………」
    「最後に一つだけ聞かせてくれないか?」
    「…………なんでしょう?」
    「君は私が好きだったかね。」
    考えた事がなかった。守ってくれているとは感じていたが、非日常の中で生きていくので精一杯で、振り返る時間もなかった。
    「……………貴方が、欲しいものが手に入れば良いと願ってはいました。祈りだったと、思います。」
    「そうか。」
    澁澤はそれ以上、何も言わずに、踵を返した。
    彼は舞台へ降りていく。最期の大舞台に。
    「……それだけで良かったのですか?」
    「これは愛ではありましたが、ただ1人に向けた愛ではなかったんです。だから、これで良いと思います。」
    「では帰りましょうか。」
    私にとってあの日々が宝物であり、彼にとっても意味のあるものだった。その事実が、彼が私に贈った愛だったと分かったから、これで良かったのだ。

    さようなら、愛したひと。貴方の人生が、良きものである事を祈っています。
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