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    samezamecry

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    samezamecry

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    山南さんがはじめちゃんに乗っかる斎山すけべ書きました。カルデアifで付き合ってる感じですが特になれそめとか無しに唐突に始まって終わります...

    山南さんが積極的な斎山!以下の描写が大丈夫な方向けです!

    ※双方の過去の女性経験匂わせ
    ※山南さん→はじめちゃんのフェラ
    ※山南さんが積極的な騎乗位
    ※はじめちゃんもちょっとだけ喘ぐ







     我ながらどうかと思うのだが、山南と両手の指では足りない数の夜を共にした今もなお、斎藤は彼と性的な行為というものがいまいち結びつかないでいる。

     あの人でそういう想像をしたことがない訳ではない。むしろ色々と夢想できてしまって困るほどだ。しかし、それはあくまで自分が主体というか、こんなことをしてやりたいとか、それによって乱れた彼を見てみたいだとかの願望がほとんどで、つまり斎藤は性に積極的な山南の姿をうまく思い描けないのだった。

     頭の中の冷静な部分は、彼だってそういう気分になることくらいあるだろうと分かっている。生前、山南が島原での会合へ赴くのを見たこともあれば、宴席で女に酌をされる姿だって覚えている。けれど言い換えれば記憶にあるのはその程度で、それ以上は何も知らなかった。

     男ばかりで卑猥な軽口が日常茶飯事だった新選組にあって、彼は決してそのような場に加わらない堅物だったし、上品な物腰や知識人らしい物言いからか、みな山南先生は下世話な話題が嫌いなのだと思っていたような気もする。実際そうなんだろうと斎藤も思うが、今となっては年長者として、また上役として殊更そう在ろうと努めていたのではないかと考えることもある。
     近い立ち位置にいた土方が派手な噂に事欠かない人物だったから、対照的な山南の清廉さをむやみに持ち上げる者もいて、彼自身も自分にそういった役割が期待されていると理解していただろう。女性関係で揉めた土方を叱り飛ばしていた立場上、自らが醜聞に巻き込まれるわけにはいかなかったというのも大きいかもしれないが。

     とはいえそれは山南が持つ一面にすぎず、組の連中には見せない姿もあったはずだ。何より当時の斎藤は彼よりひと回り近く年下だったので、やや潔癖なまでに山南は会話の中で性を匂わせる話題を避けていた印象がある。
     子ども扱いされているようで気に入らなかったその配慮を、斎藤はむずがゆい懐かしさと共に思い出す。それが今では体を重ねてくれるまでになったのだから、斎藤はもうあの頃は想像すらできなかった山南を知っている。快楽で溶けた瞳も、物欲しげにひそめられた眉も、汗ばんで火照った肌の熱さも、はしたなく吸いついてくる肚の奥も。

     だが、それらは斎藤が彼の肢体を丁寧に蕩かしてようやく見られるものだ。理由なしに拒まれたり、嫌がられたことはないけれど、共寝を誘うのもいつも斎藤から。奥手というと語弊があるものの、やはり山南はセックスに対して受け身に思える。

     元来そんな性質であるなら、そのままで全く構わないと斎藤は考えている。そもそも行為を許されるだけで望外の幸運なのだし、端正な容貌が自分の手管で欲に濡れていくさまは正直かなり、そそる。求めれば応えてくれるようなこれまでのセックスにも反省はあれど不満はなかった。ただ、もし知らない顔があるのであれば見てみたい。真面目で穏やかな人にだって押し隠しているものがあるのではと悪趣味に暴きたくなる衝動を、望まぬことを強いるべきではないという自制心でなんとか抑えこんでいる。
     
     結局のところ斎藤は、山南にもっと欲しがってほしいのだ。土方にも沖田にも、新選組の他の誰にも見せたことのない姿を斎藤にだけは見せてほしい。そう思ってしまうのは、きっとそれを知っているだろう生前彼が腕に抱いた女たちへの嫉妬の裏返しだ。山南に抱かれたいというよりも、理性の強い彼を、自分から色事に溺れるくらい夢中にさせてみたかった。

     青くさい悋気じみたそれを口にするつもりは毛頭ない。しかし機会さえあれば、多少強引なプレイめいた要求になろうが、山南に彼のしたいこと、あるいはしてほしいことを尋ねてみようと斎藤はひそかに狙っている。これまでの関係で、秘めた欲望を教えてもらえるだけの信頼は築けているだろうか。万が一どぎついやつが来たらどうするという杞憂がわずかに脳裏を掠めるが、いやたぶんすげえ興奮するな、とすぐ思い直す。要するに山南なら何でもいいのだった。

     そう考えて、斎藤は自分の執心に苦笑した。ねえ山南さん、俺がどんだけあんたに惚れてるか分かってますか。そんなこと彼が知るよしもないと理解していても、時々思い知らせてやりたくなる。どれほど想われているか認識すれば、他人へ親切にするばかりのあの人が、自分自身をもう少し大事にしてくれるのではないかと夢みるから。


