【ボブピン】書きたいとこだけ巨大なマンタが空の上を遊ぶように、舞っている。遠くから、海月の気の抜けたような鳴き声が聞こえる。
…あぁ、どこまでも美しくて、どこまでも残酷なのねこの世界。そんな、そんな世界、
「こんな世界なんか、無くなればいいんだわ。」
私はそう呟いて、ピンネを握っていた手を強く握りしめた。
「…そうですね」
隣にいるピンネの顔は見ない。
ここまで一緒に着いてくると言ったのは彼だ。
一緒に終わりにしようと言ったのも彼だ。
けれど、怖くなった。柄にもなくね。
だって、これはあたしのエゴだから。ピンネを弟子にしたのも、ここで終わりにすることも。
幻滅、されたかもしれない。
後悔、しているかもしれない。
でも、ごめんなさいね。あたし、貴方の手を離せないわ。
ここで手を離して、「やっぱり貴方は生きて」なんて、そんな聖人君子みたいな事、あたしには出来ない。
…だから、貴方の顔は見れない。
「デイヴィッドさん。」
手を握り返される。ここまで、握り返されることは無かったのに。
「楽しかったです。あなたの弟子になれて、恋人になれて。楽しかったです。」
優しい音で紡がれる、優しい言葉。
「っ、」
ここで私の星生を終わりにするって考えてから泣かないって、決めていた。これは、私のわがままだから。私が決めた事だから。
「あたしも楽しかったわ。」
なのに、おかしいわね。
泣かないようにしていたのに、涙が溢れて止まらないの。
「ピンネ、ありがとね。」
私は、ピンネの顔を見た。
ピンネは、満足そうに笑っていた。
幻滅も後悔もされてなんかいなかった。
あぁ、この子はとっくに覚悟を決めていたんだわ。
ピンネの手を引いて、海へと入っていく。
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「後はよろしくお願いします。
…デイヴィッドさん。*****」
ピンネは、砂に足がつかなくなったのか、困ったように笑って瞳を閉じた。
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「っ、あたしもよ」
遂に、私の足もつかなくなった。
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水中の中、ピンネを抱きしめて落ちていく。
あたしより長く水中に居たため、光を上手く取り込めず、もう黒塗りになっていて誰かなんか分からない。
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「愛してる」