ここ最近、軋むような音が続いていた。
歯車がひとつ、他より早く進むことで生じる不協和音のようなそれは、人体の一部が響かせているようだった。
とくとくと、不安にかられたように、早まる心臓の音は、昼夜問わず続いていたが、今日は特にひどい。
まったく、忌々しいことに、この餓鬼の精神世界の寝心地だけは悪くないというのに。闇に溶かしていた意識をゆっくりと揺すり起こした。
「おい、うるさいぞ」
ぞろりと肩から頭をもたげると、イチは視線だけをこちらに向けた。
見れば、魔女特有のとんがり帽子を頭に乗せ、肩には毛皮と重厚なマントを纏い、舞台の裾野に立っていた。まるで、羽化したばかりの蝶だ。濡れた羽を重たげに引きずる。
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