     そんな風に、斎藤が虎視淡々と野望を抱いていたある日のことだった。





     カルデアの廊下を、斎藤は風紀委員に見咎められない上限近くの速さで急いでいた。他人にどう見えているかはさておき、特段遅刻癖のない斎藤がそこまで慌ただしくしているのは、これから山南との約束があるためだ。待たせているに違いない彼のことを思うと、いっそう脚に力が入る。

     今朝がた食堂で会った時に二人とも明日の予定が空いたと知り、勇んで誘いをかけた斎藤へ、山南は微笑んで頷いてくれた。惚れた欲目を差し引いても、嬉しそうな横顔に見えた。
     今日はその後、山南は書庫の管理業務を頼まれ、斎藤はアーツ系単体宝具のサーヴァントによる合同シミュレーションに参加することになっていた。擬似的なレイシフトまで用いた本格的な戦闘訓練はいちおうタイムスケジュールを組んであるものの、規模が大きいぶん機器のトラブルに見舞われたり白熱した者同士がやり合ったりして、定刻どおりに終わった試しがない。お互いにそれは分かっていて、概ね時間の読みやすい任務である山南が彼の部屋で待っているよと言ってくれたのだった。斎藤はありがたくその提案に乗り、どうかあまり長引かないでくれと柄にもなく祈るような気持ちでシミュレーターへ向かった。
     
     そんな時に限ってうまくは行かないもので、予想よりもさらに遅れて解放された斎藤は、他の参加者へ適当な挨拶を済ませて早々にその場を抜け出した。シミュレーションとはいえ英雄だの偉人だのが集まった面子は強者ぞろいで、剣士として刺激されるものはあるが、戦闘では一瞬の油断も許されない。緊張し通しの鍛錬を生き延びた神経はまだ昂っている。自室で身繕いも兼ねたシャワーでも浴びて落ち着いた方がいいだろうかとは思ったが、その少しの時間さえ惜しくて、一度霊体化して身なりだけ整え、斎藤は浅葱の羽織を翻した。

     無機質に続く通路なのに、何度も訪れたせいか山南の部屋はなんとなく違って見える。軽く息を吐いた斎藤は、おもむろに腕を上げて扉を幾度か叩いた。
     誰何の声へ名乗ればすぐにそこが開く。気を許されている証拠のその速さがわずかにくすぐったい気持ちを隠して、お待たせしてすみませんと謝りながら部屋に足を踏み入れると、優しいねぎらいが返ってくる。一日働いた体に沁み渡るような想い人の声に頬を緩めたところで、斎藤はおや、と目を瞬かせた。
     
     普段こうして訪れた斎藤へ、山南は机で書き物などの手を止めて応対することがほとんどなのだが、今日は違っている。すでに夜着がわりの浴衣をまとった彼は、寝台で身体を起こして本を読んでいたらしい。長引いて大変だったね、と小首をかしげた拍子にゆるく結われた髪がうなじに落ちかかるのが、なんとも言えず色気があった。

     もしかして、と芽生えた予感が、彼が手元の本を未練もなくサイドテーブルに置いたことで確信へと育っていく。歩み寄る斎藤を映しこむ淡い瞳がとろりと潤んでいるのは錯覚ではないだろう。上がりそうになる口角を押さえつけ、斎藤は彼の傍に片膝をついた。覆いかぶさるような体勢に明かりを遮られた影の中で、山南は黙ってこちらを見つめている。その喉がこくんと上下するのを認めて、斎藤はますます高揚した。

     間違いなく、彼はその気だ。情事をほのめかす手つきで解いた髪を梳いてやれば、目じりにうっすらと恥じらいが宿る。けれど上体を寄せてのしかかっても、抵抗どころか望むように両腕が迎えてくれる。受け入れられているという実感に、単なる欲情だけでなく心が満たされた。胸の底をあたためるようなそれを噛みしめていると、額を合わせた山南がふと呟く。

    「霊体化してから来てくれたのかい?」
    「え、はい……?」

     確かにその通りだが、どうかしたのだろうか。訝しんだ斎藤が何か尋ねるより早く、山南の口から言葉がこぼれ落ちた。

    「そのままでも構わなかったのに、」

     思わず彼の顔をまじまじと見つめる。無遠慮な視線を気にする様子もなく首筋にすり寄ってくる人の肩をぐっと掴み、斎藤はその耳元へ低めた囁きを吹き込んだ。

    「……なんでですか?」
    「どうしてだろうね」

     ちいさく身体を跳ねさせた山南は、だがすぐに落ち着いた声で受け流す。誘いをつれなく躱され、斎藤はうすく唇を舐めた。欲した反応が得られなかったことによる失望ではなく、手強い獲物を狙うための自制の仕草だった。逃げられれば追いたくなるのは人のさがだ。こちらを見上げる男のすました微笑みは、斎藤が煽られたことを知っている。それなら、望み通りに食らいついてやるだけだ。

