#司彰版深夜の真剣創作一本勝負
第8回『声』
待ち合わせにした駅前に着くも先輩の姿が見当たらない。
人混みをかき分けながら建物の陰へと移動して駅に着いたこと、そして自分の居場所と先輩はどこにいるのかとメッセージを送る。
程なくして既読されたそれに安堵しつつ辺りを見渡しては見覚えのある明るい髪色の頭を探すが、相変わらず目につかない。
大概先輩が先にこちらを見つけて大声で名前を呼ばれ注目を浴びる、というのがテッパンとなりつつあるデートの始まりを思い返しては少し頬の辺りが引き攣った。
返答のないメッセージ欄。
いつもならすぐにでも返してくれるか見つけてくれるのにそれがない今日はどうにも違和感を覚える。
とりあえず電話してみよう、そう思って通話ボタンを押すも出る気配は無く耳元では着信コールが鳴り続けた。
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