Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    9fdTJfsAACGnBqR

    @9fdTJfsAACGnBqR

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 31

    9fdTJfsAACGnBqR

    ☆quiet follow

    わんらい「結ぶ」
    まとまりきらない。でも書きたかった寿命話。いつか書きあげたい。

    「僕は、人間です」


     その一言ですべてが紐解けた。
     ごめんなさい、許して、と。
     言葉とともに、抑えきれない涙が溢れるのを、この舌が止めたとき、運命というものは決まっていたかもしれない。
     拙く呼ぶ口を塞ぎ、震える指先を捕らえ。
     思慕と憧れの区別も分からないままに、その心に喰らいつき、その肌に爪を立てた。
     不安と快楽をその小さな体に飲み込み、ひとりにしないで、と背に爪立て、すがってきた。どこにも行かないと繰り返し答え、執着の証のような爪痕を数えては、満足のため息をこぼす。
     もう、どこにも行けやしないのに。


     夜明け前のいちばん暗い朝の底で、目を開く。
     目覚めとともに手を伸ばし、傍らの熱を確かめるのが、すっかり習慣となってしまった。
     濡れた肌が渇く間もなく、熱を絡ませ、何度も果てた体は、まだ深い眠りの中にいる。
     やわらかくあたたかな肌。
     鼻先をくすぐる髪からは昨夜の名残のように、汗のにおいがした。


     先生、と。
     甘く呼ぶ声が、耳に甦る。
     声変わりを終え、低く落ち着いた声音。
     たおやかな指先がカルエゴの頬を撫で、慈しむように輪郭をたどる。
    「先生は、変わらないね」
     どこかさみしげに、イルマは笑った。
    「僕も悪魔だったらよかったな」
     そうしたら、と続く言葉は、何だったのだろうか。
     頬を寄せ、結ばれたくちびるを吸った。
    「もし、お前が人間でなく、悪魔として生まれていたら……こうはならなかっただろうな」
    「そっか、それは、やだな」
     くちづけの合間に囁き、あとは言葉の代わりに舌を絡め合う。不安を溶かすように肌を重ね、最後は互いの血に狂った。


     まどろみの淵にあるその体を抱き寄せ、囁く。
     まさに、人の語る、悪魔のごとく。
     甘く、ひそやかに。
    「なりたいか?」
    「え?」
    「悪魔に、なりたいか?」
     問いにイルマは目を潤ませた。
     けれど、またたきひとつで笑みへと変え、なれるなら、と小さく呟く。 
     しなやかな腕が首に回った。
    「魔王じゃなくていいから、悪魔になりたかったな」
     そうしたら、ずっと一緒にいられた。
     幼く、真っ直ぐな願いに、込み上げる笑いを堪え、きつく抱き締める。



     悪魔になりたい───
     人と悪魔。願いと代償。契約の基礎としては十分だ。
     あとはそれをしっかりと結ぶだけ。
     体の奥底、深く深く交わり、結び、互いに互いを縛り合う、血の契約。
     精神も、魔力も、生命すら、強く強く結んでいく。
     いずれ、境をなくし、融け合うだろう。
     鈍いこれが気づいた頃には、手遅れだ。
     泣くだろうか、笑うだろうか、存外、怒るかもしれない。
     その日を思えば、喉が震えた。
    「簡単に死ねると思うなよ」
     もう、どこにも行かせはしない。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💖💖💖💖😭👏💜💙😭😭😭👏👏👏💖💖💖💜🍌💙💙😭😭💖💖💖😭😭😭😭❤👏👏👏👏👏👏💜💖💖💖💖💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕👏❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works