     しかし、唇を奪おうと顔を近づけた斎藤の長い髪が山南の頬を撫でた瞬間、何かに気づいたように目をみはった彼に胸板を押し戻された。

    「ま、待ちなさい」
    「……何です」

     唐突なお預けに気勢をそがれた斎藤がやや憮然としながら返すと、どこか言いづらそうに山南の視線が泳ぐ。答えないなら続けますけど、の意を込めてじりじり近づく斎藤に、やがて山南の唇が重たげに開いた。

    「……その、姿は、今日はあまり……」

     山南にしては不条理な拒絶に、斎藤は内心かなりショックを受けた。確かに彼が自分とそういう関係になるにあたって、生前の年齢差や立場の違いを気にしていたことは分かっている。その憂慮を思いやって、斎藤も彼と会う際はどちらかといえば年嵩の外見を選ぶことが多い。そこにはもうあの頃の若造とは違うんですよという見栄のような気持ちもない訳ではなかった。

     けれど、本当は浅葱の羽織をまとった自分もちゃんと見てほしい。この姿は三番隊隊長としての現界における核でもあるが、同時に山南の持つ生前の記憶に刻まれた斎藤一の姿であり、それを受け入れられて初めて、彼に恋仲の相手として認められるような気がするからだ。

     本来ならできるだけ山南の望みは叶えてやりたいが、今日は譲れなかった。後ろめたく逃げるおとがいを捕らえ、斎藤はことさら年下めいた口調でせがんだ。

    「やです」
    「斎藤君」
    「どうしても駄目ですか?お願い、山南さん」

     高ぶった感情は、普段なら気恥ずかしくなるほど甘ったるい囁きを自分に許す。するとさっと頬を赤らめた山南は、う、とわずかに口ごもり、「まあ、君がそう言うなら……」と意外にたやすく折れてくれた。頑固なこの人のことだからもっと掻き口説く必要があると思っていた斎藤は拍子抜けした気分になったが、ともかく言質は得たので今度こそ唇を塞ぐ。性急にさし入れた舌で仕返しも込めて彼のそれを絡め取ると、濡れた粘膜が擦れていやらしい音を立てる。そのまま従順に口内を明け渡されるのに優越感が増した。吐息を交わしながらそろりと手を伸ばして首から胸元まで撫で下ろしてやれば、山南の喉から微かな声が漏れる。

    「ん、ぅ……」

     こうなってしまえば、後は斎藤の思うがままだ。布地の上からでも明らかにふっくら形を浮き上がらせている胸の突起をわざと指先で掠め、ひくんと伝わってくる震えを愉しむ。じれったそうに身体を捩るのを宥めるように今度はきゅっと爪を立てると、鋭く息を詰める気配がした。快楽に素直なかわいい身体は、色んなところへ触れて焦らしていじめてやりたくなる。今日はどうしてやろうか、と心中で舌舐めずりをした斎藤が唇を離したその時、なぜかがっしりと肩を掴む手のひらがあった。

    「え……うお!?」

     呆気にとられた斎藤は、気づけば寝台へ転がされていた。その上に、ほとんど反応すらできない速さで素早く山南が馬乗りになった。驚愕に目を剥く斎藤へまたがった彼は、熱に浮かされたような表情でこちらを見下ろしてくる。そんな顔は記憶になくて、抵抗も忘れて視線が釘付けられた。はあ、と情欲に湿ったため息をついた山南は、とっさに上体を起こしかけて強張った斎藤の腹筋を指先でたどる。そして呆然と見つめる斎藤にむかって、優しく声をかけた。

    「ごめんね、急に。……でも、今日は私にもさせてほしいんだ」
    「え!?させてって何を……ンッ」

     予想もしていなかった言葉に動揺する斎藤は、制止する間もなく重ねられた唇に応じるかどうか一瞬だけ迷った後、しぶしぶ口を開いた。すぐさまもぐり込んできた舌は嬉しげに斎藤の下唇を舐め、熱心に口の中を愛撫する。頬に掌を添えながら丁寧に舌を絡めるやり方は手慣れていて、きっとかつて誰かを夢中にさせたのだろう。面白くない気持ちで大人しく口を吸われていた斎藤は、だがふとした時になんだか既視感のある手管を山南が使ってくることへ気づいて内心でにやりとした。
     つう、と上顎を舌先でなぞる仕草は斎藤が彼に好んで施すものだ。だって反応がいいから。それを彼自身も覚えているということは、やはり好きなのだろう。

