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    しゃもちゃん

    5000以下の短め練習をベースに時折イラストなど。文字は最後pixivに収録します。
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    しゃもちゃん

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    いつもアルベールのBIGLOVEとかいうけどユリウスからもBIGLOVE出してほしいな~~って思てる!!逆に見えるかもしれんが生産地はアルユリの人間です!!!アルユリはよ結婚して!!!!!

    #アルユリ
    AlbertYurius
    ##あゆ

    【現パロで有名人×一般人のアルユリ】 日本時間6月〇日、午前零時。
     その動画は公開とともに一気に視聴者数を伸ばし、あくる朝には全世界百万再生を突破した。

     平日であるのにもかかわらず大学内の講堂はざわついていた。ユリウスはそのざわめきは嫌いでは無かった。他愛ない話に耳を傾けていなくてもいいというのはこんなにも楽な事だったのかと気付かされる。
    「ねえねえ!この動画の人、ユリウスくんに似てない?」
    「確かに言われてみれば……雰囲気近いね」
    「ねー!赤っぽいロングとか、超似てる……なんだっけ、この動画のコンセプト……」
    「あっユリウスくーん!やっほ。これ知ってる?」
     のんびりと教科書を片付けていると同じ授業を取っている学友に引き止められた。
     スマホの画面を見せられて、ユリウスはそれを覗き込んだ。一見するとウエディングシーンの広告のようだ。
    「なんだい?」
    「今ちょー人気の俳優のコラボジュエリーのCM!これに出てる謎の美女が君そっくりだってコイツ言ってんのw」
     茶化すように髪を染めた女性はもう一人を指さした。
    「ちょっ!顔が似てるとは言ってないよ~。ごめんね、変な事言って」
    「み、みんなはこの動画に出てる人物を知っている……?」
     怪訝そうな表情のユリウス質問に、二人は頭の上に疑問符を浮かべる。
    「知ってるも何も、この間主演の映画が100億突破したし、テレビめっちゃ出てるし」
    「え、え?」
    「鈍いなー!世間知らずか!可愛いな!?」
     理解が及んでいないユリウスに、二人は説明をした。
     海外のとあるジュエリーブランドとのタイアップで、起用されたのはアメリカを中心に活躍する役者であるアルベールだった。
     彼は映画を主として活動していたが、最近では日本にもたびたび来日し事あるごとにバラエティ番組にも出演してくれるらしい。
     綺麗な金髪に赤い瞳は西洋的な美しさを持ちながらも、あどけない少年らしい顔つきがアジア系のファン層に受けている……とのことだ。
    二人の説明を聞いて、ユリウスはがたんと立ち上がった。
    「ありがとう!ちょっと調べてくる!!!!」
     ユリウスにしては珍しい大きな声でそれは中断される。
     走るようにして講堂を出ていくユリウスに、もしや怒らせてしまったのではと二人は顔を見合わせた。

