本田は思わず、小さな悲鳴をあげると同時に目を見開き、固まった。
柘榴の鉢に水をやろうと軒先にでた瞬間、人が仰向けになって倒れていた。少し距離を持ち、口元を凝視すると、息をしている様子ではあったので、胸を撫で下ろす。
と、いうことは。状況からして、たまたま自宅の前で寝ていた酔っ払い。だが、質感の良さそうなスーツに見るからに高級そうな鞄や靴、身なりもきちんとしている様子。
声をかけようとじりじりと近寄り、傍に腰を落とすと、ブランデーの香りがツン、と鼻をさす。首からかけられているものは、社員証であろうか。誰もが名を知る大企業の名とともに、アルファベットで刻まれた名前。
「……あー、ある、さー?…き、るく…」
「…うーん…、……?」
「…おや、お目覚めですか」
「…は?…おまえ、だれ…」
「貴方こそ、どなたです?人様の自宅の前で爆睡しておいて」
「………」
「………」
「……ん、…おやすみ……」
「は?!ちょ、ちょっと!…もう!なんなんです!貴方!」
「…あぁ?…あー、さー…かーく、らんど…」
それだけ言い残したカークランドは、またすやすや寝息をたて始めた。名前の読み方が分かったはいいが、この男をどうするか。
春の気配が感じられ始めたが、早朝はまだ肌寒い。ましてや、屋外で寝るなどしたら、さすがに風邪をひいてしまうだろう。
悩んだ末、本田は植物の水やりを終えたのち、自分より少し背の高い男を抱えて、再び自宅へと戻っていった。
不快な痛みが走り、ゆっくりと目を開けて、飲みすぎたぁ…、と掠れ声を絞り出すと同時にため息を吐き出すカークランド。
昨晩、得意先の社長に付き合って居酒屋、バー、ラウンジ…、までは記憶があるが、そこから先が思い出せずにいた。
「こんどこそ、お目覚めですか?」
「は?……え?」
「貴方、私の自宅の前で寝ていたんですよ」
「え、あ…、そうか…」
「…すみ