     いいことを知ったと気を良くした斎藤が反撃するべく山南の舌を押し戻せば、尖った犬歯でたしなめるように甘噛みされる。そんなことをされたのは初めてだった。思わず瞼を上げると、ごく近くでとろけた紫色が揺れる。目を細めて斎藤の頬を撫でる山南は、紛れもなく捕食する側だけが持つ色気を纏っていた。

     噛まれたことそのものより、彼がそういう戯れを仕掛けてきたということ、そして隠しもせず欲情を露わにする姿に目が眩むような興奮が押し寄せた。腹の底を灼くそれに逆らわず乱暴に山南の後頭部を引き寄せれば、主導権を奪い合って口付けが荒くなる。互いに一歩も引かず貪ったせいで、唇が離れた時にはどちらも息が上がっていた。

    「っ、......珍しいですね。そういう気分?」

     興奮したことにはしたのだが、いつにない振る舞いにやや警戒しつつ斎藤が尋ねると、ちろりと赤い舌を覗かせて唇を舐めた山南はうっすら微笑んだ。

    「ん、ふふ......そう、だね」

     内心の読めない笑みに気を取られた隙に、不意に伸びてきた指先にはっきりと兆した性器を袴の上からなぞられ、斎藤は肩を跳ねさせた。ゆっくりと後ろ手にそれを撫でる山南は、満足そうに瞬くと熱っぽい声で呟く。

    「たってる......」
    「......そりゃね。あんたもでしょ」

     先ほどから硬く存在を主張しているものを腹筋で押し上げてやれば、こら、と愉しげな制止が降ってきた。そして再び上体をかがめて斎藤の唇へ触れるだけの口付けを落とした山南は、甘い響きで囁いた。

    「ねえ、脱いでくれるかい......?」
    「いいです、けど」

     そんな声でねだられたら聞いてやらない訳にはいかないが、これから彼が何をしようとしているのか、予想と期待と微かな不安がないまぜになって落ち着かない。でもまあ同意のないことはされないはずだと腹を括って長着姿になると、ありがとうと律儀に礼を言った山南がごそごそと脚の間に移動するので、斎藤は仰天して彼の肩を掴んだ。

    「待った待った、何しようとしてんですか」
    「何って、......その、口で......しようかと」
    「へ」

     口でするって何を。阿呆みたいにそう思った斎藤の剛直を、白い指がむんずとわし掴んだ。わりと雑な仕草に斎藤は肝を冷やしたが、そのまま裏筋を擦り上げる手つきは思いのほか的確だった。そりゃ同じ男だもんな、と安堵するような興奮するような複雑な気分で山南を見れば、「嫌かな......?」と眉を下げられて慌てて首を横に振る。無理しなくていいんだよ、と身を引きかけるのを押し留め、果たして彼こそ無理をしていないか注意深く伺いながら斎藤は言葉を継いだ。

    「全然そんなことないですけど、山南さんは嫌じゃないんですか」

     思えば斎藤が彼に口淫をしたことはあっても、その逆はこれまで一度もない。されたくない訳ではなかったが、欲望を押し付けるような形で山南にそういうことをさせるのは、真面目なかつての上司を汚してしまうようで、どうしても罪悪感が先に立つ。彼が生前の年齢差を気にするように、斎藤も身に染みた上下関係を忘れられないと同時に、勝手に彼へ抱く清廉な印象に拘っているのだった。
     問いかけへ不思議そうに首を傾げた山南は、数瞬何かを考えたのちにふと微笑んで頷いた。

    「ありがとう。.......私も、君を気持ちよくさせたいんだ」

     そう言って、身をかがめた山南が、下着越しに硬く張り詰めた肉へ口付けるさまに息を詰める。この人にこんな真似させるなんて、という背徳感と、望んで奉仕してくれることへの圧倒的な充足。取り出したものを一瞬惚けたように見つめた彼は、長い前髪を耳に掛け直すとゆっくり口を開いた。
     唇から覗く鋭い犬歯に思わず腰が引けそうになるが、呑み込まれた口内はそれを忘れるほど熱くやわらかだった。亀頭を咥えたところでわずかにえずいた山南は、焦れったいほど少しずつ残りを口にしていく。裏筋に絡みつく舌の感触と、竿を唇で吸われる快感に奥歯を噛み締める。半ばあたりまで含んで動きを止め、うっすら涙の滲んだ瞳でこちらを伺ってくるのがたまらない。その拍子に敏感な先端が上顎の粘膜に擦れてとっさに声が漏れると、赤らんだ目尻が嬉しそうにたわんだ。

     山南が自分の下肢へ顔を埋める姿に、見てはいけないものを見るような後めたさが募り、同時にそれを遥かに上回る興奮で背筋が痺れる。いつかこんな風に、と頭の中で想像していた絵面など比べものにならないくらい生々しくて、はしたなくて、罪悪感など投げ捨てて舐めるように見つめずにいられなかった。ごくりと生唾を飲みこめば、山南はそっと目を伏せる。

