神の手はとどかない 神とは、なんと不自由な存在であろうか。
世界の運行を、被造物達の命運を握っているというのに、更に我々を縛る大いなる不文律が、常に俺の前に立ちはだかる。
かつて俺は、太陽神により産まれることを許されなかった。生命の神の権能と、埃及の王の未来を持つ者の誕生は、己の意志ではなく、創造神にも拠らず、父と母の情と、太陽と知恵の許しによって成された。
世界は男と女が番うものとされ、新たな魂を正しく創造できるのは、男の精を得た女であり、俺に其の仕組みを書き換えることは、叶わなかった。
俺が存在した時点で、世界にはあまりにも多くの俺の力の及ばぬ大いなる力が存在していた。
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