     ユリウスは帰り道いつも前を通るだけのレンタルショップに立ち寄って、アルベールの出演作を借れるだけ借りて帰った。
     都営マンションの自宅のリビングで、母親が返ってくるまで毛布をかぶってじっとテレビ画面にかじりつく。
     エンタメに疎いのは自覚していたが、まさか異世界の親友も一緒に転生してるだなんて聞いてない!生まれ変わりという概念をこの日本という国で、地球という世界で初めて知ったユリウスはそもそもアルベールが同じようにして生まれているだなんて思いつきもしなかった。
     星晶獣の都合のいい幻覚にしては自分の知らぬ知識や化学が発展したこの世界でユリウスは19年間、生きて来た。
     まさか!まさかまさか!!アルベールもいるだなんて知ってたら!!
     色んな感情が渦巻きながらユリウスは涙を流しながら見れるだけ見て、画面のアルベールを貪った。
     アルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだアルベールだ、アルベールだ!!!!!
    「ユリウスくん、そんなに貴方アルベールの事好きだったかしら……?」
     仕事を終えて帰って来た母親はびっくりしていた。
     我が子であるというだけで十分可愛いが、たった一人の愛息子は昔から勉強にも優秀で聞き分けの良くできた子だった。
     いつもなら夕食時にしか、しかもニュース番組くらいしか見ない息子が、帰ったら涙目で震えながらテレビにかじりついていたのだ。
     空調はちゃっかり入っていたが、しかし見るからにして動揺しているのは明らかだった。
    「か……かあさん」
    「あらあら……貴方のこんなこんなぐちゃぐちゃな顔、小学校入学式以来よ」
     ティッシュで涙を拭われながらユリウスはそっと毛布の中から、まだ見ていないDVDの大軍を見せる。
    「お父さんが帰ってくるまでね? お風呂だけ用意してくれるかしら」
     母親にそういわれて、のろりと立ち上がったユリウスは風呂場へと消えた。おそらく掃除と一緒に自分も入浴してしまおうという考えだろう。
     お風呂好きなユリウスにそこまでさせるアルベール恐るべし、と内心母親は驚愕していた。
     それから週末まで、朝起きて大学に行くまで、家に帰って寝るまでの間もずっとアルベール漬けだった。品行方正の成績優秀児であったユリウスに両親は口出ししなかった。
     むしろ同世代の子から浮いていたと言っても過言でない息子の、突然の豹変具合にもにこにこと受け入れていた程だ。
    「ユリウス、そろそろスマホ買いに行こうか」
     日曜日。図書館で司書をしている父親がそう言って、ユリウスはリビングでレンタルDVDをがっしゃんと落としてしまった。
     これまで勉学に必要なものですらまともに強請って来なかった我が子が見るからに喜んでいて母親も歓喜する。
    「ちょっと運動がてらに、渋谷まで足を延ばすか」
    「ー!ー!!!!」
     声にならない喜びの声を上げてユリウスは喜んだ。もちろん今渋谷にアルベールの広告が立っているのを知った上での誘いだった。
     親子三人で駅前から出ているバスに揺られて渋谷駅前の家電量販店で機種変更と新規契約を終えた。
     ほくほくとした気持ちで真新しいスマホを手にしたユリウスは、街頭広告をスマホで撮って帰ってくる、と両親と分かれた。
     渋谷スクランブルを歩いていると、野外テレビにアルベールを知るきっかけになったジュエリーの広告が流れた。少し長いバージョンらしく、話に聞いた通り赤い髪の女性らしき人物とアルベールが歩いている。
     メインはアルベールであるのだが、珍しいのがその女性の装いだ。アルベールはきちっとした花婿姿だが、女性の方はパンツスタイルのそれだった。最近欧米で流行っているものらしい。花とヴェールで顔まではハッキリは見えなかったが、ブレスレットやネックレス、ピアスが時折画面にアップで映り、ああ女性なのだと分かる程度だった。
     何かを思い立ったユリウスは、新しいスマホでそのジュエリーブランドについて調べる。
     そのジュエリーの新しい若者向けブランド名が「Yurius」らしい。やけに符号が合って、ユリウスはUtubeに違法で上げられた番組にまで手を伸ばした。アップロード日は、昨日の深夜。土曜の夜の番組のようだった。
    『探してるんですよ。ユリウスというひとを。俺の運命の人です』
     番組でそう言ってのけるアルベールにユリウスは6月の湿気の中、青ざめた。
    『CMも好きに作っていいって言われて。起用した彼女みたいに、きっと綺麗なローズブラウンの髪をしています』
    『きっと、とは?』
    『まだ会った事無いんですよ。……でも、運命の人ってそういうものでしょう?』
     インタビューに答えるアルベールは顔をほのかに染めて微笑んだ。
    『そういえば、この宝石のシリーズには、指輪は無いんですよね』
    『はい。指輪はCMで使ったこれ一品だけです』
    『わあ……素敵な色。ピンクダイヤモンドとはちょっと風合いが異なりますね』
    『これも見た時に、ユリウスの事を思い出して……ユリウスの瞳の色のイメージです』
    『それではアルベールさんの頭の中のユリウスさんは、ローズブラウンの髪に、ピンク色の瞳をされてらっしゃるんですね』
    『ええ、まあ。はい』
     はにかむアルベールに、アナウンサーは言葉を続ける。
    『これを贈られる女性はそのイメージのユリウスさんに嫉妬してしまいますね』
    『大丈夫ですよ!ユリウス以外贈るつもりも、予定も無いので』
    「あっ馬鹿!! そんな事テレビで言うやつがあるか!!」
     イヤホンを指していたとはいえ、スマホの画面に向かってユリウスは叫ぶ。
    アナウンサーからすれば、空想上の女性に指輪を捧げる男に見えるのだが、そんな些末な事はアルベールの顔の良さで全て空に消えた。
     脱力しながら、ユリウスはイヤホンを耳から外す。アルベールが異世界の記憶を持っているのも、予想外だった。
     少しげんなりした顔で本来の目的の街頭広告を見に行く。他の広告柱が全部アルベールになる瞬間をロケーション撮影した。ポスターサイズに引き伸ばされたアルベールは毛穴一つない美しさだ。
     電子広告を指でユリウスはなぞる。柱に額を当てて、モニターの小さな微振動と熱を測った。
    「……今の私は、いつ君に会えるのだろうね」
     大都市東京であっても、アメリカは遠い。
     一歩退いて、ユリウスは帰路に着こうとした。
     ビルの屋上広告が、またアルベールを映し出す。

    『──運命の人、Yurius』

     指輪を嵌めたアルベールの微笑みを見上げて、ユリウスは今の温かい実家へ帰った。

    「わたしの、うんめいのひと」


     後日、渋谷の広告柱に凭れるユリウスの後ろ姿がSNSで拡散される。
     アルベールの目に触れるまであと少し。
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