     そのまま控えめに唇を上下させる口淫は、正直に言えば下手だった。だが、拙い仕草が初々しさを匂わせ、絶妙に独占欲を煽られる。何より一生懸命にこちらを悦くしようとしてくれていることが伝わってきて、そのことが場違いなほど胸をついた。できるだけ優しい手つきで頭を撫でてやれば、とろんと綺麗な瞳が溶ける。するとふいにじゅうっと吸いつかれ、斎藤はたまらず目を眇めた。いたずらっぽく口角を上げた山南の喉奥に押し付けてやりたい衝動を噛み殺して、荒く息をつく。そうやってたどたどしくしゃぶられながら、口の中へ収め切れていない部分を指で扱かれると、否応なしに快感が腰に溜まっていった。

     あー可愛い、このまま出してえな、でも初めてのフェラでそれは絶対まずいよな......と欲望と理性を天秤にかけて斎藤が悶々としていると、口に含んだまま山南がもごもごと喋った。

    「ん......きもひいい、かい?」
    「ッう、はい......っ、もう、いいですよ、そろそろ......」
    「......」
    「っこら、駄目です!離して!」
    「んう、」

     かろうじて勝利を収めた理性による提案に対して無言で深く咥え込まれて、危うく乱暴に出し入れするところだった。間一髪で無体を働くのを耐えたこちらの気も知らず不満げにうなる山南の顔を押し留め、斎藤はようやく濡れた口内から性器を引き抜いた。唾液をまぶされて血管の浮き出たそれが、品のいい顔の前に晒されるいやらしさが目に焼きつく。頭に血がのぼるような光景から無理やり視線を逸らした斎藤は、力づくで山南の身体を引き寄せた。抱きしめた耳元に、余裕のない自分への気恥ずかしさを隠して囁く。

    「すげえ良かったです。......ありがとうございます」

     ややあって、ぎゅっと抱き返してくれた山南が、不服そうな色を残した口調で言った。

    「あのまま出してくれてよかったのに」

     そうやって男を煽るのやめた方が身のためですよ、と喉元まで出かけた言葉を飲み込み、斎藤は軽口と本気の半々の嫉妬を含んで問いかけた。

    「......そういう趣味だったんですか?」
    「私?......さあ、どうかな」

     意味深に笑ってみせた山南は、言葉を切ると斎藤の頭を優しく撫でた。お互い派手に着崩れた布地のあわいで、汗ばんだ肌が触れ合うのが心地いい。啄むように唇を重ねたあと、首や鎖骨に跡を残さないよう気をつけながら口付けていれば、くしゃりと髪を指先でかき混ぜられた。上目遣いに伺った先で、唇をもの言いたげに引き結んだ山南と視線が絡む。腰を支えていた手を下へ向かってすべらせると、瞳の奥で確かな情欲が揺らめいた。

     しかし、浴衣の裾を割る前に潤滑剤を用意しようと寝台の脇へ伸ばした手は、山南によって制される。え、と首を傾げかけた斎藤は、まさかという思いで彼を見上げながら掌を太ももに這わせた。山南は、今度は止めなかった。凝視する斎藤の視線が耐えがたいという風に眉根を寄せているが、その目はこちらを見つめたまま動かない。噛み締められた唇はまるで叱責を待つようにこわばっているのに、火照った頬と濡れた眦は何かを期待して色づいている。素肌をたどった奥にひそむ後孔を撫でた指へとろりと伝う感触に、斎藤は息を呑んだ。

    「あんたこれ、......自分で?」
    「......うん」

     は、と山南が吐息を零す。驚きのあまり無言で指先をさし入れると、やわく火照った粘膜が吸い付いてきた。ほころんだ内壁は充分すぎるほどうるんでいて、簡単に根元まで呑まれた指をゆっくり引き抜けば、山南の身体ががくがくと震える。喉奥で声を殺して肩に顔を埋める様子はたまらなく扇情的だが、興奮を上回る懸念が斎藤を踏み留まらせた。うつむいた彼の肩にそっと手を添え、声が責める響きを持たないよう細心の注意を払いながら口を開く。
     
    「ほんとどうしたんですか、今日。......そんなに、欲しかった?」
    「......そうだよ」

     言葉があんまり心配げに聞こえたような気がして、冗談めかして付け加えた問いかけに、真っ向から同意を返されるとはあまり予期していなかった。きっとこちらの手を煩わせたくないと気を回したとか誰かに入れ知恵されただとかのいきさつがあるのだろうと思っていた斎藤は、顔を上げた彼に縋るように覗き込まれて息を呑んだ。

    「近ごろ......あまり、会えていなかったから。こうして抱き合うのが、恋しくて......我慢できなくて、............はやく、君が欲しくて............はしたない奴だと失望したかい......?」
    「っ......」

