たったひとつの冴えたやり方 やっぱりそうだ。
目の前にある、丁寧にラッピングされた小さな包みをまじまじと見つめながら、山南は内心でそう独りごちた。
中身はもう知っている。仕事が繁忙期だという恋人が、その合間を縫って訪れてくれた今日、少しやつれた面持ちの彼に「こないだ、手が乾燥で荒れてるって言ってたので」と贈られたハンドクリームだ。確かにそんなようなことはあったが、多忙な中でわざわざ時間を割いて買い求めてくれたのかと申し訳なく思いながら、礼を言って受け取れば、最近僕のせいであんまり会えてないからその埋め合わせですよと頭をかくのがいじらしかった。
そんなこと、気にしなくていいのに。彼はまだ若く、たくさんの可能性を持っている。そういう若者が忙しいのは、もちろん働きすぎはいけないけれど、ある程度ならよいことだ。歳上のせめてもの矜持として、それを尊重してやりたいと山南は思っていた。
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