今だけは彼女の時間をアクドル大武闘会、これ程までに大きく悪魔達の心を揺さぶる舞台を私は知らない。
観客も出場メンバー達も、審査員達でさえ…そしてきっとテレビの向こう側さえも巻き込んだこの光景を、きっと一生忘れないだろう。
✿✿✿
「はぁ〜〜〜」
あのアクドル大武闘会から早数ヶ月。我が事務所、ムーンプロの看板アクドルはその艶やかな黒髪を机に垂らし大きく落胆していた。
あの大会から仕事もファンも増え、順調という毎日を過ごしているように思える彼女の溜息は、実は珍しい事じゃなかった。
「また例のイルミ様?ネネット」
せっかくのオフの日だと言うのに、事務所にわざわざ足を運びスケジュールを見つめては繰り返す溜息。もはやムーンプロではすっかり常識となってしまったこの行為が始まったのはあの大武闘会が終わってからだ。
1008