     切なく震える声で言い募る山南が、あまりに愛おしくて喉が詰まった。そういう風に言われてみたかった。でも、それは得られないとどこかで思っていた。この人はそんなことしないと決め付けることで、自分を慰めたかったのかもしれない。だが現実の彼はこうして斎藤を求めてくれていた。ちゃんと言葉にしてくれた。なら、それに応えたい。なのに上手く返事が出てこなかった。失望なんてするはずがない。俺だってあんたに会うのがガキみたいに待ち遠しくて仕方なかった。そう伝えてやりたいのに、舌が石になったように斎藤が黙っていると、自嘲じみた表情で視線を逸らした山南が呟いた。

    「でも、確かに今日の私はおかしいのかもしれないね」

     すまない、と動こうとした唇を、噛みつくような衝動任せの口付けでとっさに塞ぐ。目を見開いた山南に、感情がそのまま形を取った剥き出しの声で斎藤は言った。

    「なって」
    「......」
    「おかしくなってよ、先生」

     数瞬言葉もなく見つめあった二人は、やがてどちらともなく唇を重ねた。奪うのではなく、快楽を与え合い分かち合うように吐息を交わしながら、斎藤は再び後孔へ指先を這わせる。丁寧にさし入れた指で柔らかな中を探って、拡げたところへその数を増やす。じれったそうに揺らめく腰を撫で、腹側にひそむしこりを優しく押しつぶせば、山南の喉で甘い悲鳴が上がった。快感にこわばった舌をいいように弄っていると、ぎこちなく唇を振り解いた山南がいっそ泣きそうな声を零した。

    「もう、いいから......っ」
    「......そうですね」
     
     我慢の限界なのは斎藤も同じだった。慎重に指を抜き、いきり立ったものをそこへ擦り付ける。濡れた孔の淵が食むように吸い付いてくる感触に視界が狭まる。吹き飛びそうな理性を懸命に留めようと息をつけば、ふいに伸びてきた山南の指をそれに添えられて斎藤は目を疑った。そして止める間もなく先端が後孔に押し当てられ、ゆっくりと腰が下ろされる。

    「っぅ......!......ん、ぁ......ッ.........、!」
    「ぐ......っ!?」

     熱いぬかるみに、全身の神経ごと性器を包まれる。あまりの快感に上がりかける顎を必死でこらえ、斎藤は奥歯を砕けそうなほど噛み締めた。目の前で剛直が肉の孔にずぶずぶと呑み込まれていくのを信じられない思いで凝視する。竿の半ばを過ぎて先端がひときわ狭いところへ当たったところで、ようやく山南は動きを止めた。

    「ぁ......はい、った......?」

     顔を上げた斎藤が無言で頷くと、山南の表情がふんわりほころぶ。頬を桜色に染めた嬉しげな笑みのいとけないほどの美しさと、胎の内に男を呑んだ身体のギャップに、殴られるような熱情が襲ってきた。唇を噛んだ斎藤の、硬度を増したそれを粘膜で感じ取ったのか、澄んだ紫の中で瞳孔がじわりと拡がった。

    「ぅ......」
    「ふふ、......気持ちいいかい......?」
    「、......はい」
    「よかった......」

     ちゅ、と額に口付けをくれた山南は、浅く息を吸ってそろそろと腰を上げた。悩ましく寄せられた眉根とうっすら開いた唇も艶やかでたまらないが、行かないでというように収縮する粘膜に肉棒を擦られると直接的な快楽が脊髄を叩く。そして抜けそうなところまで引かれた腰は、当然のように再びそれを咥えこんだ。先ほどよりいっそう火照った内壁が貪欲にうねってしゃぶりついてくるのに、思わず持っていかれかけた斎藤は、慌てて腹に力を込めた。情けなくも震えた身体に気づいた山南に愛おしむ仕草で頬を撫でられ、よく分からない種類の興奮がこみ上げる。

    「かわいい、斎藤君......」
    「ッ、あんたねえ......」

     とろけた顔でそんなことを宣う男へ言い返そうと開いた口は、ぐちゃりとみだりがましい音と共にまた腰を使われて引き結ぶ羽目になった。熱く柔い内壁で性器を扱かれる抗いようのない快感が、わけが分からなくなりそうなほど気持ちいい。山南の瞳に映る自分を見上げれば、普段と立場の逆転したような倒錯した感覚に目眩がする。酔いしれる訳にはいかないその危うい悦びを、彼の腰を強く引き寄せることで押し隠した。

    「あ、!だめ......っ奥、」
    「嘘、だめじゃないくせに......!」

     穿つものの大きさへ慣れてきた胎内の、まだ狭い奥へ先端がとんと当たる。何度も突き上げて次第にゆるみ始めたそこがもたらす感覚に、戸惑うようにこわばる肢体を腕を回して逃さない。大して弄ってもいないのに赤く染まったはしたない乳首も舌で押しつぶしてやれば、頭上の喘ぎがいっそう甘さを孕んだ。

     汗に濡れた素肌が隙間なく密着して、境目まで曖昧になりそうだ。唇でも肌でも性器でも互いの身体を愛しあって、快楽さえ共有しているような錯覚。

     吸い付いてくる奥の感触をじっくり味わっていた斎藤は、ふと先端をそこへ押し付ける動きで腰を前後に揺らされて、とっさに山南を手加減なく抱きしめた。サーヴァントの膂力で抱かれた身体は、しかし確かな力強さでそれを受け止めてくれる。彼の胸元へ額を預けた斎藤は、歯を食いしばりながら呻いた。

    「ちょ、それやばいって、山南さん......!」
    「ん、ふぁ、......これ、すごい......」
    「ゔあ......っ」

     蕩けた声が、鼓膜からも快楽を高めてくる。少しの余裕もなくその頂きを追えば、山南の爪が背中に食い込んだ。法悦に溺れた時だけ見せる仕草に、これ以上ないほどの興奮がさらに煽られる。

    「ぁ、や、!......ぃ、く......っいく、あ......!!!」
    「っう......!」

     悲鳴のような嬌声にあわせて強く収縮した胎に、ひときわ深く呑まれた瞬間白濁を注ぎ込む。まるで搾り取られるような吐精だった。最後の一滴まで奥に塗り付け、斎藤は力の抜けかけた腕で山南の身体に縋った。荒い呼吸を繰り返せば、夢中になった証の酸欠でこめかみががんがんと痛む。技巧も何もない幕切れに羞恥心がこみ上げるが、今さらどうしようもなかった。
     
     まだ大きく肩を上下させている山南の表情を伺おうと顔を上げかけた斎藤の首へ、するりと回った白い腕が巻きつく。そのままぎゅっと抱き寄せられた斎藤は、遠慮ない力で鼻先を胸元へ押し当てられて声をあげた。

    「うぶ!?」
    「はぁ......きもち、よかった......」
    「ー!」

     二の腕と胸に顔を覆われて、息ができない。なんとか鼻を横に向けようともがきながら、斎藤はそれどころではない気づきで衝撃を受けた。
     
    (胸、柔らかすぎねえか......!?!?)

     しっとりとなめらかな肌は、興奮にか普段より張っていて、触れれば弾力のある柔らかさで沈みこむ。顔の半分をその豊満な胸部に埋められ、かっと斎藤の耳が熱くなった。童貞じみた反応に自分でも混乱するが、その耳をつぶしかけている二の腕もまた、むっちりと秀でた筋肉の感触を伝えてくる。
     女体の頼りないやわらかさとは明らかに違うしなやかな柔軟性と、女性ではありえない腕力の強さ。それがよく分かるのに、今まで自覚したことのない情欲が燃えるように広がっていく。

     首から上を閉じ込めているそれらとは種類の異なる熱さとやわさに包まれた性器が、達したばかりだというのに硬度を持ち始める。粘膜を押し拡げられた山南が、ふぁ、と甘い驚きのため息をついた。

    「ん、もう......?元気だね......」
    「ぶはっ!......しょうがないでしょ、若いんだから」
    「ふふ」

     やっと息ができるようになった口を尖らせた斎藤に、山南は甘やかすように微笑んだ。そして息も整わないまま再び腰を上下させようとするが、絶頂の余韻を残した身体は快感にすくんでしまうのか、その動きは浅くて、一度出して余裕の生まれた斎藤にはもの足りない。快楽を与えられることに慣れた山南の身体も焦れたようにもどかしく揺れているのに、本人だけが気づいていなかった。
     それに、やられっぱなしはやはり性に合わないのだ。彼との立ち合いでめまぐるしく主導権を取りあう時のように、今度は斎藤が仕掛ける番だった。

    「ぁ......あ......ぅ、んっ」
    「......ねえ、交代しません?」
    「ぇ......?っあ、だめだよ......今日は、私が、」
    「んー......」

     唇からこぼれ落ちる声も、次第に欲しがりな響きを強めている。まずは良識的に言葉での提案を試みた斎藤は、かろうじて働いていたらしい山南の理性に阻まれて片眉を上げた。それなら、仕方がない。言って分からない人には、身体から籠絡するまでだ。じっと好機を伺い、呼吸が落ち着いてきた山南が大きく腰を引いた瞬間を見計って性器を引き抜き、びくんと跳ねる肢体を組み伏せる。

    「ッあ!?さいとう、君!?」
    「ねえ山南さん、足りないんじゃないですか?」
    「え......」

     覆いかぶさられてなお強気に不満を伝えてくる瞳と視線を合わせ、ちゃんと鼓膜まで届くようにひそめた囁きを贈る。その言葉にまるい目を瞬かせた山南は、もう罠にかかったも同然だった。警戒心すら無いまま手の内に転がり落ちてきた、迂闊でかわいい人をきちんと仕留めるために、斎藤は優しく微笑んでみせた。

    「もっと奥、自分じゃ届かないようなとこ、思いっきり突いてあげますよ」
    「、ぁ............」

     何を言われたのか理解した山南が瞠目するのを確かめ、腹にのせた肉棒で彼のいちばん深いところ、彼がどうしようもなく乱れてしまう最奥のあたりを押す。ぐり、と男根を当てられた瞬間に瞳を蕩けさせた山南は、もう斎藤のものだった。自分の雄にすがる仕草で手が背中に回されるのに斎藤は満足して口の端を上げ、山南の頬に唇を落とすと、嬉々として彼の身体を暴きにかかった。





    (いや、良かったな......)

     冷たい水を喉に流し込んだ斎藤は、しみじみと今夜の行為を振り返って噛み締めていた。色々と初めてな山南の姿も見ることができたし、正直新しい何かの扉をこじ開けられたような気もするが、心も身体も満たされた今は些末なことに感じられる。頭を抱えるのはしばらく先の自分に任せ、斎藤は隣でシーツに包まって丸くなっている山南へ声をかけた。

    「山南さーん、そろそろ出てきてくださいよお」
    「無理だよ......私は、あんな......はしたない......うう......」

     まだだめか、と苦笑した斎藤は、口調をやや真面目なものに改めて再度言葉を継いだ。

    「嬉しかったですよ。......僕も、あんたのことが恋しかったんで」
    「うん......ありがとう......」
     
     我ながら素面では恥ずかしい台詞に、シーツ被っててくれて助かった......とちょっと思ったが、布地の向こうでこわばっていた身体から力が抜けたのが分かったので、斎藤はシーツおばけの頭らしきあたりを軽く撫でた。ほう、とため息をついた山南は、しばらくして小さな声で呟いた。

    「......がっかりしなかったかい?」

     何に、とは聞かなかった。その代わり、斎藤はへらりと笑ってこう返した。

    「すけべな山南さんも好きですよ」

     言ってしまってから怒らせるかなと少し心配になったが、山南の反応は予想のどれとも違っていた。頭を抱えるような動きでもぞもぞと身じろいだ彼は、やがて目元だけをシーツの間から覗かせると斎藤をちらりと睨んだ。

    「こういうことは君としかしないのだから、......こうなったのは、君のせいだよ............」
    「は、」

     まるきり睦言めいた非難だった。そんな風に詰ったって相手を悦ばせるだけだと、分かっているのかいないのか。自覚してそうするならとんだ人誑しだが、無自覚なのもそれはそれでたちが悪い。骨抜きにされそうな甘ったるい衝動がぞくぞくと走る。

     だがそれ以上に、あんたそんなこと言えたんですね、という切ない驚きが胸を締め付けた。何もかも自分で背負いこむのではなく、相手の責任をちゃんと問うようなことを。しかし、彼は本来こういう面も持っている人なのかもしれない。斎藤にとっては生前の最期と邪馬台国での印象が強すぎただけで。
     でも、それを見せてくれたのは、彼が多少なりとも気を許して、甘えてくれているからだろうと自惚れたくなる。真意を知るよしもないのに付け込んで、都合の良い解釈を押し付けたくなる。

     目の奥がつんと痛んだ。ようやく顔を出してくれた山南がそれに気づいてしまう前に、斎藤は彼のいとしい頬へ水のボトルを押し当てて「責任取りますよ」と微笑んでみせた。



    (終わり)
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    Replies from the creator

    samezamecry

    DONE山南さんがはじめちゃんに乗っかる斎山すけべ書きました。カルデアifで付き合ってる感じですが特になれそめとか無しに唐突に始まって終わります...
    山南さんが積極的な斎山!以下の描写が大丈夫な方向けです!

    ※双方の過去の女性経験匂わせ
    ※山南さん→はじめちゃんのフェラ
    ※山南さんが積極的な騎乗位
    ※はじめちゃんもちょっとだけ喘ぐ







     我ながらどうかと思うのだが、山南と両手の指では足りない数の夜を共にした今もなお、斎藤は彼と性的な行為というものがいまいち結びつかないでいる。

     あの人でそういう想像をしたことがない訳ではない。むしろ色々と夢想できてしまって困るほどだ。しかし、それはあくまで自分が主体というか、こんなことをしてやりたいとか、それによって乱れた彼を見てみたいだとかの願望がほとんどで、つまり斎藤は性に積極的な山南の姿をうまく思い描けないのだった。

     頭の中の冷静な部分は、彼だってそういう気分になることくらいあるだろうと分かっている。生前、山南が島原での会合へ赴くのを見たこともあれば、宴席で女に酌をされる姿だって覚えている。けれど言い換えれば記憶にあるのはその程度で、それ以上は何も知らなかった。
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